きょうはうれしいお知らせがあった。
アフガンで用水路建設に奮闘し65万人を「食える」ようにした中村哲医師のドキュメンタリーが内外で高く評価されたという。
(谷津賢二さんのFBよりhttps://www.facebook.com/kenji.yatsu.73?fref=ts)
谷津さんは日本電波ニュース社の記者=カメラマンで、中村さんの取材では第一人者。中村さんをライフワークにできるというのは幸せなことである。
先日も書いたが、中村さんは、福岡県朝倉市の山田堰をモデルにして、アフガンのクナール川に石堰を作っている。
これは、中村さんの著書『天、共に在り〜アフガニスタン三十年の闘い』(NHK出版)に載っている写真で、上が山田堰、下がアフガンの石堰。こうして日本の古い知恵が他国の人々の暮らしに貢献しているのはすばらしい。これこそ国際貢献である。
2012年8月、山田堰の前で中村さんをインタビューする機会があった。そこで中村さんは、先人たちの知恵はすばらしいと江戸時代の農業用水施設を讃えたあと、今の日本人は自然との関わり方を間違っていると強い口調で警告したことが印象的だった。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20120804
『天、共に在り』は、中村さんの30年の記録だが、今の日本への警世の書でもある。終章では、戦後の日本の大きな変遷をこう締めくくっている。
《しかし、変わらぬものは変わらない。江戸時代も、縄文の昔もそうであったろう。いたずらに時流に流されて大事なものを見失い、進歩という名の呪文に束縛され、生命を粗末にしてはならない。今大人たちが唱える「改革」や「進歩」の実態は、宙に縄をかけてそれをよじのぼろうとする魔術師に似ている。だまされてはいけない。「王様は裸だ」と叫んだ者は、見栄や先入観、利害関係から自由な子供であった。それを次世代に期待する。
「天、共に在り」
本書を貫くこの縦糸は、我々を根底から支える不動の事実である。やがて、自然から遊離するバベルの塔は倒れる。人も自然の一部である。それは人間内部にもあって生命の営みを律する厳然たる摂理であり、恵みである。科学や経済、医学や農業、あらゆる人の営みが、自然と人、人と人の和解を探る以外、我々が生き延びる道はないであろう。それがまっとうな文明だと信じている。その声は今小さくとも、やがて現在が裁かれ、大きな潮流とならざるを得ないだろう。
これが、三十年間の現地活動を通して得た平凡な結論とメッセージである。》
ここまで力強く未来の希望を語ることができる人はめったにいない。そしてそれは厳然たる「摂理」にもとづいていると同時に、自分の経験から得た「平凡な結論」だというのである。あらためて尊敬の念を深くした。
なお、中村哲先生のおもしろい思想的背景については、http://d.hatena.ne.jp/takase22/20090908