韓国では関心が低い「慰安婦問題」

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多摩川近くの公園で

 思わず ♪春の小川はさらさらゆくよ・・と口ずさみたくなる。
 淡い青の花はハナニラ(イフェイオン)。
 きょうは東京の気温が20℃を超えて、春うららの一日だった。
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 韓国というのは何かと気になる存在だが、去年出た澤田克己『反日韓国という幻想~誤解だらけの日韓関係』毎日新聞出版)という本がおもしろい。
 新しい気づきがいろいろあった。

 著者の澤田氏は毎日新聞外信部長。大学在学中に延世大学に留学し、ソウル特派員を2回8年つとめた韓国通だ。

 今の日韓関係は戦後最悪と言われるが、それは両国の力関係が大きく変化し、主には韓国側の日本に対する意識が変わってきたことがベースにあるという。

 要は日本の国力が沈み、韓国が力と自信をつけたいま、日本は韓国にとってワンオブゼムにすぎない。それに対して日本側は、昔と同じような「上から目線」で韓国を見ている。ここに大きなギャップが生まれているという。

冷戦の終結グローバリズムの進展、それに歩を合わせて進んだ韓国の経済成長と民主化という内外の要因は、韓国社会に大きな変化をもたらした。日韓関係に現れているのは、その余波である。」(P110-111)

 朝鮮戦争後の韓国は、安全保障を確保しながら戦争の荒廃から復興するため、アメリカと日本に頼り切って国づくりを進めた。当時の韓国にとって、アメリカそして日本の存在感は巨大だった。

 そこからの変化を韓国にとっての貿易のシェアで見てみると;

 1970年には日本が37%、米国が34.8%、合計7割に達した。
 1996年は韓国がOECDに加盟した年だが、日米合計で30%台。
 2004年には20%台、2011年には10%台。
 2018年は日本7.5%、米国11.5%。70年に比べれば日本は5分の1近くまでシェアを落としている。

 一方、中国のシェアは
 1990年にはわずか2.1%だったのが、2009年には20%台にのせ日米合計を超えた。
 2018年は23.6%で1位。

 ただ、日米中3ヵ国を足しても4割強である。GDP規模で世界10位前後の経済力をほこる韓国は、貿易相手も多角化している
 

 日本ではよく「支持率低下に悩む文在寅政権が、支持率上昇を狙って反日政策を強行」などと解説されるが、実際にはほとんど支持率に影響していない。日本側だけが勝手にそう思っている、日本人は自分たちの存在の大きさを買いかぶっているらしい。

 いまの韓国にとって「日本ファクター」は決して大きくない。

 慰安婦問題でさえ、韓国社会での関心は非常に低いという。これは意外だった。

 2018年2月、当時の挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会、今は「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)に改名)が、文在寅政権は、2015年韓日合意に対する政府の基本処理方針に従って和解・癒やし財団を一日も早く解散し、10億円を(日本に)変換しなければなりません」という請願を出した。

 請願とは米国の制度をまねて文在寅政権がはじめた「国民請願」で、誰でも請願が出せ、青瓦台(大統領官邸)サイト上での電子署名集めで、30日以内に20万集まれば、政府が何らかの返答をする仕組みだ。
 この制度を開設してから2年3ヵ月の2019年11月時点で、20万人を超えた請願は120本余り、ということは、毎月4、5本は署名20万を超えるということになる。

 例えば「国会議員の給与を最低賃金水準に」などという請願の署名が27万人。
 曺国氏をめぐるすったもんだは日本のテレビでさんざん採り上げられたが、「曺国氏の法相任命を応援する」請願は76万人もの署名を集めた。
 署名数最多は、「(保守政党の)自由韓国党を解散させるべきだ」という請願の183万人で、いわゆる進歩派のアピールに火がつけばすごい署名数になるようだ。

 さて、その慰安婦関係の署名はといえば、30日間で集まったのはわずか1919人だったという。びっくりである。

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日本大使館敷地前の「慰安婦像」。活動家がテントで寝ずの番をしているが、まわりは閑散としている。2018年10月筆者撮影

 澤田氏が、外交官や研究者に「何人集まったと思うか」と聞くと、返ってくるのは自信なさげに「5万人?10万人?」という声が大部分で、1万人以下と考える人は皆無だったという。

 慰安婦問題は韓国では関心をもたれていないと澤田氏は結論づけている。
 日本人は大きな誤解をしているのだ。

(つづく)