スーチーさん制裁解除に転換か

takase222010-11-18

かつて、アウンサンスーチーさんに自宅でインタビューしたさい、「日本に望むことは何ですか」と質問した。援助や投資、その他ビルマの軍事政権を利することをやめてほしい、観光に来ることも遠慮してほしいというのが彼女の答えだった。
そのスーチーさんが、自国への経済制裁への考え方を大きく変えたと報じられている。
軟禁から解放された翌日の14日に、記者会見で語った内容が、オーストラリアABCの記事に書かれている。一部を紹介しよう。
《「アウンサンスーチー制裁に関する立場を転換」
解放されたミャンマーの反政府指導者アウンサンスーチーは、ビルマへの制裁を緩めるよう西側諸国の指導者たちと話し合うことに合意した。
アウンサンスーチーは、以前、軍事政権に圧力をかける手段として制裁を支持し、旅行者がビルマに来ることにさえ、彼らの落とす金が体制に資金を提供することになるとして疑問視したほどだったから、これは大きな転換である。
しかし、制裁は、軍民政権よりもビルマの国民により大きな影響を与えると懸念されている。
 記者会見では、ノーベル賞受賞者であり民主化の偶像である彼女は、もしビルマの国民が望むならば、西側の指導者たちに制裁を解除するよう話すつもりだと語った》(以下略)
http://www.abc.net.au/news/stories/2010/11/14/3065937.htm
日本の新聞記事では、
スー・チーさんはまた、欧米によるミャンマーへの経済制裁について、「国民が解除を望み、国民のためになるならば考えたい」と述べた。スー・チーさんは以前にもタン・シュエ議長に対し、制裁解除のために軍政に協力する意志をしたためた手紙を出している》(産経)
《今後の活動を巡っては「ミャンマーの直面している問題は一夜では解決できない」としたうえで「和解とは対話で互いの立場の違いを認めることから始まる。我々は妥協することもいとわない」と言明した。
 国際社会との関係では「我々が前進するため、すべての国に支援を求めたい」と語った。米欧諸国による軍事政権への経済制裁の扱いでは「国民が制裁解除を望むなら考慮する」として、民主化プロセスが軌道に乗る前の制裁解除にも一定の理解を示した》(日経)
今回のスーチーさんの軟禁解除は、選挙を行うこととセットの施策だ。
議席の4分の1がはじめから軍人に振り分けられたり、立候補に大金が必要だったり、かなり問題のある選挙で、スーチーさんの政党NLD(国民民主連盟)はボイコットした。結果は議席の8割は軍政側が取った。
だから、民主化が進展したとはいえないのだが、もし記事のとおりに立場を「軟化」させているとすれば、それは何故なのか。
ここには中国の存在が大きく影を落としていると思う。
中国は北朝鮮ミャンマーの抑圧的な政権を支える姿勢を明らかにしている。ミャンマーでは中国の「衛星国」になりつつあるとの指摘もあるほどの事態が進んでいる。
中国ががどんどん経済的にも国際政治の上でも力を伸ばす中、国際社会がミャンマーの軍事政権に圧力をかけること自体が難しくなってきている。
ミャンマーの直面している問題は一夜では解決できない」というスーチーさんの発言から、民主化の困難さが伝わってくる。