原発事故とコスト4−19兆円失ったベラルーシ

青森県知事選挙が告示され、原子力政策が争点になっている。
原発や核燃料再処理施設が集中するところだから、多大なお金が投入されている。
《81〜2009年度、国から県内の自治体が受け取った電源三法交付金は約2000億円。原子力事業者が納める核燃税は今年度156億円に上り、県税収入の13%を占める》(毎日新聞
原発は、研究開発のコストや設置コストが非常に高い。その相当部分を政府が肩代わりしてあげているという構図は、今回の事故でかなり知られるようになった。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110402
それにしても、交付金2000億円、核燃税が県税収入の13%というのには驚く。
核燃税とは「核燃料物質等取扱税」で、「核燃料サイクル施設に搬入される使用済み核燃料や放射性廃棄物原発の原子炉に挿入される核燃料などに青森県が課税している法定外税」。
http://www.pref.aomori.lg.jp/life/tax/003_18kakunen.html
ただ、研究開発や設置コストが高いといっても、安全対策コストには比べようがない。これは、今回の事故で誰の目にも明らかになった。
福島第一原発の事故で、東京電力の2011年3月期連結決算は最終損益が1兆2473億円の赤字となったことがニュースになっている。金融機関を除く日本企業では過去最大の最終赤字だという。
東京電力20日、2011年3月期連結決算で福島第1原子力発電所の事故に関連して特別損失を1兆204億円計上したと発表した。単独ベースでは1兆175億円の特損を計上した。
 内訳(単独ベース)は、福島第1原発の原子炉冷却や放射性物質の飛散防止に絡む費用4262億円、1〜4号機の廃炉費用2070億円、5〜6号機及び福島第2原発冷温停止状態に保つ費用2118億円、福島第1原発7〜8号機の増設計画の中止に伴う費用393億円など》(20日日経)
直接の事故対策と廃炉費用だけで、これほどの巨額になる。
ここには、今後具体化する「補償」は全く計算されていない。
どこまでを「補償」に含めるかが大問題になる。
にわかに計算できないくらいのお金が補償要求として上がってくるだろう。
避難する人たちのなかには今後、元の家に戻れない人々がたくさんでてくる。
放棄する土地・家屋などの資産、閉鎖した事業への補償の他、移住先の確保や再就職などへの手当てなど、すぐ思い浮かぶものだけで天文学的な額になる。
避難対象以外でも、周辺地域では、事故のせいで廃棄された農水産物と生産停止への補償、農水産物の運輸・加工品製造など関連事業の倒産・縮小への莫大な額の補償が発生する。
農作物の被害は、遠く神奈川県まで及んでいる。
経済活動が落ち込み、観光客も少なくなると、ホテルもガソリンスタンドも廃業せざるをえない。コンビニやクリーニング屋などのサービス業もやっていけなくなる。地域全体が落ち込むのである。どこまで補償されるのか。
九州や北海道でも外国人観光客が激減しているが、これはどうなるのか。
さらにいえば、関東、東北の多くの自治体が原発事故で直接にこうむった損失と今後の税収の落ち込みは深刻だ。
日本全体が傾いているのである。
チェルノブイリ原発の事故では、どうだったのか。
チェルノブイリ事故の30年間・損失19兆円 隣国ベラルーシ発表」
 ベラルーシ非常事態省は23日、1986年に隣国ウクライナ(当時は両国ともソ連)で起きたチェルノブイリ原発事故で、同年から2015年までの30年間のベラルーシの損害額は計2350億ドル(約19兆円)に達するとの推計値を発表した。同国メディアが24日伝えた。
 ベラルーシは国土の23%が放射性物質に汚染され、汚染地域の対国土比がウクライナ(7%)、ロシア(1・5%)に比べると極めて高い上、経済・財政は脆弱で、負の遺産に苦しんでいる。
 ベラルーシの損害額の81・6%は汚染地域の産業支援と放射線防護措置の実施に絡む経費で、12・6%が経済活動の直接・間接的な損失。汚染地域内の2千平方キロ以上の農地が耕作不能になったほか、石油・天然ガス田も採掘ができなくなった。約13万8千人が退避、移住を余儀なくされた》
  (3月25日、共同通信
為替レートによって数字は変わってくるが、まさに亡国の淵に立たされたのだ。
(つづく)