五輪なんて所詮15日間のスポーツ大会

 もう11月(霜月)も終わりだ。
 いつのまにか、節気は立冬が終わって「小雪」(しょうせつ)。27日から次候の「朔風払葉」(きたかぜ、このはをはらう)。「朔風」は木枯らしのことだというが、今年はもう雪まで降って冬本番がはやそうだ。
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 朝からどの局も歌手の覚醒剤事件を一斉にやっている。しかも延々と。
 もう、こんな事件はけっこう。もっと大事なことがいっぱいあるだろう。
 ちなみに、元女優の高樹沙耶容疑者が大麻取締法違反(所持)容疑で起訴されたさい、大麻マリファナ)が恐ろしい麻薬のように報じられたが、このステロタイプの報道にまたか、とうんざりするとともに、医療用大麻合法化への道がまた遠くなったと残念に思った。
 大麻はアルコールより依存性が低く、タバコより体へのダメージが少ないことは多くの研究でわかっている。欧米では医療用だけでなく嗜好用としての大麻合法化がどんどん進んでいる。アメリカでは大統領選と同時に行われたカルフォルニア州の住民投票で、嗜好用大麻が合法になった。日本でも、頭を柔らかくして、大麻に関する議論をすべきときに来ている。

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 きょう、オリンピック競技会場見直しの4者協議があった。
 小池都知事はそこで多くを元の案に戻してしまった。あれだけ騒いだのに、と拍子抜けした。
 1998年の長野冬季オリンピックでは、経済効果は2兆4千億円と喧伝されたが、結果は長野県民に2兆円もの借金を残した。田中康夫知事の時代、緊縮財政で少し額を減らしたとされるが、今も県はこの借金に苦しむ。そのうえ、スケート場やボブスレーリュージュ競技場など5つの施設の維持費が人件費を除いて年間10億円かかっているという。
 私は、日本の国力が落ちていることを冷静に見て、極力コンパクトにすべきだと思っている。長野五輪だけでなく、過去、巨大イベントで大きなツケを払わされたケースは多い。経済効果何兆円、という目くらましに騙されて結局はゼネコンばかりがもうかっておしまい、にならぬよう。
 ある尊敬するジャーナリストが、「しょせんオリンピックは15日間のスポーツ大会にすぎない」と言っていたが、そのとおり。経済効果がうんぬんではなく、そのシンプルな認識から出発すべきだろう。

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 シリアのアレッポで政府軍が攻勢を強めている。多くの地区で医療機関は破壊され、食糧はなく、大量の市民が脱出しているという。
 内藤正典氏(同志社大学教授)のツイッターには、今後のなりゆきについて、恐ろしい予測が書かれていた。
《カオス。トルコは対EU、対米関係悪化でロシアに接近。従来のシリア反政府勢力支援は及び腰に。シリア政府軍とロシア軍はアレッポ制圧に向けて攻撃強化。さらに多くの難民が発生する。EUがトルコ加盟交渉途絶となればトルコは国内の難民再流出も。結果、EUでも統合反対派が勝利し排外主義は高揚》

⇒《米国はトランプ政権で手を出しても無益なシリア内戦から手を引く。対IS軍事作戦だけ継続するつもりが、クルドの独立を招き、イラクは完全に分裂。シリアではアサド政権軍が今度は対クルドに傾斜すると、ロシアと米国の代理戦争状態に。》

⇒《トランプがイスラエルの意向に押されてイランの核合意と制裁解除を破棄するようなことになると、イランは核開発へ。対抗するサウジも核開発へ。イランはシリアを始め軍事介入から足を洗えず混迷に。どこもかしこも崩壊。》

⇒《対テロ戦争の時代は終焉を迎える。テロ組織の制圧ができてテロがなくなるのではない。事態は全く逆で、テロが常態化する。それが内戦のようになるのは中東やアフリカ。次第にアジアに拡大するだろう。欧州はテロと取締りのいたちごっこで不安定化。》

 大きな秩序が崩壊しかねない時代。こういうときに生を受けて破局を目撃できる我々は幸運なのか不運なのか。