ウクライナをめぐる情勢が激しく動いている。
トランプ前大統領は17日、ウクライナのゼレンスキー大統領は戦争を未然に防げなかったと語り、ロシアのウクライナ侵攻についてウクライナ側にも責任があるとの認識を示した。
トランプ氏は、200万人以上の登録者がいる「PBD Podcast」で、「ゼレンスキー氏は私がこれまで見た中で最も優秀なセールスマンの一人だ。米国は、彼が来るたびに1000億ドル(約14兆9000億円)を与えている。歴史上、これほどの大金を手にした人物が他にいるだろうか? いや、いない」と語った。また「だからといって、彼を助けたくないわけではない。私はあの人たち(ウクライナ国民)を大変気の毒に思っているからだ。彼はあの戦争を決して始めさせてはならなかった」と続けると、直ちに批判の矛先を民主党のジョー・バイデン大統領に転じ、ウクライナ紛争を「扇動(せんどう)した」のは同氏だと非難した。(ニューズウィーク誌による)
トランプ氏は最近まで何度もプーチンと密かに電話で連絡を取り合っていたことが暴露されたが、明々白々の一方的な侵略を、侵略された側にも責任があるとするのは、ロシアが広めるプロパガンダそのものだ。トランプ氏が米大統領になれば、ロシア側に立って、ウクライナに大幅な譲歩を迫ることになるだろう。ここ1~2週間でトランプ氏がほとんどの激戦州で支持を伸ばしているとの報道に気が気でない。
ウクライナとの戦闘に参加する予定の北朝鮮兵士が、ロシア軍の施設で訓練を受けてい動画をウクライナ政府が18日公開した。ロシア極東のプリモリエ地方にある訓練場で撮影された動画だという。ゼレンスキー大統領は、約1万人の北朝鮮の兵士がロシア軍に合流するために訓練を受けていると語っている。
ウクライナ軍の情報機関のトップ、キーロ・ブダノフは北朝鮮兵士の派兵について、まず第1陣として、8月にウクライナが越境攻撃を仕掛けているロシア・クルスク州に2600人が送り込まれ、11月初めには1万1000人がウクライナ国内で「戦闘態勢を整える」との見通しを示した。
これを確認するかのように韓国情報機関の国家情報院は18日、北朝鮮は8日から13日の間に北東部のチョンジン港など3カ所から1500人の軍の特殊部隊兵士をロシア海軍の輸送艦を使ってウラジオストクに送ったことを確認したと発表。移送に使われたロシアの艦船を確認したとする衛星写真を公開した。
国家情報院は兵士たちがウラジオストクやハバロフスクなどに分かれてロシア軍の訓練を受けたあと、ウクライナの前線に投入されるとの見方を示した。またまもなく第2陣も送る予定だとしている。北朝鮮兵にはロシアの軍服や武器が支給され、ロシアの少数民族に偽装するためとみられる、にせの証明書も発給されたといいう。
さらに、国家情報院はウクライナ東部ドネツク州の付近で、北朝鮮の技術者が、北朝鮮製の短距離弾道ミサイルの発射地点に立ち会ったとの分析を発表した。そこで撮られた写真のなかに、去年8月のキム総書記が視察したミサイルの移動式発射台などを生産する軍需工場で、ミサイル技術者として同行した人物がいたという。AIの顔認証の技術を使って分析した結果だとしている。国家情報院は「ウクライナに投入された北の技術者が自国のミサイルの発射を支援するとともに、技術的問題点を確認したり、さらなる技術の確保を試みたりしているとみられる」と分析している。
国家情報院は、北朝鮮がウクライナ侵攻への「参戦を始めた」との見解を示している。
これらウクライナ、韓国両国の情報機関からの発信はおそらく事実だろう。すでに北朝鮮が提供した砲弾数百万発も弾道ミサイルも実戦で使用されており、ウクライナの戦地で北朝鮮兵の戦死者が出たとの情報もウクライナ軍から出ていた。北朝鮮はウクライナ侵略への加担の度合いを強める一方だ。
韓国国防研究院(KIDA)のトゥ・ジンホ国際戦略研究室長は20日、ハンギョレとの電話インタビューで、「北朝鮮版ベトナム派兵」を通じて北朝鮮が経済・軍事的に相当な利益を得られるだけでなく、長期的に「有事の際、ロシアの朝鮮半島介入」を確約され、ロシアと協力した北朝鮮の未来を描いていると分析した。
「北朝鮮版ベトナム派兵」とは言い得て妙である。米国が始めたベトナム戦争に韓国が参戦し、多くの兵士の犠牲と引き換えに経済的「離陸」を達成したのだった。
北朝鮮のロシアへの異例の肩入れ、逆からいうとロシアによる「北朝鮮の取り込み」は勢いを増している。
まだ表には出ていない情報だが、近く北朝鮮から2万人の労働者がロシアに派遣されることになっている。派遣先はモスクワ、ウラジオストクそしてもう一カ所が問題で、国際的には未承認国のアブハジアだ。
アブハジアは、ウクライナのドンバスの二つの自称「人民共和国」とそっくりで、ロシアが介入してジョージアから分離独立させたロシアの傀儡国家。クリミア半島にあるロシアの軍港、セバストポリがウクライナからの攻撃にさらされ、ロシアの黒海艦隊が避難先を探すところに追い込まれている。そこで、黒海に面するアブハジアにロシアのための軍港を作ろうとしている。
北朝鮮の労働者は、そのために派遣されると推測される。北朝鮮の代表団はすでにアブハジアを訪問。両者の関係も密になりつつある。
ウクライナ戦争で結びつきを強めるロシアと北朝鮮だが、ウクライナ戦争に外国の正規軍が参戦するという、きわめて危険な事態が到来している。