シンポジウム「最前線ジャーナリストの真実」

きのう、日本記者クラブで、「ミャンマー軍による長井さんの殺害に抗議する会」のシンポジウム「最前線ジャーナリストの真実」があった。APF代表の山路徹さん、アジアプレスの石丸次郎さんと私がパネリスト。http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/
タイトルがすごいので、どんなことになるのか不安だったが、かなり面白いシンポジウムになった。
山路さんが射殺事件後の顛末を語ったが、ミャンマーでは棺おけを使わないので、特注で作ったなどの事実を初めて知った。討論も盛り上がり、私が、長井さんの取材のやり方にはフリーの弱点が出ていると指摘したら、山路さんが猛烈に反論。「僕らはたとえ準備不足であっても現場に飛び込むんですよ!」と机を叩かんばかりに熱弁をふるう場面もあった。終わってから、会場に来ていた宗教学者島田裕巳さんたちとビールを飲んだが、「こんなに面白いシンポジウムはめったにない」との言葉をいただいた。
ジンネットは、アフガン戦争には4人、イラク戦争には8人を現地取材に送り出した。この人数にはフリージャーナリストも入っており、アフガンでは近藤晶一さん、イラクでは加藤健二郎さんと桃井和馬さんに取材協力していただいた。私たちも長井さんの事件は他人事ではないし、フリーの立場も理解できる。9月29日の日記に書いたように、安全確保という点ではフリーには構造的な弱点があるうえ、「売る」ためには無理をしがちになる。ジャーナリストの宇田有三さんによれば、長井さんが殺されたときにも現場近くにはアルジャジーラ、BBCなど複数の大通信社のカメラがあったそうだ。瞬時に世界配信される通信社、大テレビ局の映像と同じものを撮っていては「商売」にならないと、一歩前に出て行くのがフリーだ。ではどうするのか。これについてはあらためて書いてみたい。
それにしても、戦場や紛争地を、フリージャーナリストや我々のような「外部」のものしか取材しないということ自体がおかしい。問題は、日本の大マスコミが、事故やトラブルを極端に忌避する体質を持っていることだ。
戦場、紛争地ばかりがクローズアップされるが、実は本当に勇気あるジャーナリストは、去年殺されたアンナ・ポリトコフスカヤのように、自分の生活圏で権力と闘う人々ではないか。日本国内でも、取材を深めていけば、危険やトラブルがいくらでも待っている。
大マスコミが危険地に取材を出さない性癖は、テレビ局でやらせ事件が起きると、制作プロダクションや下請けディレクターのせいにされることにまでつながっている。
戦場だけが問題ではないのだ。