病院に居られない!3

徹夜して仮眠また徹夜という日々が続いてブログが書けなかった。
26日、北朝鮮テロ支援国家指定を解除する作業がはじまった。去年からのブッシュ政権の既定路線だったと認識してはいても、あまりにあっさりと解除が決まったことに感慨めいたものを覚える。06年12月、私は『金正日偽ドル帝国の壊死』という本を出して、金融制裁が金正日体制をゆさぶっていると書いた。アメリカの腰が砕けはじめたのは、そのすぐ後だった。金融制裁を止めたのは惜しかったと今も思う。
翌日、仕事の打ち合わせの合間に、テレビで北朝鮮の核施設の爆破シーンを見た。二つの雑誌から電話でコメントを求められたが、全くフォローしていないので辞退した。北朝鮮の核廃棄プロセスはいまや「ショー」と化し、アメリカも北朝鮮も、いかにもすごいことが起っているかのように、懸命に盛り上げているだけで、爆破に大した意味はない。ホワイトハウスに、テロ国家指定解除の決定への抗議メールを一通打って仕事に戻った。
さて「病院に居られない!」の続き。
後期高齢者医療制度導入と一緒に「療養病床の削減」が決まったのが06年6月。厚労省はその一ヵ月後、「医療区分」という医療の必要性を判定する概念を新たに定めた。医療区分は3段階で、厚労省ホームページに区分が載っているが、例えば最も重い「3」は「スモン、医師及び看護師による24時間体制での監視・管理を要する状態」、「2」には「筋ジストロフィー」や「疼痛コントロールが必要な悪性腫瘍」などが記されている。つまり「2」と「3」はかなり重い症状が入る。区分「1」の定義は、「医療区分2・3に該当しない者」すべてだ。http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/ryouyou02.html#01
そして「医療区分1」は全員が療養病床から出なければならないとした。医療がさほど必要ないとされる「医療区分1」だが、取材では、脳障害で意識がはっきりせず「胃ろう」というお腹に穴を開けて流動食を入れる患者なども「医療区分1」。また、痴呆で車椅子の人なども、医療はさほど必要ないとして区分「1」である。実は、療養病床はどこも「医療区分1」がおよそ半数はいる。
そして、「医療区分1」に対する診療報酬を大幅に引き下げた。同時に、「転換型老健」(介護療養型老健)に移行する病棟への優遇措置を設定した。つまり、「療養病床」は「医療区分1」の患者をかかえると赤字になるから、追い出すことになる。そして、早く「転換型老健」(介護療養型老健)に変われと背中を押したのだ。
厚労省は、診療報酬や優遇措置で、医療・介護機関の財布を握っている。これが政策を貫徹させる最大の武器、伝家の宝刀である。
一つ笑える話がある。厚労省に誤算があったのだ。計算してみたら「医療区分1」の患者を追い出しただけでは、削減目標の数合わせに不足することが分かった。そこで結局、「療養病床」に居られない患者は「医療区分1」全員と「医療区分2」の3割という訳の分からない基準になった。
とにもかくにも、厚労省のやっていることは、費用の削減ありきという原則をもとにした数合わせであり、机上の計算なのである。
詳しい説明は省くが、「療養病床」を「老健」に転換することは簡単ではない。実際、「療養病床」を持つ病院で「老健」に転換する予定のところはそれほど多くない。どうしてもベッドは不足する。「療養病床」の区分「1」全員と「2」の3割が、もともと医療の手薄な「老健」に押し寄せ、それにもあぶれたたくさんの寝たきり高齢者が自宅に戻ることを想像してみよう。大混乱になるのは目に見えている。
厚労省はこうして、療養病床から寝たきりを追い出し、より手薄な安上がりの場所にどんどん高齢者を降ろしていこうとしている。
その方針は、各地でなんとか機能している医療・介護システムを根こそぎ破壊する可能性さえあるのだ。
(つづく)