イランはどうなる3

takase222009-06-23

梅雨入り前に撮ったカシワバアジサイ
近所の垣根から牛がぬうっと鼻面を突き出したように咲いていた。いろんなアジサイがあるものだ。
・・・・・・・・・・・
サンプロ特集では、「騒動は鎮静化する」なんて言って、えらく民衆に冷たいじゃないかと感じた人もいただろう。
アフマディネジャド政権の民衆弾圧は不当だし、言論の自由は守られなければならない。さまざまな人権団体が声を上げるのも当然だ。
ただ、弾圧の不当性を批判することと、イランがどうなっていくのかを客観的に分析することは別の話である。
アフマディネジャド氏は、大統領としては異色の人である。
「清貧」を売りにし、公式の会議でもテレビのインタビューでもジャンパー姿で登場する。重厚で高貴な雰囲気を湛えるハタミ前大統領とは対照的だ。「品がない」とインテリからは眉をひそめられても、彼の「庶民派」ぶりは低所得層には強くアピールするようだ。
一方、言動の端々には、ある種の「危なさ」を感じさせる。
イランのシーア派では9世紀末に「お隠れになった」指導者=「隠れイマーム」がいつの日か再臨すると信じられている。アフマディネジャドは「隠れイマーム」がいつもそばにいると公言し、日本で言う「陰膳」とともに食事をし、祈りの時には自分の敷物の隣にもう一枚「隠れイマーム」用の敷物を敷くという。本当に信じているのか、パフォーマンスでやっているのか分からないが、神がかった人である。
私が三年前にイランに行ったときには、彼の肝いりで、ユダヤ人のホロコーストはなかったとする国際会議をテヘランで開いていた。過激というか国際的には許容範囲外の内容を大統領という立場で語る。何をするかわからないという怖さがある。
じっさい、現政権は怖いことをやっている。
《【テヘラン春日孝之】大統領選の開票結果を巡り混乱が続くイランで、革命防衛隊系のファルス通信は21日、治安当局がイスラム体制の重鎮ラフサンジャニ元大統領の親族5人を20日に逮捕したと伝えた。元大統領は、抗議運動を主導する改革派ムサビ元首相を支援しているとされる。当局は反対派の摘発によって組織力を弱体化させる狙いとみられる。(略)ラフサンジャニ氏はアフマディネジャド大統領の政敵。当局は既に改革派の要人や論客、支持者らを数千人規模で拘束したとの情報もある。》(毎日新聞
(ちなみに、21日のブログに書いたように、春日孝之特派員は記者証を取り上げられているので、自分で取材したのではなく、イランのメディアを紹介する形で記事を書いている。)
ラフサンジャニ師とは、聖職者で大統領を2期つとめた政界の重鎮。最高指導者の任免権がある専門家会議の議長でもあり、イランのナンバー2と言っていい大物だ。政府はその親族を逮捕するという、これまでなら考えられない挙に出たのである。
《12日投票のイラン大統領選は、アフマディネジャド大統領(保守強硬派)勢力とムサビ元首相(改革派)勢力の経済利権を巡る「抗争」と見る向きもある。大統領は出身母体の革命防衛隊の系列企業に巨額の利益誘導をしてきたとみられる。ムサビ氏を支援しているとされるラフサンジャニ元大統領の既得権益が侵害されており、両勢力の「暗闘」が続いているという。
 アフマディネジャド大統領は膨大な石油収入を背景に、地方や低所得者層を対象にした経済政策に力点を置く一方で、革命防衛隊系企業に「特別な配慮」をしてきたことは公然の秘密だ。
 革命防衛隊の内情に詳しい政治評論家、レイラズ氏によると、05年の大統領の就任以来わずか10カ月の間にこれらの企業が獲得した公共事業は総額150億ドル(約1兆4000億円)。それまでの累計は40億ドルだった。
 一方、ラフサンジャニ氏はイスラム革命(79年)以来、石油を中心とした利権を握ってきたとされる。革命防衛隊系企業は石油分野にも進出し、「軍人たちの経済活動が(同氏一族や側近の)活動を阻害し始めた」(レイラズ氏)。
 こうしたことから、ラフサンジャニ氏はムサビ氏を支援することで大統領再選を阻み、既得権益の侵害に対抗したというわけだ。》http://mainichi.jp/select/world/mideast/archive/news/2009/06/12/20090612dde007030007000c.html
これまた毎日新聞の記事だが、記事中に出ているレイラズ氏は、21日のブログに身柄を拘束されたと紹介した人だ。
この記事には、イラン情勢を見るうえでのキーワードが正しく指摘されている。「革命防衛隊」である。
(つづく)