北朝鮮とリビア7

テロ支援国家」指定は、アメリカの都合で、きわめて政治主義的に利用されてきた。
どの国が「テロ支援国家」かは、毎年の「国際テロ報告書」に書かれる。1979年指定時は、リビアイラク南イエメン、シリアの4カ国で、それ以降、いくつかの国が新たにリストに加えられたり、外されたりして、現在は、シリア(指定は79年)、キューバ(同82年)、イラン(同84年)、北朝鮮(同88年)、スーダン(同93年)の5カ国となっている。この制度創設以来のメンバーはシリアだけだ。
面白いのはイラクの扱いだ。79年に「テロ支援国家」と規定されたイラクは、82年突如リストから外される。イラクの体制が変わったり、政策転換があったわけではない。イランとの戦争が始まり、アメリカはイラクに肩入れしたからだ。きのうの日記に書いたように、「テロ支援国家」のままでは、「兵器輸出規制法」に抵触して、アメリカから武器輸出ができないのだ。
リストから外されたイラクは、晴れてアメリカから大量の兵器を導入して、イランと戦うことができた。
ところが90年、クウェート侵攻で、イラクは再び「テロ支援国家」とされた。そしてアメリカがイラクに攻め込んでサダム体制を転覆したため、2003年リストからはれて外されることになった。あまりのご都合主義に笑ってしまう。
北朝鮮がリストに入ったのは、大韓航空機爆破テロのあと、1988年のことだった。その後、「テロ支援国家」である理由に、赤軍派の「よど号」ハイジャック犯を保護していること、さらに2004年からは拉致問題も入ってきた。ただ、「テロ支援国家」の「テロ」は、第一義的にはアメリカに対するテロを指す。アメリカの飛行機に乗った多くのアメリカ市民が殺されたパンナム機爆破事件と、韓国に対するテロである大韓航空機事件では、アメリカにとっての重みが違う。拉致問題アメリカに直接に関わるものではない。アメリカの国民感情からは、北朝鮮を指定解除することに大きな抵抗感はないはずだ、
私たちは、「アメリカ命」とあの国をあてにしてはならない。アメリカの出方に一喜一憂せず、あくまでアメリカの政策を「利用する」という、冷静で主体的な姿勢を堅持すべきだ。これが、サンプロ特集「北朝鮮リビア」に込めたメッセージである。