世界の難民・避難民の数は、日本の全人口にあたる1億2000万人を超え(年5月時点)、過去最多の水準に達しているという。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が13日に発表した「グローバル・トレンズ・レポート2023」によると、紛争が続くスーダンでは昨年末時点で1080万人が故郷を追われている。2番目に数が多いのはウクライナで965万人。
また、コンゴ民主共和国とミャンマーでも数百万人が国内で避難している。故郷を追われた人の約4割が18歳未満の子どもだという。さらに、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の推計では、ガザ地区で続く暴力により、昨年末時点で人口の75%にあたる170万人近くが避難を強いられている。
私たちにとって当たり前の食事、仕事、勉強、病気治療、遊びなどの日常の営みが難民・避難民たちには奪われている。その状況を想像すると、早く何とかしなければという焦燥感と、こうした事態を招いた原因(紛争、迫害、気候変動など)に強い憤りを覚える。
UNHCRは「急増する強制移動に対する無関心と行動の欠如に警告」している。世界の指導者たちよ、戦争なんかしている場合ではないのだ。
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小池百合子東京都知事の元側近、小島敏郎氏が小池氏を経歴詐称で東京地検に刑事告発した18日、小池氏の公式Xに、アラビア語を使っているとされる二つの動画がアップされた。
環境大臣時代にエジプトのTVに出演した映像、懐かしいですね。キャスター時代には、世界で最も難しい言語の一つであるアラビア語でのインタビューを、通訳なしの生放送で何度も行いました。… pic.twitter.com/XsbwRFE0Lh
— 小池百合子 (@ecoyuri) 2024年6月21日
キャスター時代の動画で、小池氏自身これを見ながら「お宝映像」じゃないですか!と得意げな表情を見せている。
SNSでは「流暢にかつ、堂々と通訳なしで話される姿」、「小池百合子、半端ないって」、「すげえ喋れるやん!」と感心する声が上がっている。
ところが、この動画のアラビア語(らしきもの)を聞いて、全然わかんない! これアラビア語じゃない! と言うのは飯山陽氏。4月、東京15区の衆院補欠選挙に日本保守党から立候補した麗澤大学客員教授だ。私、この方はちょっと生理的に苦手なのだが、説得力ある批判なのでがまんして観た。(14分以降に小池氏のアラビア語分析)
私の旧友に、小池氏と同時期にカイロ大学に留学していて、彼女とも何度か会った(ただし大学の外で、大学で見かけたことはなかったそうだ)という人がいて、アラビア語も堪能なのだが、小池氏の動画を見て、飯山氏と同じ意見だと知らせてくれた。ちなみにこの友人は、カイロ大学を卒業することができなかった。
小池陣営が、お粗末な動画を小島氏の刑事告発の日に人の目にさらす措置をとったのは、学歴問題を非常に気にしていることを示す。アラビア語使いからは酷評されて「お宝映像」はやぶへびだったとも言えるが、アラビア語の分らぬ多くの人にはイメージアップになったかもしれない。
自分の経歴を詐称し始めた若き小池氏について、カイロで2年同居した北原百代氏は、小島敏郎氏の「爆弾告発」が載った同じ『文藝春秋』5月号に手記を載せている。
北原氏は、ベストセラーになった石井妙子『女帝 小池百合子』(2020年)までは早川玲子の仮名で証言していた。『女帝』の中で、北原氏は同居人以外には知ることのできないリアルな小池氏の姿を描写していた。試験勉強中の小池氏は―
《鉛筆でひたすら文章をノートに筆記している。(略)進級試験に向けて必死に勉強しているように、最初は見えた。だが、その勉強内容を知って、早川さんは驚く。意味をまったく理解しようとせず、ただ、教科書に載っている文章を図形のように暗記しようとしていたからだ。小池は早川さんに言った。
「テスト用紙が配られても、そこに書いてある問題も、どうせ読めないもの。だから、とにかく暗記した文章をひたすら大きな文字で書くの。空白が少ないほどいいんだって。東洋人の女子留学生だから大目に見てくれると思う」》(『女帝』初版P100)
「東洋人の女子留学生だから大目に見てくれると思う」という発言には、その後の彼女の生き方を暗示させるものを感じるが、それはともかく、小池氏が進級試験に落ちたことは言うまでもない。しかし、小池氏の「経歴」では留年せずに4年で卒業したことになっているのが謎である。
はじめは小池氏がタレントとして成功するのを喜んでいた北原氏だったが、国会議員に転身したさい、学歴詐称は公職選挙法に違反するのにメディアが追及できなかったことに驚いたという。
過去を知る者として、小池氏から避けられていることを自覚していた北原氏だが、環境大臣になったときから、「私はあなた(小池氏)にとって、煙たいどころではなく、消えて欲しい人間なのではないか、と思うように」なったという。
《エジプトは軍事国家でアラブの春以降、政情不安で治安も悪くなっています。一方、日本はエジプトに多額のODAを出している。カイロ大学は軍の影響下にあり、大学にもODAが投入されています。大臣になったあなたはエジプトにとって大事な存在になったはずです。
ご存知の通り、日本と違いエジプトは不正がまかり通る社会です。権力があれば大抵のことができてしまう。人が殺されても、調査が尽くされることもありません。
私は次第に恐怖を覚えるようになり、信用できる数人の友人に、悩みを打ち明けました。すると、「そういうことは黙っていたほうがいい」と言われました。》
北原氏は働いていたカイロで、人混みが怖くなって表に出なくなり、目立つことを避けSNSでの投稿も諦めた。小池氏と2年同居したせいで、「普通に暮らせなくなって」しまったのだ。
そして―
《百合子さんが都知事となり、さらに総理大臣候補とまで言われるようになり、私の恐怖や苦悩はさらに増していきました。
いくら私があなたのために事実を語らずにいても、隠れ暮らしていても、この恐怖からは解放されないのだと悟りました。それに百合子さんがしていることは、やはり犯罪なのです。黙っていることは、その罪に加担するのと同じです。
そこで私は、メディアに伝えようと思い立ち、まず朝日新聞に配達証明郵便で、手紙を送りました。(略)自分の氏名と、当時は日本に滞在していたので、その住所も書きました。ところが、まったく連絡がなかった。メディアにもあなたの力が及んでいるのではないかと、私はさらに恐怖の念に囚われました。》(文春5月号P116-117)
その後、日本のメディアが小池氏の語る学歴以外のウソも垂れ流すのを見て、「嘘をつかせ続けてきた、メディアの責任も重いと思います」と北原さんは言う。
偶然、石井妙子氏の文藝春秋の記事を読み、「この人ならわかってくれるのでは」と手紙を送ったことから証言が表にでたのだった。
しかし、北原氏は『女帝』で仮名で証言したことをネットなどで批判された。その後、実名と顔をさらすことを決意した経緯をこう記す。
《『女帝が異例のベストセラーとなっても大手メディアは学歴詐称問題を真剣に取り上げませんでした。
それだけではありません。出版後に突然、「カイロ大学の声明」が出ると、それだけを報じたメディアもありました。なぜ権力者の味方だけをするのか。声明文が出た後、ますます、ネットでは「だから仮名の証言者なんて信じられないんだ」と、バッシングは強まっていった。私は絶望と恐怖を、余計に強くしました。同時に、あなたが都知事選で再選を果たすのを、ある種、諦めをもって見ていました。
それから三年が経った2023年11月。『女帝』が文庫本になると連絡を受け、私は自分から「この機会に実名表記に切り替えて下さい」と言いました。「仮名だから信じられない」と言われてきたので、実名にしようと決心したのです。
メディアはどうしたら報じてくれるのか。ここまでしたらメディアは報じてくれますか。そんな必死な思いで、実名を出すことを選択したのです。》(文春5月号P119)
北原百代氏がここにいたるまで、決死の覚悟で小池氏の過去を証言してきたことがわかる。メディア関係者は彼女の言にどう向き合うのか。とくに最初に告発しようと手紙を書いたが、なしのつぶてだった朝日新聞は。
身の危険さえ感じたという北原氏だが、その恐怖には十分な理由があった。
(つづく)