日本には「抵抗」という文化がないのか

 
 11月の晦日。うちの会社の年度末で、明日から新年度になる。年賀状も買わないとな。

 近所の枝に最後の枯葉が残っていた。

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 国境なき医師団」看護師の白川優子さんが、イラクのモスル近郊での状況をウェブサイトにアップした。
《病院を作ったものの、現地では人種や宗教などの対立によって患者が公平に病院に搬送されないという現実がありました。MSFは前線10km圏内まで入っており、多くの患者が近くにいる事は明らかでしたから、このジレンマは医療者として耐えがたいものがありました。》とある。http://www.msf.or.jp/news/detail/headline_3344.html
(写真は手術中の白川さん)
 これは主にクルド勢力とイラク政府軍(およびシーア派民兵)の対立により、負傷者が選別されてしまい、放置される患者がたくさんいたということだ。モスルからISを駆逐したとしても、この軋轢は今後に大きな影を落としそうだ。
 白川さんは一時帰国して、先日お話を聞く機会があったのだが、ゆっくりする間もなくイエメンに飛び立った。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20161122

 ウェブサイトに載っている各国の状況を読んでいたら、「情熱大陸」で取材した大滝潤子さんが活動したタンザニアのキャンプが満杯になって困っているなどという記事もあった。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20160104
 「医師団」を応援したくなり、わずかだが寄付をすることに。
 ネットから簡単に寄付できるので、みなさんもぜひどうぞ。http://www.msf.or.jp/donate/select.html

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 大荒れの韓国では、朴槿恵大統領がついに辞意を表明した。
 韓国の政治はなんてむちゃくちゃなんだ、から、市民が自ら政治を動かすのはすばらしいというのまで、日本での受け止め方はさまざまだ。
 スーチー派が政権を取ったときは「とりあえず良かった」、トランプが勝利したときは「困ったものだ」と、ざっくりした感想が沸いてくるものだが、今の韓国情勢は、評価するさいの切り口がいろいろあって、どう見たらいいものか、私自身、とまどっている。
 北朝鮮核兵器開発がいよいよ座視できない段階に入るなか、中国が韓流排除などで、韓国に対米軍事協力をやめるよう圧力をかけている。トランプ政権のアメリカは、極東への関与を弱める可能性が高い。ここでの韓国の政治空白は怖いものがある。
 特定失踪者問題調査会の荒木代表のメルマガにこんな文章が。
 《今回の「朴槿恵退陣」を求める動きに北朝鮮の意向も影響していることは明らかで、そうなればことは朝鮮半島全体の混乱に波及するかもしれず、さらには日米中露を巻き込んで東アジア全体の問題になる可能性すらあります。拉致問題は現状では動くとは思えませんから、それならこのような動きを逆に作って局面の打開を図る必要があります。
 歴史は常に連結決算の連続です。後で気付いてみたら朴槿恵大統領が拉致問題進展の糸口を作ってくれたということになるかも知れません。》
 なるほど。こういう見方も十分成り立つな、と思った。

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 カジノ法案審議入りのニュース。
 「総合型リゾート施設(IR)整備推進法案」。去年の調査では、国内のカジノ設置には65.4%が反対なのだが。安倍内閣、高支持率を背景にやりたい放題だ。韓国と違って日本国民は声を挙げないから、やりやすいだろう。
 来日中のスベトラーナ・アレクシエービッチさん(去年のノーベル文学賞受賞者)が、福島の被災地を回ったあと、こんな発言をしている。
 《福島で目にしたのは、日本社会に人々が団結する形での『抵抗』という文化がないことです。(略)全体主義の長い文化があったわが国(旧ソ連)でも、人々が社会に対する抵抗の文化を持っていません。日本ではなぜなのでしょうか》
 ほんとに、なぜなんだろう。連日の大集会にアイスをなめながらカジュアルに参加するソウルのカップルをテレビで見ながら、私を含む日本列島の住民のありようを考えている。