拉致問題の膠着を破る鍵について4

 ガザで米NPO「ワールド・セントラル・キッチン」の車がイスラエル軍の攻撃を受け、7人のスタッフが亡くなった。この団体はキプロスからガザに支援物資を海上輸送していた。

Newsweekより

 米国までが激怒する蛮行に、イスラエルは「ミス」、「誤射」と逃げるが、明らかな狙い撃ちである。この事件でNPOは支援活動を中断することを決めたが、これはイスラエルの望むところだろう。

 イスラエルはシリアのイラン大使館の爆撃までやっていて、暴走が止まらない。在外公館をしかも他国の領土奥深く入って攻撃するとは・・・。少なくともオリンピックはじめ国際交流イベントからはイスラエルを締め出すべし。

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 きょう4日の朝日新聞夕刊に、故海老原宏美さんの思いを引き継いで活動する仲間たちの今が特集記事になっていた。

朝日新聞4日夕刊1面

 海老原宏美さんは筋肉が次第に衰える難病を患いながら、障害者が自立して生き、人々の意識を変えようと活動していた。彼女を被写体にした映画を観、彼女が書いた本を読んで衝撃を受け、障害に対する見方を変えられた。3年前に44歳で亡くなった。

海老原宏美さん

 海老原宏美さんの『まぁ、空気でも吸って』という本に収められた「私の障害のこと」という文章から―

 私は、脊髄性筋萎縮症Ⅱ型(SMA type2)という、ちょっと珍しい障害をもって生まれました。「type2」という響きがカッコイイと思っています。一説には、この病気の発症率は四万人に一人とも言われています。両親共に原因となる遺伝子をもっていて、それを一つずつもらい受け二つそろったときに、めでたく発症します。ということは、祖先たちが代々、この遺伝子を受け継ぎ保因者として生きてきたからこそ私もそれを引き継いだわけで、それは一体、何百年、何千年さかのぼる旅だったのだろう? と思うと、この障害が愛おしくてたまりません。

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 生命の原点に立ち返ることを迫られる。
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 前回、「救う会」が「家族会」をコントロールし、安倍政治とつるむことで拉致問題の進展を妨げたことに触れたが、集会では、救う会」の被害者家族に対する卑劣きわまりない恫喝も暴露された。

 2014年3月、横田滋さん、早紀江さん夫妻は、めぐみさんの娘で二人にとっては孫娘にあたるウンギョンさんの一家にモンゴル・ウランバートルで面会した。三日間にわたり、水入らずの親密な時間を過ごしたことは、そのときの写真の輝くような笑顔に表れている。

ひ孫の智恩ちゃんを抱くうれしそうな横田夫妻有田芳生氏提供)

 早紀江さんは、滋さんが亡くなったとき、この面会がなかったら、お父さん(滋さん)は何も良いことのない人生になったところだったと語っていた。それほど二人にとってうれしい時間だったのだ。

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 その時の写真を、有田芳生さんが横田さん夫妻の承諾を得た上で『週刊文春』で公開した。

 すると早刷りが出た水曜の夜、「救う会」とそれとつるむ政府の一部の高官が横田夫妻に恫喝を加えたのである

 そもそも「救う会」はウンギョンさん一家との面会を横田夫妻から事前に知らされておらず、もし知っていたら反対したはずなのだ。加えて、夫妻が満面の笑みを浮かべていることが気に食わない。「うれしい、楽しい」と思うのは、北朝鮮拉致問題を「おしまい」にしようという狙いにはまってしまうことになる(?!)、というのだ。

 夫妻にとってウンギョンさんは血を分けた孫である。祖父母が孫と会って笑顔を見せて、どこが悪いのか。家族水入らずの笑顔を否定するのは非人道的な政治主義であり、「救う会」が拉致問題を本気で解決する気があるのかを疑わせるに十分である。

 水曜の夜、横田家の電話が鳴る。

 救う会西岡力会長、櫻井よしこ氏、中山恭子参議院議員のほか「政府のエライ人」から次々にかかってきた。特にすさまじかったのは櫻井よしこ「こんな写真を出したら、めぐみちゃん、殺されちゃいますよ!!」と、テレビなどの前で見せるソフトな声色とは別人のような激しい口調で早紀江さんを脅迫したという。しかもその後、櫻井氏はもう一度電話をかけてきてダメ押しの恫喝を行っている。

 こうした非難と脅迫の波状攻撃の結果、横田さん夫妻は、有田芳生さんへの非難文を書かされることになる。年老いた二人に対してなんとむごいことをするのだろうか。

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 「モンゴルでの楽しかったウンギョンちゃんとの面会をみなさんにも見ていただきたい」と、有田さんの写真公開をよろこんで了承した横田さん夫妻は、この“事件”のあと、写真の公開は望んでいなかったし、これからも公開しないという声明を発表させられる。

 だが横田滋さんが亡くなったあと、早紀江さんはモンゴルでの面会の写真を、キャンペーン用に、新潟と川崎のバスの中に掲示することを了承している。横田夫妻の思いがどちらにあったかは明らかである。

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  「被害者家族の意に沿う」と言いつつ、実際には「救う会」は家族の意思を押しつぶしながら、自らの政治的意図を優先してきたのである。

そしていよいよ、田中実さん、金田龍光さんを見殺しにした「救う会」=安倍路線の罪である。
(つづく)