なぜ、ウクライナに日本のマスコミがいないのか。
日本のメディアは、現地に住む日本人や日本語のできるウクライナ市民がネットで送ってくる速報に頼っている。
自社の報道としては、モスクワやワシントン支局発のほかは、ポーランドなど周辺国の国境の町に避難してくるウクライナ人の取材を送ってくるだけで、ウクライナの中に記者を入れて戦闘や被害状況を報じるところはほとんどない。(明日のTBS「報道特集」はどうするのか?)
きのう3日の岸田総理の記者会見で、フランスの記者(ラジオ・フランス)がこれをぶつけた。
現在、日本政府は、ウクライナに対して危険情報レベル4を発出しています。
どのような目的であれ、ウクライナへの渡航をやめてくださいという意味です。
報道の目的も含まれていると思いますが、従って、現地の取材ができない日本のマスコミは、海外の取材陣に頼ってしまいます。
報道の自由の観点からも、日本人向けの報道の独立性の観点からも望ましくない状況だと思われますが、その点について岸田総理のご意見を聞かせてください。
会見動画の開始から38分あたりでこの質問になる。
これに対して岸田総理はざっと以下のような答え。
退避勧告を発出し、目的の如何を問わず、渡航の自粛をお願いしている。報道の自由も大事ですが、他の目的も含めて渡航をおやめいただきたいというお願いをしている。いまウクライナは大変な命の危険の中にあります。緊迫した状況ですので、ぜひご理解とご協力をお願いします・・
なんだよ、この答え。
「命の危険」があると政府がみなせば、何でも禁止できるのか?そして、マスコミはみな政府の言うことをきくのか?
彼女の質問に、その場にいた日本の記者たちは関連質問するでもなく、無反応だったが、これ、あなた方の問題なんだよ。
そして今朝4日のテレ朝「モーニングショー」。
レギュラーコメンテーターの玉川徹氏の発言にびっくりした。
ウクライナは無駄な抵抗をしないで降伏した方がよいという趣旨のコメントだったからだ。
戦力比から見て、ウクライナはロシア軍との戦いで勝つ見込みがない。市民が火炎瓶で戦ったら、ロシア軍が住民を敵視して大量殺戮につながりかねない。ウクライナが激しい抵抗をすれば、戦いが長引くことで、よりたくさんの市民が死ぬ。
命より大事なものはこの世にない。
為政者(ウクライナのゼレンスキー大統領)はその観点からの決断をする必要があるのではないか。かつて日本も勝つ見込みのない戦いをして多くの民間の犠牲者が出たことを想起すべきだ・・・。(ざっとこんな内容)
これに対して、ゲストでスタジオにいた小泉悠氏(東大先端科学技術研究センター専任講師)が、戦争を始めた日本と、自分の土地を蹂躙されているウクライナは同じではないし、ウクライナは外からの侵略に抵抗してきた長い歴史がある、祖国を守るのが大事か、個人の命の方が大事かは価値観の問題になると反論。
長嶋一茂氏も、命より大事なものってあるんじゃないか、あくまで戦うというウクライナの人の気持ちもわかるよね、などと語って議論になった。
以前、このブログで、日本人は、自分の国を守るために戦うという人の比率が世界でダントツに低いことを紹介した。私はこれは決していいことではないと思う。
命の危険があるから、戦地では取材しない・・
命が一番大事だから、侵略されても戦わない・・
沖縄の「命どぅ宝」(命こそ宝)を、こういうふうに理解していいのだろうか。
私は玉川氏の意見には反対だが、玉川氏の意見は実は日本人の多数派ではないかと思う。非常に重要な「価値観」の問題なので、多くの人に考えてもらいたいし、議論してほしい。