チェルノブイリ事故26周年

takase222012-04-27

きのう小沢一郎氏の無罪判決が出た。
資金管理団体陸山会」の土地取引をめぐり、政治資金規正法違反(収支報告書の虚偽記載)罪に問われた民主党元代表小沢一郎被告(写真)の判決が26日、東京地裁であり、無罪が言い渡された。》(時事)
裁判は、政治資金規正法違反(虚偽記載)の共謀があったかが争われていた。元秘書の石川代議士が虚偽記載をしたことは認定されているが、小沢氏がこれと関わっているかどうか。問題はこれだけである。
当初、石川氏が小沢氏の関与を認める供述をしたとする捜査報告書があった。これが最も有力な証拠だったが、のちに石川氏の「隠し録音」によって虚偽であることが判明した。つまりそんな供述はしていなかったのだ。この時点で、小沢氏の無罪は9割方決まった。
裁判は争点についてだけ判断する。今回の判決では、小沢氏が陸山会に貸した「4億円」の素性はそもそも争点になっていない。その意味で、今回の判決はクリアな無罪であって、一部で言われている「灰色」判決という評はあたらない。
私は小沢氏が「きれいな」政治家だとは全然思っていない。たたけばいっぱいホコリが出る人だろう。しかし、だからといって、「陸山会」事件を大事件に仕立て上げ、虚偽の捜査報告書を作り、検察審査会に強制起訴までさせたことは認められない。これは尋常でない事態であって、背景にかなりの力がはたらいたと見るのが自然だろう。つまり、政治的な小沢抹殺の狙いがあったと思う。
これについては、またあらためて書いてみたい。
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きのうはチェルノブイリ事故の26周年だった。
ウクライナでは、各地で犠牲者の追悼や記念式典が開かれたようだ。
《史上最悪の原発事故となった1986年の旧ソ連(現ウクライナチェルノブイリ原発4号機爆発事故から26年の26日、放射性物質のさらなる拡散を防ぐため、同機を上から覆って密閉する鉄製アーチ型の巨大構造物建設の起工式が、ウクライナのヤヌコビッチ大統領らが出席して行われた。
 2015年完成予定。耐用年数は100年とされる。25年から、4号機の解体と使用済み核燃料の取り出しを本格的に開始する予定だが、作業は数十年から100年かかるとされ、既に四半世紀以上続く事故処理は依然、終わりが見えない状況だ》(キエフ共同)
去年4月に私が取材に行って、最も衝撃を受けたものの一つが、この「鉄製アーチ型の巨大構造物」=新シェルターの建設計画だった。
高さ105メートル、長さ150メートル、幅260メートルの巨大な鋼鉄の「かまぼこ」型の覆いである。
事故直後から4号機を覆ってきたコンクリート製「石棺」は老朽化し、いつ崩れても不思議ではないという。当初「石棺」は30年はもつと言われていたのだが。
写真がその新シェルターだ。
原発事故があるとすぐに商機とみてかけつけるフランスの企業が受注した。建設労働者への放射線の影響を考慮し、事故原子炉(4号機)から数百メートル離れたところで組み立てる。組み上がったら、レールに乗せて移動して4号機(石棺)の上にすっぽりかぶせてしまおうというのだ。
建設費用は約10億ユーロ(約1000億円)で主に欧米や日本の支援で賄われる。
15年ごとにメンテナンスでほぼ同額かかるという。これをずっと続けていくわけである。
事故原発の直接の後始末が、事故後四半世紀もたって、今から本格的に始めるという段階なのだ。これからかかる時間、労力、費用を想像するだけで気が遠くなる。そして、私たちにはこういう原子炉が4基もあるのだ。
これについては去年発売したDVD『チェルノブイリの今 フクシマへの教訓』で紹介してあるので、ぜひご覧ください。
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原発事故はウクライナの社会を分断し、経済を蝕み続けている。
ウクライナのヤヌコビッチ大統領は(略)、国民向けに演説し、事故処理に当たった人々や一般国民約200万人が健康を害し「今も苦痛を引き起こしている」と指摘、被災者を守り、その面倒を見るのは国家の責務だと強調した。
 インタファクス通信などによると首都キエフでは同日、事故処理に当たった作業員や被災者約2千人が、チェルノブイリ関連の社会保障や年金についてかつて政府が約束した額が支払われていないとして最高会議近くの公園などで抗議デモを実施。政府は無責任だとして内閣の退陣を求めた。
 ウクライナ各地の地裁は昨年、年金などを引き上げるよう政府に命じる決定を出した。しかし政府は財政問題を理由に引き上げを実施せず、逆に下級審の判断を不服として憲法裁判所に提訴するなどしており、作業員や被災者らの不満が高まっている》(共同)
年間5ミリシーベルト以上の「無条件移住区域」にいまも大きな町があって人がたくさん住んでいた。理由を聞くと、政府の予算不足で移住のお金が出ないのだという。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110519
チェルノブイリ事故を知れば知るほど、これからのフクシマのことが案じられる。今からでも遅くないから、政府、自治体、研究機関の関係者はぜひチェルノブイリ事故について学んで教訓を引き出してほしい。