飛翔体だんだん慣れる怖さかな

 梅雨時、ボールのような丸い白い花、あじさいのアナベルが満開になっている。
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 頭を抱えて、草むらにしゃがみ込むおばさんたち。これは何だ?
 山形県であったある訓練の一コマだという。
 北朝鮮弾道ミサイル飛来を想定した住民避難訓練が9日、山形県酒田市西荒瀬地区で実施された。ミサイルを想定した避難訓練は3月に秋田県男鹿市で、今月4日には山口県阿武町でも行われている。
 訓練は内閣官房総務省消防庁山形県酒田市が共催し、小学生を含む住民計約400人が参加。ミサイル飛来を受けて全国瞬時警報システム「Jアラート」が作動したと想定し、防災行政無線やメールで避難を呼び掛け、緊急情報ネットワークシステム「エムネット」を通じて市町村や消防本部などと情報を共有した。
 訓練では、屋外の住民は防災コミュニティーセンターや小学校の体育館に逃げ込んだり、物陰に隠れたりした。屋内にいる住民は、爆風で破れた窓ガラスに当たらないよう窓から離れた場所に待避した。》(時事)http://www.jiji.com/jc/article?k=2017060900179&g=prk

 10年前、こんな光景が日本に出現するとは予想できなかった。 
 飛翔体だんだん慣れる怖さかな  (神奈川県 村田 卓:朝日川柳 9日)
 というのも困るが、しかし、、。やらないよりいいということか。今月25日の朝鮮戦争勃発の日で、これからいろいろ起こるかもしれない。冷静に注意。
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 最近、『韓国軍と集団的自衛権』(旬報社)という本をおもしろく読んだ。
 著者は、古い友人の蠔淵弘(ベ・ヨノン)さん。誠実に取材する優秀なジャーナリストである。『朝鮮人特攻隊 「日本人」として死んだ英霊たち』もいい本だったし、『サムスン帝国の光と闇』という危ない本も書いているhttp://d.hatena.ne.jp/takase22/20130114
 
 韓国は、戦後一貫して米軍が駐留し、対米関係で「日本と極めて似た構造を持つ国」だ。その韓国は、米国の要請で集団的自衛権の名のもとに海外派兵してきた。こうした派兵は、「北朝鮮と対峙する韓国が米韓同盟を強化する目的で決断されて」いる。本書を読んでいくうち、米軍を繋ぎとめるために、奴隷のように米国の安保政策に従う日本と韓国が重なってくる。韓国の派兵の論理や経緯は、まるで今の日本を見るようであり、海外派兵の歴史は、今後自衛隊があゆむ道にも思えてくる。本書は安保法案のせめぎ合いの時期、去年の6月に出ていたので、その時に読めばよかったと反省した。
 韓国軍の派兵先は、ベトナムアフガニスタンソマリアイラク。とくにベトナムにはのべ32万人という、米軍以外では突出した兵力を派遣し、約4700人の戦死者と1万人以上の負傷者、数万人の枯葉剤被害者という大きな犠牲を出した。派兵の傷は今も残る。集団的自衛権による派兵の現実を韓国という先達に見ることができる。

 ベトナム戦争はもう昔のことだが、韓国の政治、経済に与えた影響の大きさを再認識させられた。
 朴正熙ベトナム派兵に積極的だった理由は;
 《当時の韓国には5万人ほどの在韓米軍が駐屯しており、米軍戦闘部隊がベトナムに派遣される事態になれば、兵員の多くが在韓米軍から送り出される可能性があった。米兵の間での切迫した雰囲気は、拉致被害者曽我ひとみさんと結婚したチャールズ・ジェンキンス氏が、在韓米軍に勤務中にベトナム派兵をおそれ、軍事境界線を越え北朝鮮に脱出したことからも伺い知れる。在韓米軍の削減は、朝鮮半島に安保の空白を生じさせ、韓国は国家存亡の危機に直面しかねない情勢にあった》(P49)
 韓国は軍を派遣することと引き換えに、米国が韓国の安保を弱体化させないことに加え、韓国への軍事的・経済的支援を拡大することに成功した。ベトナム戦争が韓国経済発展の起爆剤になったことは知られている。派兵に関するすべての経費、兵士の海外勤務手当は米軍が全額負担で国庫を潤した。韓国企業のベトナムでの事業参加は財閥を育てた。米企業の下請けとして、港湾、軍事施設の建設で最大の利益を上げたのが「現代」なら、港湾荷役や輸送業務では、後に大韓航空をつくる「韓進」が下請けの半分以上を受注したという。
 日本の朝鮮特需は敗戦後の日本経済にとって「干天の慈雨」となったが、中でももっとも需要が高かった商品は軍用トラックで、これで生き返ったのがトヨタだった。
 《1950年代と60年代に起きた米国のアジアの戦争で生まれた特需が、トヨタ自動車とそれを追撃する現代自動車を誕生させたのは皮肉としか言いようがない》。こういう視角から眺めると、日本と韓国は兄弟のようである。