この間の身辺雑記。
1月28日、ペルー大使館にて、写真家の高野潤展。
昨年亡くなった、アンデスやインカの写真で知られる高野さんを偲ぶ写真展に行った。実に美しいアンデスの写真に見入った。高野さんは、写真家を選んだきっかけをこう語っている。
《20代前半、目的が定まらず、日々砂を噛むような生活を送っていた私は、ある日、岸洋子さんの「希望」をラジオで聞いた。
「希望を求めて、私はまた旅に出る、汽車に乗る。―私の旅は答えのない旅、返事のない旅―」というような詩は衝撃的であった。この歌を聞いたとき、私はなぜか、アンデスに向かってエスペランサ(希望)を追い求める旅を生涯続けようと思った。それは一瞬の決意であった。
そうした旅を持続させるために、どんな職業がいいかと考えたとき、思い浮かんだのが写真家だった。そのために昼は働きながら夜間の写真学校に2年通った。」
ロマンを追い続けた人生。うらやましい。
1月29日、東京都立多摩図書館開館。
雑誌の所蔵についてはたぶん日本一でのこの図書館は、以前立川にあったが移転のため、長く閉まっていた。この日、私の自宅のある西国分寺で、立派な新しい建物で開館、お披露目となった。ロビーにゆるキャラや子どもがたくさんいたが、子供の読書活動を推進する「児童・青少年資料サービス」もウリにするという。
私のお目当ては、中江有里さんのトークショーだった。中江有里といえば読書。ブックレビューをやっていたころは年200冊、読書量が減った今でも年100冊は読むという。いろんな楽しい本をめぐる話に、読書欲をかきたてられた。
1月30日、民俗学者、宮本常一先生の37回忌。
毎年、うちの近くのお寺で開かれる。今年も関東を中心に40人ほどの参加者があった。先生の故郷、山口県周防大島では「水仙忌」と呼ばれ法要があるという。かみさんが「地平線通信」454号に一文を載せているので関心のある方はどうぞ。http://www.chiheisen.net/
『あるく、みる、きく』を先生と一緒に創刊した写真家の菅沼清美さんが、宴席で隣になり、こんな話を聞かせてくれた。
あるとき、菅沼さんが、いろんな風物や伝統が次々になくなっていくのを憂えると、先生は怖い目をして
「なくなるものは、なくなるんじゃ!」と大きな声で言った。
あの怖い目を今も覚えているが、先生がどういう思いでそういったのか、よくわからないまま今にいたっている、と。
なるほど、考えさせられる。先生の思想のベースには大きな楽観=達観があったように思われる。
三輪主彦さんが手に持っているのは、5月に行なわれたG7伊勢志摩サミットで、オバマさんメルケルさんたちにお土産として贈られた「志摩という国」という豪華本。著者は宮本常一さんと三輪主彦さん。いまから36年前に、志摩の博物館の小冊子に書いた文章を再録したものだそうだが、日本の代表として宮本先生の文章が選ばれたのはすばらしい。