NHKの朝ドラは過去ほとんど見ていない私だが、いまやっている『虎に翼』は気になって朝食の用意をしながらチラ見している。
あらためて言うまでもないが、これは昭和初期に日本最初の女性弁護士・裁判官となった三淵嘉子をモデルにした話。主人公を演じるのは、伊藤沙莉という女優だそうだが、彼女のどら声が耳に快い。
ある日、ドラマの中で新憲法の条文が読み上げられて、はっとした。
第14条「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」。
私、法学部卒なのだが、あらためて聞くと新鮮で、主人公の境遇が重なりグッとくるものがあった。1日の「朝日川柳」から―
たしかに。
この朝ドラ、好評でSNSにも活発な意見、感想が載るそうだ。毎朝、一千万人超の視聴者が、男女平等や個人の尊重などについて思いをめぐらす現象は画期的。ちゃんと骨太の内容が視聴者に歓迎され、楽しまれているのはうれしい。
そもそもテレビが堕落した一因は、どうせ（バカな）視聴者は真面目な話には食いつかないはずと決め込んで、自ら大衆迎合に徹したことではないか。それが視聴者に見透かされてテレビ離れが起きているように思われる。
（この話もつづく）
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前回からのつづき―
横田めぐみさんの両親の滋さん、早紀江さん夫妻が抱いているのは、めぐみさんの娘キム・ウンギョンさんの娘、ひ孫のチオニ（智恩）ちゃん。
夫妻の満面の笑みが印象的だ。待ち焦がれたウンギョンさんとの面会がモンゴル・ウランバートルで実現し、3日間にわたって同じ屋根の下で水入らずの時間を過ごしたのだった。
滋さんが4年前に亡くなったとき、早紀江さんは「この面会がなかったら、お父さん（滋さん）は何も良いことのない人生になったところだった」と語った。それほど二人にとってうれしい貴重な出来事だった。
この面会が実現したのは2014年3月、そしてストックホルム合意がその年の5月だった。横田さん夫妻とウンギョンさん一家を会わせるお膳立てのために日朝の接触が密になり、ストックホルム合意へと結実した。つまり、夫妻はただ孫に会ったというだけでなく、結果として日朝の拉致問題を進展させうる扉を開く成果をあげたと言えるのである。
ジャーナリストで元参議院議員の有田芳生さんは面会実現という「こうした人道的課題が進んだ環境の下で成立した合意だった。福田政権から民主党の野田政権まで積み上げてきた下地があった」と語る。
日朝のストックホルム合意（2014年5月）から10年。共同通信が配信した記事をご紹介します。とくに横田滋さん、早紀江さんと、めぐみさんの娘キム・ウンギョンさんとのメッセージ交換を仲立ちしていたことのエッセンスを初めて語っています。ALTご利用の方は次の投稿画像をご覧ください。#黙さず闘う pic.twitter.com/nUD7XCLZ5E
— 有田芳生事務所｜公式 (@arita_office) 2024年6月7日
実は、横田さん夫妻のウンギョンさんとの面会の裏には、長期間にわたる有田さんの尽力があった。有田さんはこれまでその具体劇な関与については語って来なかったが、今回共同通信の記事で初めて明らかにした。
「民主党政権時代の12年10月に訪朝する前、ウンギョンさん夫妻の結婚記念写真を入手し、横田さん夫妻に渡した。安倍政権になってからも、メッセージを伝え合う動画のやりとりなどを手伝っているうちに、横田さん夫妻から『ウンギョンさんに会いたい』という思いを聞き、夫妻に当時の安倍晋三首相と岸田文雄外相に手紙を書くことを勧めた。安倍首相が『実現させましょう』と快諾し、外務省が動いた。13年10月末から11月のことだ」
有田さんは、ウンギョンさんと横田さん夫妻の写真や動画での交流を仲介していたというのだ。かわいい孫からのメッセージに心を動かされ、「会いたい」となるのは当然。有田さんはそこで、安倍首相と岸田外相に手紙を書くよう勧め、その手紙が事態を動かしていったのだという。
横田さん夫妻は、ウンギョンさんとの面会にいたるまでの過程を、動画の交換や首相への手紙をふくめ、「救う会」や「家族会」にはいっさい秘匿したままに進めている。なぜか。
横田さん夫妻にめぐみさんの娘の存在が明らかになったのは、小泉訪朝の直後だった。2002年10月下旬、当時「ヘギョン」と名乗っていたウンギョンさんのDNA鑑定で、めぐみさんの娘であることが確認された。夫妻は会見で、孫との面会への期待を語った。
《滋さんは記者会見し「99.999%、親子関係が存在するという鑑定結果が出た。これからは、めぐみの娘と呼ばせていただきます」と述べ、「ディズニーランドや京都、めぐみが小さいころに住んでいた品川や広島にも連れて行ってあげたい」と期待を膨らませた。（略）
早紀江さんも「めぐみを捜して25年、いまだ姿は見えないが、同じ年代の元気そうな女の子がすくすく育っているということに、何ともいえない感動を覚えています」と述べ、「音楽が好きだと聞いているので、お母さんが好きだった曲を聞かせてあげたい」と話した。》（朝日新聞）
ところが、孫に面会したいとの夫妻の思いに「救う会」が立ちはだかったのである。
（つづく）
