首都圏でも高い放射能汚染

原発事故の被爆対策では、何もしない政府に見切りをつけて、民間がどんどん動いている。
ある市民団体が、首都圏で放射能の土壌調査を実施し、きょう、参議院議員会館で記者会見を開いた。
6月中旬に『日刊ゲンダイ』が、都内170か所の放射線量を公表。最高値が有明の2.91μsv / 時という衝撃的な数値を明らかにしたほか、葛飾区、江戸川区などにも高汚染箇所があり、そのなかには子どもたちが遊ぶ公園もあったと報じた。
その後、週刊誌が追いかけて記事を書くまで、政府も自治体も何も調べていなかった。
そこで、「放射線防御プロジェクト」という市民団体が、150ヶ所の土壌を民間会社(同位体研究所)に依頼して独自調査した。
この団体は、フェイスブックでつながった5000人のグループを中心につくられたという。1ヶ所調べるのに1万5700円かかり、これをみなメンバーのカンパでまかなったそうだ。とくに子どもを持つお母さんたちの危機感は強く、会見場でも女性メンバーの姿が目立った。
結果を「チェルノブイリ」の汚染地4区分に比較しているところが分かりやすい。
東京都江戸川区、千葉県松戸市、埼玉県三郷市茨城県取手市に高い線量(放射性セシウム合算)を示し、なかには、「チェルノブイリ」の第2ゾーン(55万5千ベクレル/平方m以上)、つまり全員が退去すべしとされる「無条件移住地区」の汚染度にあたる場所もあった。
http://www.radiationdefense.jp/investigation/metropolitan
チェルノブイリの4区分についてはhttp://d.hatena.ne.jp/takase22/20110415
チェルノブイリ」の汚染地が不規則にまだら状に遠くまで分布し、300km離れたところにも第2ゾーンレベルの高い線量の土地があるのは知っていたが、「フクシマ」の死の灰も相当遠くまで飛んでいる。3月15日に放射能雲が首都圏を通過したときに大量に降下したという。
それにしても、埼玉県三郷市は、福島第一原発から直線距離で200kmもあるのに、第2ゾーンなみの約92万/平方mも出ている。驚いた。
いま、日本で不安が拡大しているのは、政府が情報を出さず、具体的な対策を採らないままで「大丈夫」と繰り返すからだ。あとで、お茶の葉も、牛肉もと「大丈夫」じゃない事実が出てくるから、なおさら不安になる。
政府には、まずは、100キロを超えた場所も含めた、詳しい汚染調査を行ってほしい。その上で、緊急除染措置として、子どもや妊婦にかかわる施設を優先的に、極端に高い汚染箇所をピンポイントでつぶす作業をしてほしい。
とりあえず、そこまでを急いでやるべきだ。
記者会見では、「放射線防御プロジェクト」から菅総理と1都6県の首長に宛てた「要望書」が発表された。大きく二つある。
「1. 関東地域の500mメッシュの詳細な放射能土壌汚染調査を行ない、その結果をもとに生活圏全般にわたる徹底的な除染、立ち入り禁止区域の設定を実施すること」
「2. 飲食物からの内部被曝を避けるため、食品の放射性物質の暫定基準の見直しを実施すること。全食品の放射性物質検査を実施すること」
第一の要求については、ちょっと意見がある。
汚染調査は「500mメッシュ」では粗すぎないか。「○丁目あたりが高いらしい」という情報では、除染の手引きになるだろうか。
放射性物質の汚染は狭い所に集中していることがよくある。例えば、ある学校の中庭の一角だけが飛びぬけて放射線量が高いなどというように。今回の「プロジェクト」の調査でも、「植え込み」や「道路脇」で高い汚染が見つかっている。
ピンポイントの緊急除染のためには、むしろ、空からの計測で、丁寧に「面」でおさえた汚染地図を政府に作らせたい。地上で土を採取して細かくメッシュを絞る方法より、人件費を考えると安上がりかもしれない。
(つづく)