イランと欧米がついに「核合意」

takase222015-04-03

風の強い一日で、桜が散ってしまわないか心配だ。
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イランと欧米が「核の枠組み合意」にこぎつけた。
これは大きなニュース。
《イランの核問題解決を目指す米英独仏中ロとイランは2日夜(日本時間3日未明)、イランが10年以上は核兵器が造れないレベルまで核能力を制限し、国際社会の強制査察を受け入れることを柱とする「枠組み」で合意に達した。欧米や国連安全保障理事会は、イランがこれらを履行するのが確認できれば、制裁を解除する。6月末までに細部を詰め、「最終合意」を結んだ後に実行する。》(朝日新聞

欧米は、イランとしては譲れないウラン濃縮能力の保持自体は認め、イラン側は濃縮のスピードを抑え、IAEAの強制査察を受け入れるという妥協である。
イランは、北朝鮮と並ぶ「問題国」の扱いを受けてきたが、北朝鮮とは権力の構造も体質も全然違っている。
私が以前取材したとき、選挙で定員の何倍もの人数が立候補することや、マイクを向けた市民が堂々と政府批判をすることに驚いたが、この国には「世論」があり、北朝鮮と違って交渉が可能な国だと感じた。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20070823

きょうのテレビニュースでは、歓喜に沸くテヘランの通りと「経済制裁が解除されることを期待する」と笑顔で語る市民の声を紹介していた。
よく合意にこぎつけたなと思う。
《米国のケリー国務長官とイランのザリフ外相が26日からスイス・ローザンヌで断続的に協議し、29日までに全7カ国と欧州連合(EU)の外相が集結。2日夜まで8日連続で外相級会合を開く異例の展開をたどり、共同声明の発表にこぎつけた。》
(写真は、EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表とイランのザリフ外相)
オバマ大統領はホワイトハウスで、合意について演説したが、イラン国営テレビはこの演説を生中継した。こんなことはたぶん前例がない。
この合意は本物だ。

イランは、イラク政権の後見人であり、シリアのアサド政権のバックでもある。イラク、シリアが破綻国家になったことから、両国が事実上の内戦状態になり、「イスラム国」の台頭を招いた。
いま「液状化」しているこの地域を、犠牲者を最小限にしながら、なんとか軟着陸させて民生を向上させていくには、存在感を強めるイランとの協調が不可欠である。
その意味で、今回の合意は画期的だ。

ただ、「最終合意」が予定される6月末までのこれから3カ月弱が正念場になる。
イランを不倶戴天の敵とみなすイスラエルが、米国内のネオコン勢力と連携して必死に妨害にでるのは目に見えている。驚くような謀略が仕掛けられる可能性もある。
さらに、シーア派の政治的台頭を許せないサウジなど湾岸アラブ諸国も強烈に反発するだろう。
サウジは、先月下旬から、隣国イエメンのイスラムシーア派武装組織「フーシ派」を空爆しており、近く地上部隊を投入するとの観測が出ている。サウジ対イランの確執は強まっている。

目が離せない。
中東をめぐるこれからの動きを見る際のポイントの一つは、この「最終合意」である。