小池百合子学歴詐称疑惑によせて

 3泊4日の九州の旅を終えて帰京。熊本市で講演したあと、福岡県朝倉市の山田堰などの農業遺産をめぐるツアーのガイドをしてきた

 15日夜は熊本市の紅蘭亭で十数人の講演食事会。16日は熊本市植木文化センターで中村哲医師が命がけで私たちに教えてくれたこと~平和そして人の道」というテーマで講演。約200人の参加者で会場がほぼいっぱいになり、中村先生への関心の高さをあらためて感じた。

 翌17日は山田堰の通水式を見学した。熊本駅発のバスツアーには半分が熊本から、残りは栃木、茨城、東京、奈良など各地から、計30人弱が参加した。私は中村哲医師と日本伝統の農業施設について解説するツアーガイドとして同行。山田堰については本ブログで何度か書いているが、現地の材料を使い、現地の人がメンテナンスできる灌漑施設を作ろうとしていた中村医師がモデルにしたことで知られる。

 中村医師とPMSは、山田堰方式の堰を次々に建設し、その数は十を超える。現在では灌漑面積が2万4千ヘクタール近くになり、熊本市の面積の6割に及ぶ。

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 17日午前11時すぎ、山田堰の水門が開けられると、筑後川の水が堀川用水へと導かれ、江戸時代から使われてきた水車群が回り出した。国指定遺跡の三連水車はメディア各社やたくさんの子どもたちが見守るなか大きな水音を立てて始動。朝倉の水車は、日本で唯一、農業に利用されている揚水水車だ。乾いた田が潤されていく様子に感動した。これから10月初旬まで稼働する。

始動した三連水車。(撮影は筆者)

朝倉の水車群は動力水車ではなく揚水水車で、用水の水面より高い耕地に水を揚げる。

水が田んぼを潤し始めた。これから田植えになる。

 中村医師は三連水車を含む朝倉の水車の構造を研究し、これもアフガニスタンに導入した。中村さんに水車作りを伝授したのが水車大工の妹川幸二さん(66)で、彼がこの地の水車のメンテナンスを担ってきた。近年体調を崩されて心配だったが、去年、橋本武治さん(44)という跡継ぎが見つかった。

十数年前の妹川さん(ジン・ネット制作のDVD「地域を潤し350年 歴史的農業遺産を守る」より

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 中村医師は朝倉だけでなく日本全国の伝統的な農業遺跡を調査・研究してアフガニスタンの感慨に採り入れている。今回訪れた熊本からも八代市の十連樋門、加藤清正公によるとされる土木技術の鼻ぐり井出(いで)や石刎(いしばね)なども採用されていた。

 中村さんは今の日本の風潮を批判してこう言っている。「利に惑わされて和を失い、先祖が営々と築いた国土を荒廃させ」ている、と。ご先祖たちは、次世代、次々世代のために豊かな国土を作ろうと懸命の努力をしてきた。各地に残る工夫を凝らしたさまざまな伝統の技術、施設はその結晶だ。そこに込められた先祖の思いをぜひ将来に受け継いでいきたい。
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 東京都知事選に小池百合子が3選を目指して立候補を表明した

 2期8年の実績と公約については、おいおい検討するが、まずは学歴詐称」問題を取り上げたい。

 小池氏の経歴がウソで満ち満ちていることは、2020年の都知事選直前に出版された石井妙子『女帝 小池百合子』(文藝春秋で暴かれたが、それでも女帝は2選を果たした。小池氏の得票率6割という圧勝を見せつけられ、なぜ都民はウソつきを都知事にするのかといぶかり失望した。

小池氏の移り身の速さと有力者に食い込むうまさ。細川、小沢、小泉にまとわりついてはのし上がっていく。(『女帝』より)

 しかし、ダメなものはダメ。ここで再び蒸し返したい。

 小池氏の学歴詐称疑惑はかなり前からあった。本ブログでも8年前に触れている。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20160805

 その後、オリンピック会場の大幅見直しなど、都民を驚かせる提案を行っては結局尻すぼみに終わり、パフォーマンスのうまさだけを見せつけてきた。私は彼女が拉致問題の集会に出入りしていたころから胡散臭い政治家だなと警戒していた。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20200627
 
 2017年には、関東大震災朝鮮人犠牲者の追悼式に追悼文を送るのを取りやめ、「希望の党」を立ち上げて政界を激震させている。当時のブログにはあきれ果てたようにこう書いている。

 「小池百合子東京都知事の動きは、もう『淫ら』と表現したい。『原発ゼロ』を打ち出して小泉元首相との連携をほのめかすわ、10月の首相指名について『(公明党代表の)山口那津男さんがいいと思う』などとリップサービスするわ・・勝つためにここまで節操なく振舞えるとは、バケモノだな」。https://takase.hatenablog.jp/entry/20170926

 結局、民進党は彼女によって空中分解してしまう。いやはや、すごい人物ではある。

 口先で権力にのし上がるうえではウソが不可欠。学歴詐称は大本のウソであるから、小池百合子という人間および政治家としての本質を見るうえで重要である。

 すでにご承知のとおり、学歴詐称疑惑は文春砲で再燃した。月刊文藝春秋5月号の『「私は学歴詐称工作に加担してしまった」小池百合子都知事 元側近の爆弾告発 緊急特集 都知事の「ウラの顔」 小島敏郎』である。

小島氏は元側近(文春より)

 以前学歴詐称疑惑が持ち上がったさい、エジプト大使館のフェイスブックカイロ大学の「声明」なるものがアップされて騒ぎが沈静化したが、これは小池陣営の「工作」によるものだったと、元側近の小島氏が暴露したのだった。
https://bunshun.jp/articles/-/71499

 「(小島氏が加担し、エジプト大使館のFacebookに掲載された)カイロ大学声明が発表されたことで、学歴詐称疑惑は、見事に鎮火されました。都議会自民党も「小池都知事カイロ大学卒業証書・卒業証明書の提出に関する決議案」から降り、対抗馬も立てませんでした。実質的に小池さんを推薦したのと同じです。小池さんは再選を果たしましたが、自民党の二階さんや都連には大きな借りができた。その結果、自民党寄りに変節していったのでしょう。」(小島氏)

 学歴詐称問題の「鎮火」は小池都知事の政治的立ち位置に影響したというのだ。となると、ますますこの問題は無視できないではないか。

 「関わった側近たちも厚遇しています。メールや電話でA氏と盛んにやり取りをした樋口さんは、21年1月に千代田区長選に出馬。小池さんが熱烈に応援し、若くして千代田区長となりました。荒木さんは22年7月の参議院議員選挙に立候補し、やはり小池さんが猛烈に応援した。惨敗しましたが、今も都民ファの特別顧問として小池さんと並ぶ立場にいます。」(小島氏)

 「共犯者」たちがみな出世するというおぞましい関係が見えてくる。

(つづく)