長井健司さんの死によせて―中国からの連帯

takase222007-10-03

おととい1日、『中国の危ない食品−中国食品安全現状調査』(草思社)の著者、周勍(しゅうけい)さんの出版記念会見に出た。(写真は、FRchina.netに載っていたもの)
新聞、雑誌などの30人ほどの記者を前に、周さんは、まず長井健司さんの話からはじめた。
ミャンマーで亡くなった長井さんは、日本の誇りであるだけでなく、アジア人ジャーナリストみんなの誇りです。私たちは彼の遺志をついでいきたいと思います。長井さんを称えて黙祷したいと思いますが、ご賛同いただけますか」。
そして会場の全員が起立して瞑目し、長井さんを偲んだのだった。
北京在住のジャーナリスト、周さんのこの姿勢には感銘を受けた。日本ではマスコミがこれだけ報道していても、ジャーナリストの会議や集会で、長井さんのための黙祷などしているだろうか。ほとんどしていないと思う。自分のこととして受け止めていないからだ。
感動した私は発言を求め、「長井さんを哀悼してくださり感謝します。中国政府がミャンマーの軍事政権を強力に支援している一方で、周さんのように勇敢なジャーナリストがおられることに、私たちは励まされました」とエールを送った。会見後、私は周さんと固い握手をした。
彼はかつて天安門事件で3年も獄につながれた経験を持つ。最近もドイツの議員が北京で周さんに会おうとしたら、公安が面会を阻止したという。中国当局と体をはって闘っている人である。
去年周さんは「ユリシーズ賞」を受賞した。この賞は、殺されたロシア人ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤさんが2003年に受賞している名誉ある賞だ。
周さんは、会見で「専制政治の常套手段は脅しとウソだ」と食品の安全性を偽り、批判を握りつぶす中国共産党を歯に衣きせず激しく非難した。同じ専制政治に対して闘うミャンマーの人々に連帯しつづけるという。
長井さんの死は、世界中に知れ渡ることで、こうした闘う人々を刺激し、励ましている。そして、そこにそれぞれの政府の立場を超えた連帯の意識を育んでいる。何か大きな「うねり」が作られているのではないかとさえ思えてくる。

きょう午後、長井さんと親しいあるジャーナリストが「抗議する会」を立ち上げて署名運動をはじめたことを知った。まずは日本から大きな声を上げなければと思い、電話で、私も以下の抗議文の呼びかけ人にさせていただくことにした。

ミャンマー連邦
タン・シュエ国家平和開発評議会議長殿
駐日ミャンマー連邦大使館
フラ・ミン特命全権大使殿

抗議文

 2007年9月27日午後、貴国のヤンゴン市内にあるスーレーパゴダ付近で、
取材中だった映像ジャーナリスト、長井健司氏が、貴国軍治安部隊の軍人に
至近距離から銃撃され、殺害されました。
自国の国民に対するミャンマー軍の一方的な暴力による制圧行動について、
国際的な取材活動をしていた日本人ジャーナリストの生命を、
警告もなく銃で奪ったことは、
殺害を前提とした意図的かつ残虐な取材妨害行為であり、
国際社会の一員として、また日本人として、
我々はこの行為を断じて許すことはできません。
しかも貴国の当局は、
長井氏が亡くなるまで手離さなかった
ビデオカメラとテープを未だ返却していません。

われわれは貴国治安部隊軍人による長井氏の殺害について強く抗議します。
また、長井氏の殺害の経緯を明らかにするとともに、
犯人の特定と厳罰を求めます。
遺品であるビデオカメラとテープも内容の消去など一切の改竄を許さず、
返却することを求めます。

       

ミャンマー軍による長井さん殺害に抗議する会