病院に居られない!4

takase222008-07-01

きょう、横田めぐみさんのお父さん、滋さんから季節のご挨拶を封書でいただいた。そこにはカードが入っていた。RWANDAという字と切絵のような象が貼ってある。(写真)
解説には「ルワンダストリートチルドレンがバナナの木の皮や、野草の押し花を使って、1枚ずつ手作りしたもの」とある。ルワンダでの学校建設に協力するNPO法人のチャリティカードだった。
滋さん、あれだけ大変な苦労を背負ってなお、外国の子どもの幸せを思いやることができるなんて・・・。うれしくなって、何度もカードの象をながめた。
さて、病院に居られない!の話。
今回、医療問題を調べてみたら、わざと国民に分からないようにしたのではないかと思うほど、制度がつぎはぎだらけで複雑に作られており、取材はまさに深い森に分け入っていくように手探りで進んでいった。
参考になったのは、開業医などが作る「全国保険医連合会(保団連)」が蓄積してきた情報と分析だった。この団体は政府の医療政策を系統的に批判しており、後期高齢者医療制度についてもホームページ上で分かりやすく鋭い解説をしている。http://hodanren.doc-net.or.jp/kenkou/index.html
ところで、セーフティネットが壊れていくという警告が、今さまざまな現場から発信されているが、こういうとき、いわゆる体制派識者は一般論に逃げ込むのがきまりになっている。
「負担と給付の関係を考えないといけませんね・・」と。
そして、消費税論議になって、財源が確保されなければ何も決められないみたいな結論になる。けれど、医療はじめ国民福祉に必要な諸システムは、いま崩壊しかかっているのだ。目の前で急病人が出たらとにかく救急車を呼ぶべきで、一般論の議論にふけっている暇はないはずだ。現場のシステムの崩壊を食い止めるには何ができるかという具体的な論議をしようではないか。
いま、医療費を抑制するのは当然の前提だという雰囲気がある。そもそも、日本の医療費は高すぎるのか。
統計的に見ると、国内総生産GDP)に占める医療費の割合は先進国のなかではかなり低い。医師の配置はアメリカの5分の1、ドイツの3分の1。
しかも、これから日本の高齢化率が非常に高くなることを考えると、もっとたくさんの医療費を用意しておくというのが、常識的な選択ではないか。
たしかに、日本の財政赤字は何とか手を打たなくてはならない。しかし、削減の矛先は医療費ではなく、例えばガソリン税の行く先である公共事業に向かうべきだとの考え方がある。先進5カ国の政府が公共事業と社会保障に支出した金額を、国内総生産(GDP)と比較すると、日本以外の4カ国(米、英、独、仏)が平均で公共事業2.0%、社会保障7.7%なのに対し、日本は公共事業6.0%、社会保障3.4%であり、公共事業は4カ国平均の3倍、社会保障は2分の1。公共事業が社会保障を上まわっている国は日本以外にはないという。http://www.healthnet.jp/data/graph/index.html
日本の医療費総額は31兆円。うち国が負担しているのは10兆円だ。一方、ガソリン税を含め、公共事業には50兆円をつぎ込んでいる。財政赤字の責任を医療費に向けるのはお門違いだ。
イギリスではサッチャー政権時、新自由主義路線で、医療費を削った結果、大問題が起きた。「外来は診察まで半年待ち、入院は2年待ち」といわれる事態になり、ブレア労働党政権になって97年から「外来は13週間以内、入院は26週間以内」という待ち時間の具体的な目標を掲げて改革に乗り出した。予算も1.5倍化を約束。97年には総医療費が対GDP比で日本よりわずかに低かったが、04年には日本を上回った。お金をかけないといけないのだ。
最後に、「ゼロの会」というユニークな会を紹介しよう。これは、神奈川県保険医協会が呼びかけ団体となって、窓口で医療費を払わない世の中をめざしている。
《医療費の窓口負担は欧州では原則ないことや、日本でも1984年まで健保本人はゼロ割負担であった実績があります。窓口負担の「解消」は決して不可能ではありません》という。賛同者の顔ぶれが面白い。山田洋次朝丘雪路稲川淳二志茂田景樹などという名前がならぶ。誰でも賛同できるというので、さっそく賛同者になった。http://WWW.iiiryou.com/zero/
少しでも行動しなくては。