小池百合子学歴詐称疑惑によせて②

 ウクライナ関連の国際会議がつづいた。

 13~15日はイタリアでG7サミットが開かれ、ウクライナ支援策としてロシア中央銀行の約3千億ドルの凍結資産の運用益を活用することが決められた。その額およそ500億ドルをウクライナに資金援助するという。これはかなり大きい。

 ウクライナが提唱した「平和サミット」―包括的で公正かつ永続的な平和の実現に向けた国際的な議論の促進を目的とした首脳会合―は、15、16日、世界各地の約100の国・国際機関から岸田総理をふくむ多くの首脳級も参加してスイスで開かれた。

 サミットではウクライナが戦争終結の条件とする「平和の公式」10項目のうち、賛同を得られやすい「原発の安全確保」や「食料安全保障」など3つの項目で具体的な措置をとるなどとした共同声明を採択して閉幕。ただ、この共同声明には、サウジアラビアやインドなどおよそ10か国が署名を拒否し、とくにグローバルサウスの国々への支持拡大で課題を残した。

 3つの項目のもう一つが「捕虜の解放と連れ去られた子どもの帰還」だった。

 ウクライナ政府によれば、連れ去られた子どもは特定されただけで19,546人と2万人近くにおよび、帰国できた子どもはわずか388人に過ぎない

 ロシアは「強制ではなく戦闘地域の子どもたちを保護しているだけだ」とするが、軍事侵攻後の大統領令で、ウクライナ国籍の子どもを養子にする手続きを簡素化しており、占領地の子どもを自国民にする企てだと強く非難されている。国際刑事裁判所(ICC)は昨年3月、ウクライナで子どもの連れ去りに関与した疑いでロシアのプーチン大統領ら2人に戦争犯罪容疑で逮捕状を発付している。

 NHKの取材に応じたボフダン・イエルモヒンさん(18)は、ロシアに占領されたドネツクマリウポリ出身。両親をともに失い、学校の寮で暮らしていたがロシア軍が侵攻してきて、「安全のため」と称してロシアに連れ去られた。ロシアでは里親のもとで養子にさせられた、毎日、「ウクライナはネオナチだ」、「ウクライナでは臓器のために子どもが取引されている」などと聞かされ続けたという。徴兵の対象となる18歳を前に、SNSに自分の動画を投稿したことがきっかけで帰還に結び付いた

「帰国した日はウクライナ国旗を持って何度も飛び上がりました」と喜びを語る(NHK国際報道より)

18歳を前にSNSに動画を投稿し、帰国を訴えた(国際報道より)

 しかし、身柄を取り戻せたのはごくごく一部である。18歳になればロシア軍に徴兵される可能性が出てくる。迅速に子どもを帰還させる手立てを講じて欲しい。
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 小島敏郎が行動を起こした。

 20日都知事選告示2日前の18日、小池百合子都知事を経歴詐称で東京地検刑事告発したのである。

 小島氏は小池氏の環境相時代から20年近く側近で、都民ファーストの会の事務総長もつとめたが、文芸春秋」5月号で、4年前の都知事選前に経歴詐称騒動が噴出した際にカイロ大声明を巡る裏工作に加担したことを認める「爆弾告発」を行っていた。

 この日、小島氏は、小池氏が都知事選の経歴にカイロ大卒(しかも首席で)と書かなくても公選法の虚偽事項公表罪に該当するとして東京地検に告発状を提出した。

 刑事告発したあとの会見では、質疑応答で、「エジプト人の日本研究者のイサム・ハムザ東京国際大教授が「卒業証明書は本物」と反論する一幕もあった。自らもカイロ大の卒業生で、小池氏を学内で見かけたことがあると説明。文学部副学部長を務めたことがあり、学内の事情に詳しいとし、小池氏は「追試」で大学を卒業したと主張した」(東京新聞)という。

 このハムザ氏の乱入も謎で、彼の小池氏擁護の行動は何を意味しているのか。

 このあと小島氏はビデオニュースドットコムの単独インタビューに応じている。

www.videonews.com


 これを見る限り、小島氏の動機に不純なものは感じられず、誠実に事実を語っている印象をもつ。

 この中では、小池氏が学歴詐称を追及されぬよう自民党にすり寄ったこと(37分以下)、カイロ大卒の経歴に小島氏が疑問を持った理由(40分以下)、神宮外苑問題からカイロ大声明の裏工作を知ることになった経緯(45分以下)、経歴詐称問題が日本の主権にかかわること(48分以下)などが語られている。

 学歴詐称問題については、カイロ・アメリカン大学で修士号をとった経歴をもつ作家の黒木亮氏がエジプト現地で取材を行い、4年前《徹底研究!小池百合子「カイロ大卒」の真偽》をJBpressに連載して「まともには卒業していない」と結論づけている。この連載は、小池氏側の主張の矛盾を詳細に分析した決定版ともいうべき内容で説得力がある。

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 黒木氏の結論は「小池氏がカイロ大学の卒業要件を満たして卒業したという証拠、印象、片鱗は何一つ見出せなかった」というものだが、これは、もしカイロ大学が正式な「卒業証書」(なるもの)を小池氏に出したとしても「卒業要件を満たして卒業」していないという意味である。極端な話、どこの国でも、教育機関によっては、まともに勉強しなくても、何らかの思惑、配慮(例えばお金や権力への忖度)で卒業資格を付与することがありうるからだ。

「エジプトの有力政治家が『この人物を卒業生にしろ』と命じれば、学長は職員に命じて卒業証明書や卒業証書を作らせる。職員は入学記録や初年度の成績などを参考に成績表も偽造し、大学内の記録も含めて形式的に完璧にする。したがって書類だけを見れば瑕疵がない」

「エジプトに来たこともないクウェート人やサウジアラビア人が医学や歯学のディプロマ(学士と修士の中間)や修士の学位を得たりしている」(黒木氏の連載③より)。

 黒木氏は「不正卒業証書を持っていたからといって、学位としては認められない。これは当然のことである」と断じる。正論である。

「疑惑解消のために、一番重要なことは、小池氏が、学業実態があったことを証明することだ。重大な疑義が呈されているのに、「卒業証書はある。カイロ大学も認めている」で逃げ切ろうとするのではまったくお話にならない。どうやって証明するかは小池氏が考えることで、それができなければ「クロ」ということだ」と黒木氏はいう。(19日のJBpressへの寄稿)

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『女帝 小池百合子』より。このころから派手なパフォーマンスを得意としていたようだ

 ただ、裁判となれば、小池氏側は「卒業証書はある。カイロ大学も認めている」で押し通してくるだろう。エジプト政府やカイロ大学は小池氏を擁護するはずだ。この背景にあるのは政治権力の闇だった。
(つづく)