私の知り合いで放射線検知器を購入する人が増えている。
ツイッターで毎日、自宅周辺の数値を発信している友人もいる。ホットスポット探しが、民間の手で今も精力的に続いている。
「おかみには頼っていられない」という行政への不信が不安を広げ、こうした動きを加速しているのだろう。
先日、テレビ(NHKスペシャル「広がる放射能汚染」)で、国立環境研究所が、原発から飛散した気体状の放射性物質がプルーム(放射性雲)となって移動するさまをSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)で計算し、それに雨・雪の情報を加味して、各地への放射性物質の降下を予測していた。
そのシミュレーションの結果で、原発から110km離れた栃木県北部のホットスポットを見事に的中させていたが、こうした情報は、事故直後からあったはずだ。なぜ、はやく情報公開しないのか。
政府主導で、広い範囲で調査し、各地の汚染度を知らせることをすぐにやってほしい。
さて、「チェルノブイリ」の犠牲者はどれほどか。
05年のフォーラムをもう一度振り返ると、将来のがん死を含めて「4000人」を事故による犠牲者とし、すでに起きた健康への影響としては「小児甲状腺がん」とロシアの高線量被曝の「リクビダートル(事故処理作業者)の白血病増加」のみを認めた。
このフォーラムはIAEA、WHOなど国連機関とベラルーシ・ロシア・ウクライナ政府などが主催したものだ。まず、フォーラムをめぐる政治的な環境だが、原発推進のIAEAの主導のもとにあったと思われる。1959年、IAEAとWHOは「統計に関する」問題では互いに調整、相談するという協定を結んでおり、WHOは放射能の健康への影響といった疫学にかかわる問題をIAEAへの「相談」なしに扱えないのだ。
さらに、被災3カ国も、チェルノブイリであれだけの大事故を起こしておきながら、原発については推進の立場で、IAEAとは協調関係にあった。
被災3カ国は、フォーラムの結論を受け入れている。
フォーラムの結論が被害を「控えめ」に描く事情がわかる。
その一方で、チェルノブイリ事故の影響ははるかに深刻で、すでに相当数が命を落としており、がんだけでなく、さまざまな疾病が増えている、さらには、後生への遺伝的影響も見られるという報告もある。
佐藤幸男氏(元広島大学原爆放射能医学研究所長)によれば、ベラルーシの汚染地区では先天性異常、ダウン症が増加しているという。だが、同じ地区で遺伝的影響を調べたIAEAの研究結果は全く正反対になったという。http://cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=421
ECRR幹部、クリス・バズビー博士が来日している。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110721
彼はチェルノブイリフォーラムを批判する代表格の一人と言っていいと思うが、20日、自由報道協会主催の記者会見でこんなふうに語っている。
「(福島第一原発の)100キロ圏内で癌の発生率が今後10年間で約32%ほど上昇し、10万人単位のがん患者が出ると予測する」
「チェルノブイリ後、ベラルーシではファンタスティックな出産率の激減があった。現在においても、ベラルーシで生まれる4/5人の子供は病気だ。これは福島の状況においても重要な要素だろう」
http://iwakamiyasumi.com/archives/11194
ベラルーシで生まれる子どもの8割が病気だなんて、とても信じられない。
(つづく)