韓国のうまいもの―干鱈スープ

takase222008-06-12

 集会やデモは、たいていソウル市庁前広場で行なわれる。ワールドカップのとき大画面を設置して応援する市民の姿を覚えている人も多いことだろう。交通に便利なので、私は出張のさいはその近くに泊まる。
 市庁舎のそばに、武橋洞(ムギョンドン)という飲食店が密集する一帯があり、たいていそこで食事を取る。私はグルメとは縁がないが、感動的にうまいものがこの写真だ。
 干したタラのスープ。牛骨の白濁した汁に、干鱈、短冊の豆腐、白菜、葱が入り卵を浮かせてある。あっさりしていながらトロリとコクがある。この店、40年近く前から、この品だけを供してきた。注文の必要がないから便利だ。黙って座れば自動的にこのスープとご飯、水キムチが出てくる。スープには好みでアミの塩辛を入れるが、これがまたうまい。
http://www.pusannavi.com/food/restaurant.php?id=572
 私の故郷は山形の内陸で、昔は新鮮な生魚が入手できなかった。そのせいで、今も煮たり焼いたりした魚が好きだ。「魚で上手いと思うのは、まずは鯉の甘露煮」と言ったら呆れられたことがある。海近くで育ったその人に言わせれば、海魚の刺身が一番に決まっているというのだ。
 子どものころの味覚はずっと残るものらしい。なれ親しんできた干魚も大好きだ。山形のハレの料理に「からかい」の煮つけがある。エイの干物を戻して煮付けたもので、正月には欠かせない料理だ。プルプルした煮こごりも楽しみだった。藤沢周平の小説の海坂藩にも出てきたので、庄内地方でも食べることを知った。あるショッピングサイトでは、これを「山形のスローフード」として紹介している。http://www.yamagata-bussan.co.jp/SHOP/S006.html
 韓国の干鱈スープに惹かれるのは、こんな私のルーツも関係しているのかもしれない。