退職に追い込まれたNHK記者


 ハナミズキ、まだ葉は紅葉していないが、真っ赤な実が陽にてかっている。秋がすこしづつ深まっていく。
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 NHKの報道が異常になっていることをNHK記者自身が暴露した。
 森友学園への国有地売却問題でスクープを連発したNHK大阪の相沢冬樹記者(55)が、8月末に退職し、大阪の地元紙『大阪日日新聞』に移籍した。移籍先の新聞で、森友事件の本質と移籍の思いを語っている。(《相沢記者が語る「森友事件の本質」と「移籍の思い」》http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/180928/20180928087.html
 《「近畿財務局が国有地売却前に森友学園側から、支払える上限額を聞き出し、その金額以下で売った」というニュースを放送しましたが、放送後、私の上司に報道局幹部から、なぜこのニュースを報じたのかという怒りの電話がかかってきました。》
 相沢記者は、「財務省が学園側に対し、実際にごみを大量に撤去したように説明してほしいと口裏合わせを求めていた」件もスクープしたが、特ダネを出す際には圧力があったと明らかにしている。そして、財務省の背任事件に対する大阪地検特捜部の捜査がヤマ場を迎えていた5月、突然、大阪の報道部から考査部(番組を放送後に講評する部署)へ異動を命じられた。相沢記者は退職を決意する。
 相沢記者は言う。
 《問題の土地は、森友学園の前に大阪音楽大が売買交渉をしていました。ここでは、ごみは問題にならず、大阪音楽大が数億円の買い取り価格を提示しても、折り合いませんでした。数億円で折り合わないものを、なぜ1億3400万円で売ったのか。おかしなことだらけです。
 誰が見てもおかしな土地取引なのに、財務省の担当者も、財務相も、首相も「問題ない」と言い切る。関係書類の提出を求めても「廃棄したからない」と言い切る。ところが後から出てくる。しかも改ざんされていたと分かる。誰が見てもきちんとした説明はされていないのに、「十分説明した。もう終わった」と、子どもでも分かるような嘘を政治の力で押し通した。嘘を突き通せば嘘がまかり通ることを世の中に知らしめてしまった。多くの人が無力感、さらには政治への絶望を感じているのではないでしょうか。》
 ほんとうにそのとおりだ。若い人のあいだで、「正論」を語ること自体が敬遠される雰囲気が出てきたが、これは安倍内閣以降ではないか。モリカケの幕引きは、日本人を底流で変えつつあるのでは、と怖くなる。
 相沢氏が『大阪日日新聞』の吉岡社主に初めて会ったとき、社主はこう言ったという。
 「こういう形で言論を封殺する不条理をわしは許せない。有為な人材をこんなことで埋もれさせてはならない。うちの会社はどこにもしがらみがないし、どこに遠慮もない。相沢さん、あんたには自由に取材して真実をどしどし書いてもらいたい。あんたはうちで面倒みる」。
 NHK報道の酷い姿とは対照的に、この地方紙の社主の気構えに感動する。こういう勇気ある人々もいるのだ。
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 先月25日、テレビ東京が、森友問題で自殺した近畿財務局の親族と財務局のOBら6人に単独取材して報じた。https://www.youtube.com/watch?v=RLa7NMIyXTo

 自殺した職員の父親は、文書改ざんを強いられたことが息子を追いやったと証言。また、近畿財務局OBはみな顔出し、実名で取材に応じている。起きたことはそれだけ理不尽きわまるもので、いまの事態を座視できないという大きな危機感が彼らに声を上げさせた。



 文書がないことはありえず、ましてや改ざんするなど「底が抜けてしまった」とOBは言う。これからは改ざんはしないだろう、こんどは文書を作るときにウソを書くだろうと恐ろしい予言も。
 テレ東に続く形で、少しづつまた森友問題の報道が出ており、きょうのTBSニュース23で、自殺した職員の父親のインタビューを放送した。
 報道人の気概に期待したい。