ウクライナからコスモロジーへ

 23日(土)は「地平線会議」ウクライナからコスモロジーへ」と題して報告を行った。

 ウクライナ取材報告をしたうえで、この戦争を日本人は理解できるかという問題提起から、今の日本人の人生観を考えるというちょっと欲張りな内容を語った。

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 去年、香港出身のフォト・ジャーナリスト、クレ・カオルさんの写真展での出来事。戦闘で大けがを負った兵士を撮影した一枚があった。キャプションは【「あなたにとって平和とは何か」を聞くと、負傷した腕をあげて、перемога!!(勝利!)と答えた】とある。

 私がその写真を見ていたら、私の前にいた女性が、連れてきた小学校高学年くらいの2人の子ともに「日本が攻められたら、お前たちはすぐに逃げていいんだからね」と言った。その時の違和感から、日本人はウクライナの戦いを理解できないのではないかと考えるようになった。

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 日本人は今、自分以外のものに無関心で、困っている人にも冷酷という異様な価値観を持つにいたっている。これまでの日本人が依拠してきたコスモロジー(世界観+人生観)が崩壊しているからだと私は見ている。

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 結果、倫理の崩壊、自己肯定感の減少、さらには心身を病む人の増加をも引き起こしている。

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会報『サングラハ』には高校生に語るコスモロジーを連載している。(11月25日発行号)

 今朝の『朝日新聞』1面と3面に子どもの自殺が増えていることが指摘されているが、日本人の子どもの心が病んでいることを示す。

これは3面。日本の子どもは死因のトップが自殺だ。(朝日新聞27日朝刊)


 記事では自殺の原因の「詳細調査」の必要性が叫ばれている。「原因」としては、おそらく、受験や就職の失敗、家族や友人との人間関係、いじめ、健康上の理由、成績の不振、失恋、経済的な問題などが挙げられてくるだろうが、それら外部の要因は、ほんとうの「原因」ではない。

 また、自治体での取り組みでは、「命の電話」のような、自殺決行直前に食い止める策が予算措置を受けて取り上げられる。しかし、どんな困難があっても、自殺しようなどと考えないような価値観、人生観をもつようにすることが根本的な対策ではないか。

 報告会では、いまや新しいコスモロジーを打ち立てなければならないと、壮大な展望を語った。ポカンとしている人もいたが、強い関心を示してくれた人がけっこういて、これからも意見交換することになった。楽しみである。


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 ガザでは世界注視のなか、史上まれにみる虐殺が今も続いている。

難民キャンプ空爆で70人死亡。真の意味で「虐殺」である。(NHKニュース)

 無差別攻撃の様子を映像で見る限り、イスラエル軍は、パレスチナ人をできるだけ多く殺してやろうという意図があるとしか思えない。15日、イスラエル軍が人質3人を誤って射殺した事件で、兵士が発砲した状況について以下の報道があった。

「【エルサレム時事】殺害された男性3人は上半身裸で、棒に巻き付けた「白旗」のような物を掲げて抵抗する意図はないと明示していたが、兵士が身元の確認をせずに銃撃を加えたという。

 地元メディアなどが16日、軍の初期段階の調査内容として報じた。それによると、ガザ北部シュジャイヤで建物内にいた兵士が、数十メートル離れた別の建物から出てきた3人を目撃。イスラム組織ハマスイスラエル軍をおびき寄せようとしていると勘違いし、「テロリストだ」と他の部隊に呼び掛けて発砲した。

 人質のうち2人は即死し、1人は負傷して近くの建物へ逃げ込んだ。その後、再び外に出てきたところで射殺されたという。」

 上半身裸になったのは、自爆テロなどの意図がないことを示すためで、さらに白旗を持っていたにもかかわらず射殺されている。これはもう「誤射」ではない。抵抗の意思がないことをはっきり示してもイスラエル兵は撃ち殺す。死者の数が膨大になるわけである。

 この惨劇を世界は手をこまねいて見ていることしかできない。ガザの人々に対して申し訳ない気持ちで年末を迎えている。