サンプロの思い出1

takase222009-12-21

先週17日はサンプロの忘年会だった。
冒頭、番組打ち切りが会場に知らされた。「来年3月で番組が終わる」との噂があったが、それは本当だとの田原総一郎氏も挨拶。会はお通夜のようにしんみりと始まった。
寂しい雰囲気を振り払うように、MCの小川彩佳アナとADのNさんが日本舞踊を披露。小川さんは、花柳流の名取だという。(写真は左が小川さん)
サンプロがなぜ打ち切りになるのか、詳しくは知らないが、経費削減も理由の一つに違いない。今はどこのテレビ局も予算縮減で、テレビ朝日一局で、今年度たしか150億円の経費カットをするという。「素敵な宇宙船地球号」もリニューアルでがらりと変わってしまい、受注できなくなった。金のかかる番組はどんどん打ち切りになっている。番組が存続しても、MCを高額ギャラのタレントから局アナに替えたりして経費を削っている。
在京、在阪の民放テレビ局が赤字転落するなどという事態は、10年前には想像できなかった。サンプロ打ち切りは、この番組が最大のお得意さんだった弊社には大打撃だ。
サンプロが終わるのは、わが社の財務問題を離れても、とても残念である。
特集で海外取材や長期取材に耐えられる予算を持つ報道系の番組としては、民放ではサンプロが代表格だった。ジャーナリスト相川俊英さんがリポートする「地方自治」、大谷昭宏さんの「言論」などのシリーズには固定ファンも多かった。この特集コーナーでは私たちもたくさん仕事をさせてもらった。
10月の日記に、「ザ・スクープ」で、横田めぐみさんらしい人を目撃したという証言を報じたことが私の人生を変えたと書いた。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20091009
実は、あれはサンプロの取材の延長だった。
96年3月に、「スーパーK」事件が起きた。「よど号」ハイジャック犯の一人が、偽ドル札にからんで、カンボジアアメリカのシークレットサービスに拘束されたのだ。平壌にいるはずの「よど号」犯が東南アジアにいた、しかも偽ドル札を扱っていたらしい、マスコミも大きく報じた。
私たちはこれを取材して、サンプロで連続特集を組んだ。現地スタッフを入れて10人近い人数を投入した文字通りの「総力取材」で、スクープ合戦では圧勝した。カンボジアで「よど号」犯とその周辺にいた北朝鮮人と見られる男たちを撮影した貴重なビデオを入手し、番組でこれを流した。
この番組に韓国のKBSが注目し、使用権を買って韓国で流した。テレビを観て、驚いたのが、元工作員安明進(アンミョンジン)だった。ビデオに映っていたのが、自分の2年先輩の工作員たちだったからだ。それだけでなく、「よど号」犯の男は、工作員養成所の式典などに時々招待されて来ていた「日本の革命家の先生」だった。
その話を知って、安明進にソウルでインタビューしたのが、97年の2月4日。そこで出たのが、「めぐみさん目撃証言」なのだ。
その後、私は北朝鮮関係の取材に没頭するようになり、核開発やミサイル、政治犯収容所や脱北者の問題なども手掛けた。中朝国境、リビア、イランにまで行く機会に恵まれたのも、サンプロのおかげだ。
最も思い出の多い番組であり、忘れられないシーンやエピソードは数え切れない。
あるときは、取材をやめてくれたら「なんでもする」と持ちかけられたことがある。お金で取材を握りつぶそうというのだ。
(つづく)