拉致問題の膠着を破る鍵について3

 プーチンを刺激するからロシア本土は攻撃しないように!」と米国から命じられたにもかかわらず、長距離を飛ぶドローンのおかげでウクライナ軍は、国境から1200キロも離れたロシア中部タタルスタン共和国を攻撃した

 ウクライナメディアによると、同国国防省情報総局は、ドローン攻撃が露軍の自爆ドローン製造工場などを標的とした特別作戦だったことを認めた。

破壊された工場では自爆ドローン「シャヘド」を製造していたとされる。(Ukrainian News)

 タス通信によると、ロシアによるウクライナ侵略の開始後、タタルスタン共和国へのドローン攻撃は初めて。

 兵器、兵員とも圧倒的に劣りながらもロシアの侵略に必死に抵抗するウクライナにt対して「敵を刺激するな」は理不尽きわまりない。今回狙ったのは、ウクライナに連日空襲で使われる自爆ドローンの生産拠点で、当然の攻撃対象。今後ウクライナはロシア本土深くを攻撃するはずで、プーチンの核使用の脅しに怯えるアメリカとの確執も予想される。

 一方、ロシア軍による虐殺で世界を震撼させたキーウ近郊のブチャで「解放2年」の記念行事が行われた。ブチャは一昨年のロシア侵略の緒戦で28日間占領され、ロシア軍は誘拐・拷問・性的暴行、子どもを含む市民の殺害などを行った。犠牲者はブチャだけで509人にのぼる。記念日に合わせて、ウクライナ国家警察は戦争犯罪に関与したとする100人以上のロシア兵を特定し、公表した。

ロシアの全面侵攻直後のブチャの虐殺は世界を震撼させた

www.kyivpost.com

 この町での蛮行が明るみに出たことで、ウクライナ人はロシアの統治の下に入ることが何を意味するかを知った。これでウクライナ人は「投降」できなくなったウクライナの対ロシア感情を決定的に変え、「徹底抗戦」を決意することを後押しした。

 虐殺で注目されたこともあって支援が集中し、街はかなり復旧が進むが、人々の心は修復できていない。これからも厳しい日々がウクライナには待っている。

78人の遺体が見つかった「死の通り」といわれたヤブロンスカ通りに新たな公園が整備され、犠牲者を追悼する植樹が行われた。木には犠牲者の名前のプレートが付けられた。(NHK国際報道より)

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前回のつづき

 蓮池透さん拉致被害者蓮池薫さんの兄で、「家族会(「北朝鮮による拉致」被害者家族連絡会)」の結成時から事務局長を担ったが、途中から支援団体の「救う会北朝鮮に拉致された日本人を救出する会)」の方針に対立して家族会を離れた

 彼の報告で興味深いのは、「家族会」が「救う会」に取り込まれ操られていく過程だ。

 「抗議文や声明文は、当初は救う会佐藤勝巳会長単独で出していたが、徐々に家族会代表横田滋救う会会長佐藤勝巳の連名で出すようになっていった。内容もしだいに過激になっていき、それはすべて救う会が作っていた。

 横田家に原案がファックスで入って、それを横田さんが追認するという形で、連名の文書になった。私も、とても滋さんが書くような文章ではないなと思いながら、連名の文書を発表していた。」

 「デモをするときも先頭を歩くのは家族である。その後ろに隊列ができているわけだが、後ろに行くにしたがって、どこか怖い人たちが増していく、一番後ろには、太いストライプのスーツにサングラスをした、いかにもという人がいる」という状況だった。

 運動は次第に右翼の政治勢力に侵食され支配されていった。

 「家族会は毎年春には『今年の活動方針』を策定するのだが、これもすべて救う会が作る。家族会は単なる追認機関だったのである。そういう状況を見て私は、家族会の発起人である兵本氏(元国会議員秘書)や石高氏(元テレビ局プロデューサー)にも相談をもちかけたことがある。石高氏に言わせれば『こりゃもうアカンわ』、兵本氏は『う~ん、困ったね』という調子だった。発起人も、もう出る幕ではないという状態となり、家族会は完全に救う会の下部組織になり下がってしまったのだ」

 つぎに「救う会」=「家族会」の主張、方針について、安部首相と救う会・家族会は蜜月関係で、「一体化」してきたと蓮池さんは言う。

 拉致問題に関する「国民大集会」は救う会・家族会が主催するものだが、「日の丸の旗を持ってきている人が目につき、旧陸軍兵士の格好をした人、ゲートルを巻いてサーベルを持っているかのような人たちが大勢集まってきていた。」佐藤勝巳会長は「核武装」を唱えていた。

去年11月の国民大集会(首相官邸HPより)

 「家族会の主張として、議論のスタートラインに、まずは全員生存を前提に全員帰してくれということは理解できる。しかし、その次に『全員一括帰せ』というようになった。今は『拉致被害者の即時一括帰国を実現せよ!』である。それでは、たとえばめぐみさんが見つかった、生きている、帰りたいと言っている、となっても、彼らはノーを出すことになる。『一人じゃだめなのです。一括なんです』。これは欺瞞、あるいは詭弁である。わざとハードルをあげて、無為無策の安倍首相に助け船を出していたのだ。これは、この後の菅政権、岸田政権へも同様だ」。

 「最近思うのは、家族会は本当に救出を望んでいるのだろうか、ということだ。少なくとも救う会の目的は、『救出ではなくて北朝鮮打倒』だ。また、右派の政治家たちにとって拉致は、日本が持っている唯一の『被害者カード』なのである。拉致問題は未解決のまま長続きした方がいい。なぜなら、拉致問題が彼らの生業だからなのである」。

 拉致問題が二進も三進も行かない膠着状態に陥って、これほどにも長い時間が経ってしまった元凶は、救う会が入り込んできたためだと、私は考えている。」

(救う会と家族会の関係については以下を参照されたい)

takase.hatenablog.jp

  蓮池透さんとは意見が違うところもあるが、以上の点についてはほぼ賛成する。もっと言うと、救う会やその背後にいる「日本会議」、自民党安倍派など右派政治家の目的は「北朝鮮打倒」というよりそれをスローガンにした国内政治の右傾化—憲法改正や米軍との連携強化、反共体制構築、ジェンダー・人権問題での反動化、家族・皇室観の戦前への回帰など―ではないかと私は見ている。

 家族会を極右イデオロギー代理人のような存在にすることにより、日本会議統一協会など右派の政治勢力にとって、拉致問題は教科書問題と並ぶ大成果をおさめたテーマとなったのである
(つづく)