香港 国安法に屈しない人々3-天安門事件を忘れない

 このごろ買い物が楽しい。
 つれあいがバイトで働く日は私が食事を支度することが多く、主夫気分を味わっている。なるべく地元のお店で買おうと、きょうは「しむら青果」へ。

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 「国分寺お店大賞グランプリ」受賞の地元の名店だ。

 朝、市報に目を通したら、「国分寺農業が表彰されました」とあり、国分寺産の「うど」の品評会と東京うど出荷改善共進会の結果が載っていた。そこに青木直之さんという「うど」農家が、東京都知事賞、全農東京都本部長賞など賞を総なめしていた。え、何者?と引っかかった。

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「市報 国分寺」3月15日号

 うどが食べたくなり、「しむら」で探すが「那須高原の山うど」しかない。国分寺産のうどは?と主人に聞くと、きょうは入荷していないとのこと。
 主人の方から「国分寺のうどと言えば、青木さんはすごいね」と話題に出してきた。知り合いなのだといい、話が盛り上がった。苗は多くの農家が一緒に仕入れるから、うどを植えた段階ではおなじ条件なのだが、青木さんだけ、できあがりが全然ちがうのだという。市報を読んでおいたおかげで、話についていけた。

 店頭で「小メロン」に目が止まり、何だろうとながめていたら、高齢の女性が手にとって選んでいる。

それ何ですか?と私。(私は「人間みな親戚だ!」と思うようにしているので、気軽に声をかけられる。)
「間引きしたメロンの実よ」と女性。
どうやって食べるんですか?
「塩漬けでもいいけど、私はぬかに漬けるの」
私もぬか漬けやってます。
「だったら、今夜漬ければ、明日朝には浅漬けで食べられるわよ」

 おもしろそうなので私も買った。街の個人商店は、こういうちょっとした会話があるのがいい。

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小メロン

 半分をぬかに漬け、半分はピクルスにした。どんな味になるのか楽しみだ。
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 11日に閉幕した中国の全人代で、香港の選挙制度を変える方針が決まった。

 昨年夏、中国共産党政権が香港国家安全維持法(国安法)を制定し、言論の自由を徹底して封じたが、今回は選挙のルールを変えて、民主派という異論を議会から排除しようというのだ。そもそも基本法では「普通選挙」の実現を目標としているのに、完全に逆行している。

注)「行政長官の選出方法は香港特別行政区の現実の状況と順序に従って漸進するという原則に基づいて規定し、最終的には広汎な代表性をもつ指名委員会が民主的手続きによって指名し、普通選挙で選出するのが目標である。」(「基本法」第45条)

 香港の市民からは、中国共産党香港の「自由」を奪った上にこんどは「民主」を剥奪したと非難されている。

 先月には民主派の47人が、国安法違反の罪で起訴された。「国家転覆の共謀罪」だという。
 
 中国共産党の今回の強硬な「改革」に、親中派の中にさえ「やりすぎ」と思う人がいるという。

 《親中派のベテラン政治家2人は匿名を条件にロイターに対し、民主派の取り締まりで既に国際的に批判を浴びているところに選挙改革を実施すれば、最終的に香港の特異な特徴、多元主義、投資家を引き付ける魅力を損ないかねないと指摘。このうちの1人は「香港がこの段階まで後退したことは本当に悲しい。我々は引き継いだ時よりも悪い状態で香港を次の世代に引き継ぐことになる」と語った。
 香港の親中派政治家が匿名とはいえ、中国の対応に疑問の声を上げるのは異例だ。
 2人目の政治家は「もはや何も正常ではない。これは新たな『非正常』だ」と述べた。》https://jp.reuters.com/article/china-npc-idJPKCN2AV0L8

 ますます追い込まれる民主派だが、なお抵抗を続ける人がいる。
 「香港 国安法に屈しない人びと」シリーズ、1月13日で途切れてしまってすみません。

takase.hatenablog.jp

 きょうはその3人目、香港の立法会元議員で民主活動家の李卓人さん(63)だ
 かつてこのブログでも紹介したことがある。

弾圧の法制化が急ピッチで進む香港 - 高世仁の「諸悪莫作」日記

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李卓人さん(NHK国際報道より)

 李卓人さんはベテランの活動家で「従来の民主派」と言われる。
 1989年に中国・北京で起きた天安門事件をきっかけに運動を続け、香港は中国であるとの認識から、中国と香港の民主化は連動するとし、最終的には「中国を民主化する」ことをめざす

 一方、若者の支持が多いのは、中国人ではなく香港人アイデンティティをもち、香港独自の民主化をめざす、いわゆる「本土派」だ。
 互いに路線を異にするものの人権問題などでは共同行動をとるし、当局からの弾圧には連帯して抵抗している。  

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街頭での闘いをやめない李さんは9つの罪で起訴されている

 李卓人さんが代表を務める市民団体は、天安門事件の関連資料を展示する記念館を運営し、中国本土ではタブー視されている事件の真相を伝える活動を続けてきた。また、事件が起きた6月4日には毎年、大規模な集会を開き、香港から中国の民主化を訴えてきた。 
 ところが、去年、この集会が新型コロナウイルスの感染防止を理由に初めて許可されず、李さんや「本土派」の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)さん、当時の民主派の議員など合わせて26人が起訴された。

 李さんは天安門事件関連の活動が「国安法」によって取締りの対象になり、記念館も閉鎖される可能性があると判断、その事態に備え、展示資料をデータベース化して保存する作業を始めている

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資料のデータベース化を進めてさらなる弾圧にそなえる

 李さんは「法律は多くの市民に恐怖を植え付けた。国家安全維持法は何でもできる法律で、人々に密告までさせるのでみんな怖くて声を上げることができない。これは中国共産党の一貫したやり方だ」という。

 李さん自身は、現在、無許可の集会の参加をあおったなどとして、合わせて9つの罪で起訴されていて「恐怖や不安はあるが、私たちに残されているのは反抗の意志を収監されることで表明することしかない。それでどんな効果が得られるのか考える余裕もないが、責任を背負って歩み続けなければならない」と語る。

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意気軒高な李さんと同志たち

 さらなる弾圧を予想しながら、抵抗を続ける決意だ。
 応援します。