がんの代替医療に注意

  夜、人に会うため中央線西荻窪へ。用事が済んだら8時過ぎ。駅前でいっぱいやることに。西荻窪といえば「戎」(えびす)という飲み屋が北口にも南口にもある。ここは南口で、通りの右も左も「戎」。とても気軽に入れるので、若い女性やカップル、外国人で満員だ。

 いわしコロッケが名物だが、他にも、安くてうまいつまみがたくさんそろっている。「ゴーヤとミョウガおかかマヨ」250円也もよかった。こういう地域の飲み屋はいつまでも続いてほしいものである。
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 2018年のノーベル医学生理学賞は、京都大学本庶佑氏と米テキサス大学のジェームズ・アリソン氏が共同受賞した。受賞理由は、「がん細胞による免疫抑制を解除する、全く新しいがん治療法を発見したこと」。2人は、それぞれ別の免疫チェックポイント分子に注目して基礎研究を進め、その作用を阻害することでがん細胞の増殖を防ぐ治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)と「ヤーボイ」(一般名イピリムマブ)の開発に結びつけた。
 この免疫療法は、がん治療の革命と呼ばれるそうだが、ノーベル賞受賞で一気に注目され、病院などに問い合わせが殺到しているという。
 一方、免疫療法といっても玉石混交で、自由診療エビデンス(臨床的証拠)が乏しい免疫療法を高いお金をとって行うクリニックがある。うちで番組にもしたことがあるのだが、ほとんど効果が望めない治療法を詐欺まがいでほどこす悪質な医師もいる。ネットのサイトで、専門的な用語で作用機序を説明していたりして、素人目にはいかにもがんに効きそうに思える。藁にもすがりたいがん患者はお金さえあれば試してみたいと思うだろう。
 きょう、複数の局のテレビニュースで、エビデンスのない免疫療法への注意を呼び掛けていたのは、いいタイミングだった。

 がん患者で、標準治療以外のいわゆる代替医療を受ける人は非常に多い。「がん患者3100人のうち1382人(約45%)が、1種類以上の代替医療を利用している」。そして「平均して月に5万7000円を出費している」という。厚生労働省がん研究助成金による研究班が行った調査―2005年発表)https://toyokeizai.net/articles/-/237154
 しかし、がんに効くのがやはり標準治療であることは間違いない。「代替医療を受けた280人」と「病院の従来の標準治療を受けた560人」の5年後の生存率を比べると、従来の標準治療を受けた人たちのほうが生存率が高く、代替医療を受けた人は、従来の標準治療を受けた人よりも2.5倍もの高い死亡のリスクがあったという調査結果がある。
 興味深いのは、代替医療を選ぶ人は高学歴や経済的に恵まれた人々なのだという。私は「標準治療」という言葉が誤解されている面もあると思う。「標準」というと「並」「普通」のイメージが浮かび、お寿司でいう「松」「竹」「梅」の「梅」と勘違いするのでは?お金がある人は、みんなと同じ「梅」じゃなくて、もっと効果のある「松」の治療法をやりたいと高額の代替医療にはしるのではないか。
 小林麻央さん、川島なおみさんが代替療法に熱心だったとされるし、最近なくなったさくらももこさんもバイオレゾナンスという治療法を受けていた。
 「がんと闘うな」などと言って標準治療を全面否定する近藤誠氏の本の影響も大きい。米原万里さん(2006年死亡)は近藤誠氏を信じて、「免疫」、「温熱」などの代替療法に頼って亡くなった。
 実は「標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療をいいます」(国立がん研究センター)。つまり、今考えられるベストの治療法ということで、これが「松」なのである。まわりにがんにかかった人がいたら、安易に標準治療を忌避しないよう言ってあげてください。