BPOがサンプロ「派遣法誕生」をシロ判定

9日、ジン・ネットが制作協力したサンプロ特集「派遣法誕生」につき、BPOで晴れて「シロ」判定が出た。
この特集、いろいろ話題を呼んだのだが、これについては過去の日記を参照してください。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20090201
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20090331
二紙から記事を紹介する。
BPOサンプロ雇用不安報道「問題ない」
 放送倫理・番組向上機構BPO)の放送と人権等権利に関する委員会は9日、報道番組「サンデープロジェクト」(テレビ朝日朝日放送共同制作)の特集で「雇用不安を生んだ犯人とされ、名誉を傷つけられた」として謝罪・訂正放送を求めた元労働次官ら3人の申し立てに対し、「重要な部分は事実に反するところがなく、放送倫理上問題ありとはいえない」とする見解を公表した。一方で、「驚くべき策略」など否定的印象を強調する用語を4回使ったことについては、配慮が足りないとして局側に「反省」を求めた。
 問題となったのは今年2月1、8日に放送された「派遣法誕生」。86年施行の労働者派遣法が現在の雇用不安につながったとする内容で、元労働次官と経済学者が導入を指導したなどと報じた》(毎日新聞
サンプロ報道「放送倫理上の問題なし」 BPO人権委
 放送倫理・番組向上機構BPO)の人権委員会は、労働者派遣法の「登録型派遣」について放送したテレビ朝日の番組「サンデープロジェクト」に名誉を棄損されたとする元労働事務次官らの申し立てを審議し、「表現に関して配慮すべきだった点はあるが、名誉棄損はなく放送倫理上の問題もない」とする見解を9日、次官側に伝えた。
 番組は2月に放送。85年の同法成立時に登録型派遣が「ひっそりと盛り込まれた」などと指摘した。この推進役として名指しされた当時の労働事務次官と経済学者が「事実誤認に基づく恣意的(しいてき)な報道」などと申し立てた。
 見解では「放送には重要な部分で事実に反するところがない。現在の雇用不安に至る原因を探るという公共性の高い性格を有し、名誉棄損などの違法性はない」と判断。申立人らの否定的な印象を強める表現を繰り返した点などについては反省を促した。
 堀野紀(おさむ)委員長は「非常に優れた調査報道。綿密な取材で多面的な分析も加えている」と語った》(朝日新聞より)

取材対象者から「事実誤認だ、訂正放送をして謝罪しろ」と申し立てられたのだが、BPOからは「良く取材していますね」と誉められたわけだ。「やらせ」や過剰演出などでテレビ局や制作会社が厳しく批判されるケースも多々あるなかで、BPOがここまではっきり「シロ」と判定するのは、かなり異例だと思う。「シロ」なのだけれど、表現のきついところがあるので気をつけましょうと注意されたということである。
誰かを犯人だと糾弾したり、責任を追及したり、「工作員」を直撃したり・・・というきわどい番組をやってきたので、どうしてもトラブルは多くなる。
私がかかわった番組で、BPOの審議にかけられたのは初めてだったが、かつて、私は番組が名誉毀損で訴えられ、二年間裁判を闘ったことがあった。結局、原告が途中で脱落してしまい「不戦勝」だったのだが、日本の裁判では、我々メディア側に真実であることの立証責任がある。これはメディアにとってきつい。
面白いことに、アメリカでは全く逆で、訴える側が「この番組のどこがなぜ問題なのか」を立証しなければならない。原告の負担が大きいが、そのかわり、もしメディアが負ければ目の飛び出るような賠償金が科せられる。
日本ではメディア側、つまり私たちが「なぜ、このナレーションは正しいのか」と一つ一つ立証していかなくてはならない。裁判の準備は大変な作業量で、へとへとになったが、今ではいい経験をしたと思う。
事実の確認という基本がどれだけ大事かを思い知らされたからだ。