イランはどうなる1

takase222009-06-21

いまイランで起きている事態と今後の対米関係について取材し、サンプロで「渦中のイラン? 保守強硬派vs改革派」として放送した。
最後の取材が木曜日で、他に新着のニュース素材なども入れ込むので、終盤の編集作業が立て込み、VTRができあがったのは番組が始まった10時すぎだった。
スタジオでは、いつも準備不足が気になって「とちりませんように」と気が気ではない。普通ならCMタイムは、次のスタジオでしゃべることを覚えるのに必死になっている時間なのだが、きょうはCMにサヘル・ローズが出ているのに気づいた。私は彼女が出るCMを観たことがなかったので、思わず身を乗り出して観てしまった。ということは、きょうはちょっと落ち着いていたのかもしれない。
17日水曜日、つけっぱなしにしているオフィスのテレビに、たまたまサヘル・ローズが出ていた。NHKの「ゆうどきネット」で、彼女をスタジオに招いて紹介していた。今週27日放送の土曜ドラマ風に舞いあがるビニールシート」の番組宣伝で、サヘルがピアニスト役で出演するという。オスカーを狙うという彼女の演技がどんなものか見てみたい。
サヘルはイランに貢献したいと言っているが、今の祖国の情勢をどう思っているのだろうか。
さて、今回のテヘラン反政府運動は、30年前のイラン革命以来という大規模なもので、これに対する弾圧もこれまでにない苛烈さのようだ。
私たちが今回イランでインタビューしたうち、3人もが身柄拘束されている。ハタミ時代の副大統領、アブタヒ氏、同じく当時の外務次官のアミンザデ氏、そして経済評論家のレイラズ氏。もちろんいずれも改革派の著名人である。
メディアへの弾圧も激しくなっている。
《文化イスラム指導省は16日、毎日新聞などに、記者証を無効にし、支局外での取材を禁止すると通告。担当者は「選挙以外の取材でも、トラブルが生じ、治安当局に逮捕された場合は一切関知しない」と述べた。(略)
 イランのメディアが元々報道規制を受けていたため、反大統領派は外国メディアを通して国内情報を入手する一方、国内では報じられない情報などを提供してきた。当局はこうしたメディアの動きが「混乱に拍車をかける」と判断、規制強化に踏み切った。
 国境なき記者団(本部・パリ)によると、選挙後から16日までに少なくとも11人のイラン人ジャーナリストが逮捕され、オランダのテレビ記者2人が拘束後、国外追放された。携帯電話でデモを撮影した市民が逮捕された例もあるという。》http://mainichi.jp/select/world/news/20090618k0000m030077000c.html
市民も脅えているようだ。木曜日、イラン在住の日本人に話を聞こうと電話をかけた。前日に電話インタビューの了解を取ってあったのだが、はじめの二人に断られた。
「きのうOKと言っておいて申し訳ないのですが、よく考えてみると、取材に応じることは危険なので勘弁してください」。
取材に応じてイラン当局を批判したことが当局に知られれば、滞在許可を出してくれなくなる、さらには逮捕されるかも知れないという。彼らは旅行者ではない。向こうで仕事を持ったり、結婚したり、長期滞在しているので、いざとなると生活基盤を失ってしまう。怖がっている彼らの声で、イランが異常事態にあることをひしひしと感じた。3人目の人が、音声を変えることを条件にやっと応じてくれた。
電話インタビューで聞いた話で番組中紹介できなかった情報としては;
毎日夕方からデモがあるので、日系企業も含めて会社は休みにしたり午後2時で退社になる。夜になると人びとが家の屋上に出て「アラーは偉大なり」と叫んでいる。抗議と犠牲者追悼の意味だという。
サンプロの特集は、独自の評価・分析を打ち出すので、他のニュースや報道番組と違った論調になることが多い。初めて観る人は違和感を持つかもしれない。
今回の私たちの評価は;
1.選挙に不正があった可能性は高い。だが、それがアフマディネジャド勝利という結果を覆したとはいえない。
2.今後イラン革命体制は次第に不安定になっていくが、すぐに体制転覆には至らないだろう。
3.ムサビよりもアフマディネジャドの方が対米改善の可能性があった。しかし、今回の事態で非常に難しくなった。・・・というもの。

こういう評価をしたのはなぜか。
(つづく)