漁場を乗っ取った北朝鮮イカ釣り船2

 土用の丑の日だからと、かみさんが夕食にウナギを用意しようかという。
 すると娘が、ニホンウナギ絶滅危惧種だから食べない方がいい、文化だからと言って食べていいのか、と反撃。
 こないだは、賞味期限切れで廃棄される商品が増えるから、コンビニの棚で後ろの日付の新しいものを買うのはよくないとも諭された。子どもに説教される歳になったのだなあ。
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 注目の閉会中審査。
 自民党青山繁晴氏が前川喜平前文科事務次官に「文科省内に総理のご意向によって『加計ありき』で決まってしまっているという情報、省内に作られたのは、前川参考人あるいは当時の前川事務次官、あくまでご自分の印象を根拠にしてのことではありませんか」と質問したのに対して前川氏はこう答えた。
 「総理は自分の口から言えないから私がいうんであると、こういうお話があった。私がどう受け止めたかというと、一般的に規制改革をスピード感をもって行えという趣旨であればこういうせりふはでてこない。総理がおっしゃってるからやりなさいという話になる。総理が自分の口からおっしゃれないなら、これは親友である加計孝太郎理事長の学校である。それを早くしなさいとそういう趣旨であると受け止めた。このようなことからこれは加計学園のことであると明確に理解した」
 非常に論理的な説明。
 文科省側にはいくつも文書が残っているのに、内閣府側にはないという。そして参考人は記憶がない、覚えがない・・・。野党がいくら安倍首相周辺に出てくる矛盾をついても、答えは「記憶」と「記録」がないというに尽きる。「水掛け論」になるしかない。
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 22日に書いた、北朝鮮イカ釣り船が日本の排他的経済水域に押し寄せてきた背景について。
 こういう問題はアジアプレスの石丸次郎さんが詳しいはず、と電話した。石丸さんによると、金主(トンジュ)が本格的に漁業に乗り出してきているのだろうという。
 金主(トンジュ)という存在は、ここ数年注目されているが、簡単にいうと、機能不全の国家機構に代わって、事実上の資本家のような形で各産業分野を仕切りだした金持ち階層のこと。いまの北朝鮮社会を理解する上で不可欠の存在だ。
 外貨獲得のための主要産品の一つが海産物だ。金主(トンジュ)は、形の上では軍や国家、党の組織などのもとで船団を組むが、実際にはトンジュが金を出して船をあつらえ、燃料を調達し、乗組員を募集して送り出す。
 金主(トンジュ)に上納したうえで残った分が乗組員たちの手取りになるので、全体のパイとなる漁獲高を何とか増やそうとする。彼らは必死だから、排他的経済水域だろうがかまわずに入ってきて不法操業もやるのだろうと石丸さんは推測していた。

 金主(トンジュ)については、去年の「救う会」の集会で、金聖玟(自由北朝鮮放送代表)さんが講演でこう触れていた。興味深いので紹介したい。
《ここで私はトンジュ(金主)という新興階層が出てきていることについて説明します。日本や韓国のマスコミが最近トンジュについて色々報道しています。私もドンジュについて一定程度知っていると思っていたのですが、最近韓国に来た脱北者、外貨稼ぎをしていた脱北者たちにインタビューをしてみたところ、驚くべきことが分かりました。
 物を農村から都市に持っていく。都市から農村に持っていく。そして市場で売るわけですが、その運送が北朝鮮ではできなかった。鉄道がほとんどまともに通っていないんです。そこでトンジュは鉄道局に行って、「何がだめなんだ」というと「機関車が故障している」と。「じゃあ全部部品を買ってきてやる」と言って機関車を治す。「貨車が足りない」というと、「分かった」と言って、中国から貨車を買ってくる。そして鉄道局の名前で、個人の運送業をやっている。
 北朝鮮ではいくつかしかない製鉄所の中で、代表的な製鉄所が黄海製鉄所ですが、そこにトンジュが行って、「俺はアパートを建てるのに鉄筋が必要だ。なぜ鉄筋が作れないのか」というと、「労働者がお腹をすかせて出勤しないんです」と。「分かった。米何トン必要なのか」と買ってくる。労働者が出てきたが炉が止まっている。「なぜ溶鉱炉に火が入ってないのか」と聞くと、「コークスがないんです」と。「分かった。中国から買ってくる」と全部準備する。国家ができないことを、トンジュはできる。そして止まっていた溶鉱炉が稼働して、必要な鉄筋ができて、その鉄筋を使ってアパートを建てた。
 平壌で新都市建設をやっていると言っていますし、地方でもやっていると言っていますが、それはトンジュがいなければ何もできません。トンジュが必要な資材を持ってくるからできたんです。
 私も黄海製鉄所に行ったことがあるんですが、8つの溶鉱炉の内7つは止まっている。1つだけが、国防用として特殊な鉄を作っているんですが、それをトンジュが使って鉄筋を作らせている。トンジュがいなければ何もできない。トンジュがいれば、国家ができないことができるという北朝鮮になってしまった。
 もちろんトンジュが1万人いるのか数万人なのか分かりませんがわずかです。しかし、これを見ている北朝鮮の一般の人たちの考え方が変わった。まずはお金だ、と。金がなければなにもできない。しかし、金があれば何でもできるという考え方に変わっていった。
 このトンジュたちが、北朝鮮の既存のシステムを完全に無視して動き始めたら、北朝鮮のシステムは崩壊すると思いますが、今はそうなっていない。このトンジュたちを逆に保衛部や人民保安省や宣伝扇動部や組織指導部などが利用して、何とかこのシステムを維持している。それが今の北朝鮮の実態です。》