ファインダーをのぞかずにシャッターを切る

 森本学園問題。これまで出てきた材料を素直に見ていけば、小学校認可から国有地のダンピング補助金支出にいたる過程に政治的な強い力(しかも安倍内閣中枢に近いところからの)がはたらいた疑惑は、ますます濃くなっている。
 自民党公明党、維新の党が疑惑解明を妨害し、事実関係を隠蔽しようと露骨に立ち回るさまはドラマのようである。
 籠池泰典氏の証人喚問から、本筋より周辺事情の方が先に「破裂」している。
 首相夫人、安倍昭恵氏付の政府職員が財務省に照会し、昭恵氏に報告したうえで森友学園に回答したことがファクスという物証で明らかに。これはもう「口利き」に他ならない。
 さらに、安倍昭恵氏が森友学園の籠池氏に「安倍晋三からです」と100万円を寄付し10万円を講演料としてもらったのは、籠池氏の妻とのメールのやり取りや安倍夫妻の反応などからみて、まず間違いないと思う。
 稲田朋美防衛相の夫の龍示氏が、小学校用地に関して籠池夫妻が近畿財務局と大阪航空局を相手に昨年1月に土壌汚染対応を巡り行った協議に立ち会っていたことも判明。政権中枢の関係者が何人も森友学園の問題に「関与」していることがはっきりしてきた。

 籠池氏が堂々とした態度で証言したのを意外に思った人も多いだろうが、おそらく彼は開き直ったのだ。籠池氏にとっては、ついこのあいだまでの「同志」「盟友」たちの方が変節したのであり、彼らに切られる「しっぽ」にはならないぞという強い意地を感じる。「3種類の契約書」など口をつぐんだこと以外は、主観的にはやましいところはないのだろう。
 
 娘が、国会がもっと大事なことを議論しないで、こんな金額の小さなスキャンダルばかりやってるのはおかしいんじゃないか、と議論を吹っかけてきた。
 おお、言うねえ。たしかに、そういう見方もできる。しかし、ことは政治に対する、もっというと日本国に対する国民からの信頼の問題だ。ここが揺らげば、税金も年金も払いたくなくなるし、国家の命運を左右する事態にも国民が反応しなくなる。極端にまでいくと、学級崩壊ならぬ国家崩壊を招きかねない。党利党略で動く問題ではないのである。徹底究明しかない。
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 「写真界の芥川賞」といわれる第42回木村伊兵衛写真賞に原美樹子さん(49) が選ばれた。受賞作は日米仏で共同出版された写真集「CHANGE」で、日常の一瞬をすくいとった写真の不思議な魅力が評価されたという。
  

 彼女の撮影スタイルは、シャッター音の静かなカメラで、ファインダーをのぞかず、ピント合わせは目測で、という独特のもの。選考委員の石内都氏は、「テーマを決めて撮るのではなく、身体感覚や反射神経がその場の空気とともに写真に写し取られる」、「とても不思議な感じを持っていた」と評価する。うーむ、たしかに変わってるなあ。

 カンボジアの森本さんの村「伝統の森」を訪れたりするなかで、現代文明とくに都市部で暮らす我々の自然をふくむ周りのものへの感じ方がおかしくなっているように思う。すぐれた写真家のファインダーの向け方には、感性をどう鍛えていったらよいかのヒントがあるのではないか。4月中旬に開かれる作品展(新宿ニコンサロン)でしっかり見てみよう。
 この写真集は3冊目だそうだが、原さんは男の子3人の育児に追われながらカメラを持ち歩いて撮った時期を含む十数年にわたる作品を収めている。私の知り合いにも写真家をめざす女性がいるが、原さんのような存在は励ましになるだろう。