イラン要人の殺害で一気に緊張する中東

 3日、上野公園へ。国立博物館の門には竹と南天の実が飾ってあった。青空に映えて清々しい。

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 これも門松と言っていいのだろう。古来木のこずえは、神(年神)が降りる「神の依代」とされていた。南天の赤は厄除け。難転(難を転ずる)の語呂合わせもあるという。
 科学博物館前で、今年も「さすらい姉妹」の年始恒例の寄せ場公演があった。山谷の労働者による団結もちつきがあり、それとタイアップする形で、「水族館劇場」の看板女優、千代次さんが率いる「さすらい姉妹」が路上で公演するのだ。

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 今年の演目は「GO!GO!チンボーラ~參の替わり 三日月編」。千代治が琉球王家の王女となり、時空を行き来しながら奇想天外なドタバタが繰り広げられる。大いに笑わせてもらった。
 何か食べようかとアメ横をぶらつく。コリアンや中華、ケバブなどの店が目立ち、歩いていると外国語が耳に飛び込んでくる。「国際化」に驚いた。

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 イランの要人を米軍がトランプ大統領の指示で殺害するという衝撃的なニュースが報じられた。
 《イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のトップ、カセム・ソレイマニ司令官が3日、イラクバグダッドで米軍の空爆によって死亡した。米国防総省は、「大統領の指示」によって司令官を殺害したと認めた。ソレイマニ司令官は、イラン国内できわめて重要で人気の高い、英雄視される存在だった。》(BBC
 イラン革命防衛隊は国軍ではなく最高指導者直属の軍事組織で、大統領も指示・命令できない治外法権的な存在だ。コッズ部隊は、革命防衛隊の中でもシリアやイラクはじめ国外での秘密作戦を扱う精鋭部隊。ソレイマニ司令官は、国内外に非常に影響力が強く、強硬派の中で人気がある人物で、次の大統領選挙で立候補すると見られていた。

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ソレイマニ司令官

 ソレイマニ司令官殺害を受け、イランの最高指導者ハメネイ師は3日、ツイッターに投稿し、米国を念頭に「手を血で汚した犯罪者を待っているのは厳しい報復だ」と宣言。イラン全土が3日間喪に服すと発表した。
 イランがアメリカの国防長官を殺したらアメリカがどう反応するかを想像すれば、今回の衝撃度が分かるだろう。イラン国内のいわゆる穏健派も一斉に「反米」に転じた。イランとアメリカが直接に戦火を交える可能性もある。イランの国連大使はグテレス国連事務総長と国連安保理議長宛ての書簡で、「特に自衛権行使を含め国際法の下で必要な措置を取るあらゆる権利をイランは保有する」と警告、戦争行為も辞さないと宣言した。

 すぐに大変なことになるのはイラクだ。イラク政権はシーア派で、イランとは事実上の同盟関係。米軍によるこの攻撃がイラクバグダッド空港で行なわれ、イランが支援するイラクシーア派民兵組織を統括するアブ・マハディ・アル・ムハンディス氏もソレイマニ司令官とともに殺害された。
 《イラクのアブドルマハディ首相は今回の空爆について、駐イラク米軍の地位協定の「重大な違反」だとし、「イラクでの破滅的な戦争の口火を切ることになる」と警告。人民動員隊の司令官は、全戦闘員に戦闘準備を指示した。》
 イラク国内では反米感情が一気に高まり、シーア派勢力による米軍関連施設への軍事攻撃も行われるだろう。スンニ派シーア派の分断は決定的になり、イラクの治安回復は見通せなくなった。
 アメリカは「破壊的な戦争」を承知で今回の殺害を実行したのだろう。在イラク米大使館は3日、イラクに滞在している米国民に空路や陸路で直ちに出国するよう呼び掛けた。
 アメリカでも憂慮する声が上がる。
 「ソレイマニは米国の敵だ。それは問題ではない。
 問題は、米国が議会に全く諮ることなく、大規模な地域戦争を招きかねないことを知りながら、イランのナンバー2を暗殺したのかどうかである」(民主党クリス・マーフィ上院議員
 もともとはトランプの「イラン核合意離脱」から始まった緊張が、ここまで来てしまった。

 イラク政府、シリア政府のほか、レバノンヒズボラ、イエメンのフーシなどの武装勢力をイランは支援している。これらが「報復」に出るとすると、中東のどこで何が起きても不思議ではない事態になっている。イスラエルは軍は警戒レベルを引き上げ、ネタニヤフ首相は外遊を取りやめて帰国した。
 こうした状況の中東に日本は自衛隊を派遣するのだ。
さぞや安倍首相周辺も緊迫しているかと思いきや、きのうは六本木のホテル「グランドハイアット東京」内の「NAGOMIスパアンドフィットネス」で運動したあと、同ホテル内の日本料理店「旬房」で昭恵夫人と昼食。午後は六本木の映画館で昭恵夫人と映画「決算!忠臣蔵」を鑑賞して私邸に帰り、午後10時段階で「来客なし」。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020010300208&g=pol
 こんな能天気な首相の下で、日本はいったいどうなるのか。心配になる年のはじめである。