「対話と圧力」のイメージ

takase222013-05-16

日曜日に図書館に行く途中、黄色い一角があった。
菜の花かと思ったが、遅すぎるかな。ひょっとしたらカラシナかも。ちょっと調べてみよう。
原発事故以降、アブラナ科を植えるところが増えていると聞く。実際には、放射能を吸い上げる効率はあまりよくないのだが。
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14日に訪朝した飯島勲内閣官房参与、15日に朝鮮労働党の外交関係の責任者、金永日(キム・ヨンイル)書記に会ったのにつづいて、きょうはナンバー2の金永南キム・ヨンナム最高人民会議常任委員長と会った。
こうした高官と会っていることで、「北朝鮮側の厚遇ぶり」、「拉致問題解決に前向き」と専門家は解説するが、朝鮮中央テレビが使っている表現どおり「表敬訪問」だろう。ナンバー2といっても、金永南は「表」の幹部で拉致問題など全く知らないはずだ。
そして飯島参与はテーマパーク「平壌民俗公園」や「綾羅イルカ館」、「人民野外スケート場」も視察したという。ゆっくり滞在して観光までしているわけだ。
これは拉致問題が「動く」パターンではないと思う。
というのは、北朝鮮側(というより金正恩)との折衝は2002年よりも難しくなっている。これまでの北朝鮮が繰り返してきた立場、すなわち拉致問題は解決済みで、8人は死亡しており、曽我ひとみさんのお母さんミヨシさんら4人は入境していない(知らない)という立場を変えさせなくてはならず、北朝鮮からは、どこまで行ったら日本側は手を打ってくれるのかを詰めてくるはずだ。
何人かの高官(しかも政府の公的立場の人)に面会して何か決まるものではない。2002年のときのミスターエックスなど指導者に直結するルートもつながっているのか、そのあたりが知りたいのだが、分からない。
最後の公的な政府同士の接触は2008年になる。日朝実務者協議で北朝鮮が「再調査」を表明。日本側はこれを評価して制裁の一部解除を予定したが、その後、協議自体が立ち消えになった。
こうした政府間のおおっぴらな協議は、つなぎとして必要だが、実質的に問題を動かすには、裏のチャンネルも要るはずだ。
今回の飯島訪朝で、例えばもう一回実務者協議を開いて、北朝鮮が再度「再調査」を表明する、くらいのセッティングまでなら可能かもしれない。
かりにそうなれば、「5年ぶりの実務者協議」ということで、マスコミの扱いは大きいだろうし期待はおおいに盛り上がるだろう。しかし、過去を振り返ってみればわかるように、日朝は(とくにテーマが拉致ともなれば)「協議」では動かない。
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ところで、きのうのブログに書いた「北朝鮮国内の変革を引き起こす」とはどういうことかと聞かれた。
かの国では選挙も世論も自由な報道もないから、なだらかに世の中を変える手段がない。では民衆蜂起か。いや、全体主義ではこれがほぼ不可能だ。旧ソ連ウクライナで農村収奪によって8百万の餓死者(実質は虐殺だ)が出ても、また中国の大躍進期3000万人超が犠牲になっても、民衆は立ち上がらなかったのである。
今の北朝鮮で民衆が政治的に動き出す気配はない。
すると残るは、側近による指導者の暗殺か一部の軍人によるクーデターに期待するしかない。いずれにしても金正恩の死か(よくて)幽閉から変革過程は始まるだろう。
愉快な話ではないが、こういう事態が起きるような方策を戦略的に打っていくべきだというのが私の考えである。
その事態が起きるまでは、暗殺されるべき当の指導者と、時には笑顔で握手しながら「対話」をしていくのだ。そして交渉で相手を動かすには笑顔だけでなく、強烈な圧力が必要になってくる。
(つづく)