安倍政権が拉致被害者の一時帰国を拒否

 大型で非常に強い台風14号が先ほど鹿児島に上陸したとのニュース。

「経験したことのない台風」に注意を呼び掛ける気象庁

 「経験したことのない」というこの頃よく聞く形容が今回も使われていて恐ろしい。

 被害が大きくならぬよう祈ります。
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 小泉訪朝以降、拉致問題は20年にわたって具体的な進展を得られなかった。

 「拉致の安倍」としての「名声」が安倍晋三を首相にまで上り詰めさせたのだが、これが虚像で、実際は進展のチャンスをつぶしてきたことはこのブログで何度も指摘してきた。

takase.hatenablog.jp

 とくに田中実さん、金田龍光さんの生存情報を秘匿し、放置してきたことは、国家としての責任を放棄し、二人の人権を無視するとともに、北朝鮮との絶好の交渉の機会を捨て去る行為だった。

 二人の拉致被害者放置の事実が、このタイミングで社説に取り上げられた。

 朝日新聞17日の社説だ。この20年の間の両国は「隔たりが大きくなっている。その責任は北朝鮮側にある。国際社会の肥を無視し、核・ミサイル開発を続けてきた。拉致という重大犯罪を起こしながら、誠実に対応しない」としつつも、日本政府に以下注文をつける。

 「他方、日本政府の動きについても透明性に問題がある。
 これまで交渉に関係した複数の政府当局者らが、北朝鮮拉致被害者である田中実さんらが同国で生存していることを認めた、と明らかにしている。
 にもかかわらず、その事実の確認や好評すらしないのは理解できない。すべての被害者の帰国に努めるとしてきた基本方針とも矛盾しており、判断の背景を説明する必要がある
 被害者の家族も政府間対話の早期再開を求めている。相互不信を解くのは対話以外にない。平壌宣言をてこに、固く閉ざされた北朝鮮側の扉をなんとかこじ開けてもらいたい。」

 私たちの指摘が次第に広がっているようだ。

 さらに北朝鮮が、田中実さんと金田龍光さんを日本に一時帰国させる提案をしていたという重大な事実が判明した共同通信が伝えた。

信濃毎日新聞が大きく紙面を割いて報じている(17日付)

日本政府が安倍政権当時の2014~15年ごろ、政府認定拉致被害者の田中実さん=失踪当時(28)=と、拉致の可能性を排除できないとしている金田龍光さん=同(26)=の「一時帰国」に関する提案を、北朝鮮から受けていたことが16日、分かった。》

《2人の安否に関して北朝鮮が「入国して妻子と共に暮らしている」と日本側に説明したことは判明しているが、一時帰国まで持ちかけていた実態が明らかになるのは初めて。

 日本政府は一連のやりとりを伏せている。公表すれば、被害者全員の帰国実現に全力を挙げるとした政府方針との整合性が取れなくなると判断したものとみられる。(略)

 関係者によると、北朝鮮が2人の一時帰国を提案したのは、日朝が安否再調査で合意した14年5月から、北朝鮮が再調査に取り組んだとされる翌15年ごろ。日朝接触の際に「日本を訪問させる用意がある」と伝えた。また、田中さんを除く被害者11人の安否に関し「8人死亡、3人未入国」と報告したという。

 一時帰国を拒否した理由を巡り、関係者は ①2人が日本永住を希望するとは考えにくく、帰国しても北朝鮮に戻ってしまうと考えた ②北朝鮮横田めぐみさんらの安否で納得できる説明をしない中、提案に応じれば拉致問題の幕引きに手を貸すことになると判断した―と説明。「受け入れがたい案だと感じた」と述べた。

 安否情報についても日本政府は、信用性に乏しいと判断し、受け入れなかった。当時の安倍晋三首相と菅義偉官房長官が難色を示した。》

 北朝鮮側からの報告を受け取らない方針は、安倍元首相自らが下した判断だったという。

《14年5月に日本人拉致被害者の安否情報再調査を約束した北朝鮮。後日、その報告が外務省経由で首相官邸に届けられた。

「突き返せ」

 当時の安倍晋三首相は官邸幹部らに、こう指示した。緊迫した一幕を、関係者が明かす。

 報告は、田中さんと金田さんの生存を確認する一方、横田めぐみさんを含む政府認定拉致被害者12人のうち8人をやはり「死亡」していたとする内容だった。安倍氏は、ずさんで信用できない従来の調査結果の焼き直しに過ぎないと考え、受け入れなかったとされる。

 北朝鮮が持ちかけた田中さんら2人の一時帰国という提案も「北朝鮮による謀略かもしれない」(関係者)と警戒した。日本にほとんど身寄りのない2人は、一時帰国しても永住を希望せず、北朝鮮に戻ってしまうのではないか。だとすれば拉致問題の幕引きを狙う北朝鮮のわなにはまったとして、国内世論に突き上げられる―読み取れるのはこうした不安だ。》

 

 つまり、北朝鮮の報告が「8人死亡」のままだったから受け取りを拒否し、田中実さんらの生存情報、さらには一時帰国の提案まで拒絶するという対応をしたのだ。

 北朝鮮が「8人死亡」をひっくり返さない限り、田中さんら2人の安否確認にも進めないとして、日本政府は2014年以降8年もの間、彼らを見捨ててきたのである。

 2人は児童養護施設で育ち、日本に身寄りがほとんどいない。家族会に参加している親族もいない。横田めぐみさんや有本恵子さん、田口八重子さんなど他の被害者に比べて注目度は低い。

 だからといって政府が《2人の「価値」を低く見積もり、帰国を後回しにしてもいいと考えるなら、憲法14条の「法の下の平等」に反すると言わざるを得ない。》(記事の「解説」)

 憲法などわざわざ持ち出さなくても、同じ拉致被害者同士、扱いを差別することは許されない。日本政府は、横田めぐみさんらの「正しい」(=死亡はウソだという)安否情報がでないかぎり、他の新たな拉致被害者が見つかっても見殺しにするという姿勢なのだ。そしてそう決めたのは安倍元首相である。これはもう一つの安倍氏の首相在任中の「罪」だと私は思う

 安否情報に「信用性に乏しい」って? 北朝鮮がすんなりと全面的に真実を明かすはずがないではないか。その一方で、被害者本人も日本で待つ親族や友人も有限の時間しか与えられていない。だから一挙に完全解決などという不可能事だけを追わずに、不十分であっても、可能なところから一人でも二人でも被害者の消息をたどり救出していくしかないのだ。

 一連の経過を歴代政権は公表していない。有田芳生さんが安倍首相(当時)をこの件で追及した際も「今後の対応に支障を来す恐れがある」として答えず、岸田文雄首相も昨年12月に参院予算委で有田さんの質問に「具体的に申すことは控える」とかわすだけだった。岸田首相は生存情報が伝えられたときの外相である。

参院予算委での岸田首相とのやり取りはこうだった。

有田芳生 二〇一四年五月、ストックホルム合意、あのとき総理は外務大臣でいらっしゃった。私も質問したことを覚えておりますけれども。あのストックホルム合意の、二〇一四年の秋から翌二〇一五年の初めにかけて北朝鮮側が、政府認定拉致被害者田中実さん、そして北朝鮮に拉致された可能性を排除できない金田龍光さん、生存情報を何度か通達してきていますよね。

国務大臣松野博一君) お答えをいたします。
 北朝鮮による拉致被害者や拉致の可能性を排除できない方については、平素から情報収集等に努めていますけれども、今後の対応に支障を来すおそれがありますので、具体的な内容についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います

有田芳生 政府認定拉致被害者の田中実さんが生存しているという情報を得ているのに、なぜ今後の対応、支障を来すんですか。もうあれから七年ですよ、七年。田中さんはもう七十ですよ。あの国でどうやっていらっしゃるのか、情報をつかんでいますか。何で聞かないんですか。序列があるんですか、拉致被害者に。

国務大臣松野博一君) 繰り返しになりますけれども、情報収集に努めてはいますけれども、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、具体的な内容についてお答えをすることは差し控えさせていただきたいと思います。

有田芳生 情報収集ではありません。政府が、北朝鮮から二〇一四年の秋と翌年に政府認定拉致被害者の田中実さんが生存しているという情報が来たならば、本当かどうか確認すべきじゃないんですか。

国務大臣松野博一君) お答えをいたします。
 情報収集を含め様々な対応について努めているところでございますけれども、それぞれの対応につきましては、今後の方向、進め方に関して支障を来すおそれがあるということでお答えを差し控えさせていただきたいということでございます。

有田芳生 田中さんも金田さんも神戸のラーメン店の同僚でした。
 私は、田中さんの同級生にも会ってきました。もう担任の方はお亡くなりになりましたけれども、田中実さんは生きているということが分かったならば、やはり一時帰国でもしてもらって、私たちは苦労したねと羽田で迎えたいんだという思いが今でもあるんです。

 だけど、北朝鮮から生存しているという通達があっても、何度もあっても、日本政府はそれを、あったかどうかも分からない、今後の対応に支障を来すと言うけれども、もう七年、元気なのかどうかも分からない。人命の問題でしょう、これは。一人からでも取り戻すという、そういう方向が必要なんじゃないですか。総理、いかがですか。

内閣総理大臣岸田文雄君) 御指摘の情報に対してどう対応したか、こういったことについては具体的に申すことは控えますが、御指摘のように、例えば順番があるんではないか、序列があるんではないか、そのように委員おっしゃいましたが、そういったことは決してございません。拉致被害者の方、全ての拉致被害者の方を帰国させる、こうした目的は、目標は、今までもこれからも変わることはないと信じております。

有田芳生 序列がないならば、田中実さん、金田龍光さん、本当に生きていらっしゃるのかというのは北朝鮮側と交渉をしてそれを確認をして、本人たちがどういう意向をお持ちなのか聞くのが日本政府の当然の態度だと思うんです。

 ましてや、田中実さんは北朝鮮で日本人女性と結婚しているという情報はあるんです。その日本人女性というのは誰なのか、拉致被害者なのか、これは重要な問題ですよ。だから、そういうきっかけを有効に使いましょうというのが、ずっと横田滋さんが強調してきたことなんです。動くことでいろんなことが出てくるんだと、そういう立場取っていただけませんか。

国務大臣松野博一君) 総理から答弁をさせていただきましたけれども、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく全力を尽くしております。おりますけれども、それに至る道筋、プロセスについて言及することについては差し控えさせていただきたいと思います。

(以下略)

 いやはや、国会答弁のなんと無意味なことか。こういう何も答えない答えが近年多すぎる。国会をバカにしているんじゃないか。

 政治家の「全力を尽くします」の決意表明は聞き飽きた。

 「全員一括即時帰国」路線から脱却し、首相が腹をくくってまともな外交交渉を取り戻すことを求めたい。

 

日朝首脳会談20年を迎えて

 はじめにお知らせです。

 高世仁のニュース・パンフォーカス】No.30
 「なぜウクライナには『降伏する』という選択肢がないのか」を公開しました。

www.tsunagi-media.jp

 ウクライナ人が、平和とは勝利だと考えるわけ、また日本人の思考の特殊性について書いてみました。
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 北朝鮮が日本人の拉致を認めた日朝首脳会談から20年

 横田早紀江さん(86)が「いつまでたっても解決しない思いしかない。言いようのないいら立ちが多い」と語るのを聞くのはつらい。

 拉致した北朝鮮が責めを負うのは当然として、このブログで何度も指摘したように、解決に向けてまともな外交を展開できないでいる日本政府にも大きな責任がある。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20220530

 きのう放送の「めぐみさん拉致事件 横田家の闘い」はBSで流れたものを短縮編集した再放送なのだが、このタイミングでもあり、NHK総合でしかも夜10時という時間帯の放送だったため、多くの人が視聴したようだ。長いことご無沙汰していた友人や知り合いから「見たよ」と連絡が入った。

 私たちジャーナリストのパートはともかく、拉致という国家犯罪に巻き込まれた家族がどんなに過酷な境遇に置かれるかはわかってもらえたと思う。

 未帰還の政府認定拉致被害者の親たち8人がすでに亡くなっている

亡くなった未帰還者の親たち(NHKニュースより)

 拉致被害者のなかには北朝鮮で亡くなった人もいるだろうが、はっきりしたエビデンスのある安否情報を北朝鮮はまだ明らかにしていない。いま健在な親は有本恵子さんの父、明弘さん(94)と横田早紀江さんだけだ。

有本明弘さん(94) NHK

横田早紀江さん(86) NHK

 政府は早急にこれまでの「全員一括即時帰国」路線と何の準備もないまま「無条件での首脳会談」の無原則な方針からの転換をはかり、問題の進展に真剣に取り組むべきだ。

 この間の報道で興味深かったのは、NHKによる田中均氏(元アジア大洋州局長)のインタビューで、まず「国際報道」で報じられた。

takase.hatenablog.jp

 さらにこのインタビューを14日の「クロ現」で取り上げたが、ここで興味深かったのは、日朝首脳会談が米国につぶされないよう、日本の外務省が手を打っていた事実だ。

田中均氏 NHK

 02年1月29日、ブッシュ大統領北朝鮮を「悪の枢軸」の一員として激しく敵対する姿勢を明らかにしていた。そして政権中枢にはチェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官らネオコンの右派強硬派がいた。そんなところに「これから首相が訪朝して金正日と首脳会談します」などと言ったら「ならず者国家」は締め上げるしかない、と反対されるだろう。そこで、強硬派と一線を画すパウエル国務長官のラインを利用することを考えた。

 そこで田中氏は、ちょうど来日していたアーミテージ国務副長官ホテルオークラで会い、首脳会談を知らせた。同席したのはケリー国務次官補、国家安全保障会議マイケル・グリーン日本担当部長、ベーカー駐日大使の面々だった。結果は、強硬派には通知されないまま、米国の「了解」を取り付けることに成功したという。

アーミテージ氏 NHK

 放送ではこれ以上のディテールは明かされなかったが、インタビューしたNHKの国際放送局の増田剛記者によれば、田中氏は米側とのやり取りはこうだったという。

 「日朝平壌宣言のドラフト(草案)も含めて全て話をした。彼らはじっと聞いていました。物音ひとつせず、じーっと聞いていた。日本がアメリカから驚くような内容のブリーフを受けることはあることなんですが、その逆はあんまりないんです 」

話し終わると、アーミテージがすくっと立ち上がって、『俺に任せろ』と。『自分は今からアメリカ大使館に戻って暗号電話でパウエル(国務長官)に直接話をする』と。『ついては、その次の日、小泉総理からブッシュ大統領に電話をしろ』と言ってくれた」

 日朝首脳会談の開催は8月30日に発表された。

 その前に、田中氏の秘密交渉の報告を受けて知っていたのは、首相官邸小泉首相福田康夫官房長官古川貞二郎官房副長官の3人で外務省でも川口順子外相と竹内行夫外務事務次官、交渉担当者に限られた。官房副長官の一人だった安倍晋三氏には伝えられていなかった。)

 アーミテージ氏らへの説明は発表3日前の8月27日のことだった。

 まるでドラマのような展開だが、ここは日朝首脳会談が土壇場で潰されるかもしれない、一つの大きな山場だっただろう。結果としては、日本の外務省は賢い行動をとったと思う。

 脱線してちょっと雑談。

 私はアーミテージ氏に2回インタビューしたことがある。とてもフレンドリーで、政治的立場は別として私の印象は「いいやつ」である。尋常でない胸板の厚さはウエイトリフティングで鍛えたという。
 机に飾ってあった家族写真に、肌の色や目鼻立ちが違うたくさんの子どもが写っていて不思議だったが、聞くと、三男一女の自分の子の他に、ベトナム人やアフリカ系などの養子がいるそうだ。大きな包容力を感じさせる人物である。

 竹内行夫によれば、アーミテージ氏らへ説明した翌朝、米大使公邸で朝食会に出席した。アーミテージ氏はワシントンのパウエル国務長官から電話を受けた際、「ユキオ、一緒に聞いてくれ」と、長官との会話を聞かせた。長官は「ワシントンは大丈夫だ。ブッシュ大統領も問題ない」との反応だったという。(14日朝日新聞夕刊「拉致 北朝鮮と向き合う」③)

 竹内氏は4月出版の共著『外交証言録 高度成長期からポスト冷戦期の外交・安全保障』(岩波書店)で以上の話を明らかにした。

 上に紹介した記事は、朝日新聞の北野隆一編集委員が夕刊に5回連載した「拉致 北朝鮮と向き合う」だ。この連載はプロレスのアントニオ猪木氏はじめ北朝鮮との交渉にかかわるさまざまな人々の体験が紹介されていて興味深い。

 北朝鮮との神経戦のなかでもっとも緊迫した場面の一つは04年5月の2回目の小泉訪朝時。02年に帰国した5人の拉致被害者の夫や子どもなど家族を連れ帰る手はずだったが、北朝鮮はぎりぎりまで粘った。

 《曽我ひとみさんの夫で元米兵のジェンキンスさんは「日本に行けば脱走兵として米軍に裁かれる」と同行を固辞した。蓮池薫さんと祐木子さん、地村保志さんと富貴恵さん夫妻の子どもたち5人の所在も伝わってこない。

 政府専用機に乗るためバスで空港へ移動中、山本氏は北東アジア課の担当者に電話し「どうなっているんだ。5人の身柄は確保したんだろうな」と聞いた。だが、「それどころじゃありません。居場所も確認できません」という。藪中三十二(みとじ)アジア大洋州局長が金永日(キムヨンイル)外務次官に「5人を専用機に乗せないと、総理は出発しないぞ」と迫ると、ようやく5人が空港建物から出てきた。」(13日夕刊、連載②)

(「山本氏」とは、当時北東アジア課首席事務官だった山本栄二氏で、今年3月に出版された氏の『北朝鮮外交回顧録』(ちくま新書)のP252以下により詳しく記されている。)

 対北朝鮮外交が一筋縄ではいかないことがよくわかるエピソードである。
 
 北野さんは最後を有田芳生さんの活動で締めくくっている。備忘として引用しておこう。

《ジャーナリストの有田芳生氏(70)が拉致問題にかかわるきっかけは02年。寄付を募り、米ニューヨーク。タイムズ紙など4カ国の新聞に拉致被害者救出を訴える意見広告を載せた。
 10年に参院議員に当選。横田滋さん、早紀江さん(86)夫妻から話を聞いた。北朝鮮に拉致されためぐみさんの娘で、夫妻の孫にあたるキム・ウンギョンさん(35)の消息を知りたがっていることがわかった。
 北朝鮮で、金正日総書記の側近の中に「横田さん夫妻の人生に大変なことをした。申し訳ない」と考える人がいることも聞いていた。有田氏は関係者につてを求め、ウンギョンさんの結婚写真を夫妻に届けた。夫妻とウンギョンさんのメッセージのやりとりも仲介したという。
 有田氏によると、夫妻は13年秋、当時の安倍晋三首相と岸田文雄外相(65)に手紙を書き、「自分たちも年を重ね、この時期を逃したら会えないかもしれない。ぜひ会いたい」などと訴えた。政府が北朝鮮と交渉し、14年3月、夫妻はモンゴルのウランバートルでウンギョンさんと家族に初めて面会した。
 日朝両国は同年5月、ストックホルム合意を結んだ。北朝鮮は特別委員会を設けて拉致被害者や日本人遺骨、残留日本人などを調査することとした。
 北朝鮮は、拉致被害者の田中実さんと行方不明者の金田龍光さんが平壌で生存していると日本政府に伝えたとみられる。伝達したのは14年秋と15年の交渉の場だったと有田氏はいう。
 20年6月、有田氏は参院本会議で質問した。「私が何度も首相に問うてきた問題があります。田中さんと金田さんが生存していると北朝鮮から14年に通告されたものの、その事実さえいまだ認めないことです」。安倍首相は「今後の対応は、支障を来す恐れがあることから答えは差し控えます」と答弁した。
 国会での12年間の取り組みをもとに今年6月、「北朝鮮拉致問題 極秘文書から見える真実」を出版。記者会見してこう述べた。「拉致問題はこの20年、事態が動いていない。何とかしなきゃいけないという思いで本を書いた」》(16日夕刊、連載⑤)

 小泉訪朝20年を迎え、田中氏はじめ外務官僚が本を書いたり、当時の話を語ったりしている。小泉内閣時代の対北朝鮮外交をより深く知る機会が訪れている。証言を聞く限り、日本の外務官僚の士気も実力も相当なものという印象を持つ。

 要はリーダーが責任をとると覚悟を決め、彼らの能力のすべてを使うことではないだろうか。

戦争で結婚が増えているウクライナ

国葬の前に国葬どんと出る(神奈川県 赤木不二男)
 英国は先んじて19日に。

比べては困るこちらは国葬(東京都 上田耕作)
 あくまでも「国葬」ではないと言い訳。

 13日の「朝日川柳」より。国葬反対はどんどん増えている。内閣支持率は急落。それでも政党支持率に変化がないのが不思議だ。
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 11日、ドンバス地方への玄関口の要衝、ハルキウイジューム市からロシア軍が撤退したと報じられた。ウクライナ軍の大きな勝利だが、この町で多くの民間人がロシア軍に殺害された可能性が浮上している。地元市議によれば少なくとも1千人以上が死亡したという。

NHKニュースより

 ウクライナが奪回したとはいっても、町の破壊はすさまじく、インフラも破壊されていて、住民らをこれから来る冬に向けて他の地方に移住させることも考えていると市長は語る。

NHKニュース

 ウクライナ軍が入ってイジュームでは、拷問されて殺害された人々の遺体も見つかりはじめた。

 ロシア軍による虐殺が明らかになったキーウ近郊のブチャが占領されたのは1カ月。イジュームは5カ月も占拠されていて、ブチャよりも多い市民の犠牲が出ているとみられ、今からロシア軍の禅僧犯罪についての調査がはじまる。

 ただ、戦争犯罪のなかでも性暴力は調査・解明が難しいという。

 キーウの性暴力に関する人権団体「ラ・ストラーダウクライナによると、多く報告されるケースは、「集団でレイプ」と「数日から数週間にわたって加害行為」があったというもので、精神的なダメージが大きいという。14歳未満の子どもや男性からの被害相談もあり、中には「自殺したい」と打ち明けてくる人もいるという。

性犯罪は、証言することが心の傷をえぐるので、調査に協力を断る人も多いという(NHKニュース)

 心理学者のコジンチュク氏によると、性暴力は兵士個人の性的衝動とは関係ないという。

「市民を服従させる」のが目的で、だから「戦況が思うように進まなくなると誰かを服従させたくなる」という

 そういえば、生き残ったブチャの住民が、ウクライナ軍の抵抗で苦戦したあとはロシア軍の住民への暴行・狼藉が激しくなったと語ったとの報道があった。

 誰に責任があるかといえば、「兵士数人がレイプをしていたとしても、誰も止めなかったのなら、ロシア軍全体の責任です」とコジンチュク氏。当然、上官の罪も問われることになる。

 ロシア軍による非人道的な残虐行為はロシア軍が撤退した後ではじめて発覚する。現在占領下にある地域が、現在戦闘がないとしても、どれほど酷い状況にあるかは分からない。

 ロシア軍の撤退がさらに進むよう期待する。
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 ウクライナで結婚する人が増えているという。

 今年上半期で結婚した夫婦は10万組以上で、去年同時期を比べて20%増になった。(ウクライナ法務省

NHKニュース

 人口4200万人のウクライナで670万人が難民に、660万人が国内避難民になり、兵士だけで1万人が亡くなっている。この状況で結婚する人が大幅に増えている。なぜ?

 ウクライナのある心理学者がこう分析していた。

「遺伝子を残したいという本能的な欲求ですが、もちろん他の要因もあります。多くの人がコントロールの欠如を感じています。自分の人生をコントロールしたいのに、今は戦争にコントロールされている。だから自分の人生をコントロールするために、あらゆることをしようとするのです」。へえ・・・。

 この「解釈」を裏付けるように、この日結婚したディアナさんという新婦は、「いま世界で起こっていることが私たちを突き動かしています。重要な伊ベンチは音回しにすべきでないと悟りました。戦争が私たちをひとつにしたのです。」という。

 同時に、将来への大きな不安も口にした。

「夫を亡くした女性たちの話をニュースで見ると、胸が絞めつけられます。想像するだけでつらいです」と半泣きに。最後は―

でも、彼は必要とされれば、軍に行って国を守ってくれるでしょう」と語っていた。

新郎ロマンさん(28)と新婦ダリアさん(23)。東部からキーウに逃げてきた二人は、各地の親戚を結婚式に呼ぶことは危険だとして二人だけで式を挙げた。


 戦争という運命のなか、けなげに精一杯生きようとする二人を心から祝福したくなった。

 それにしてもウクライナは美人、美男が多いなあ。

ロシアの『ノーバヤ・ガゼータ』に活動禁止の判決

 ロシアの言論弾圧がまた一段強まった。

 《モスクワの裁判所は5日、ロシアに残る数少ない独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」の発行免許を剥奪する判決を下し、同紙は事実上、活動を禁止された。(略)

 ノーバヤ・ガゼータは声明で、今回の判決は「この新聞を殺し、発行のために働く人々から30年の人生を奪い、読者から知る権利を奪った」と批判した。

ムラトフ編集長は闘い続けると表明 (NHKニュースより)

 国連人権高等弁務官事務所は、判決で「ロシアのメディアの独立性が再び損なわれた」とし、ロシア政府に報道の自由を守るよう求めた。

 ノーバヤ・ガゼータは今年3月、通信規制当局から報道内容に関する2回目の警告を受けたため、ウクライナにおけるロシアの「特別作戦」終了まで活動を一時的に停止すると発表。メディアに関する新法に従い、ウクライナにおけるロシアの軍事作戦に関連する記事をウェブサイトから削除していた。》(ロイター)

 さらに同じ5日、モスクワの裁判所は、元軍事記者のイワン・サフロノフ被告に対し、国家機密を漏らしたとして、反逆罪で懲役22年の刑を言い渡した

《サフロノフ被告は大手経済紙のコメルサントとベドモスチで、国防や政治、宇宙開発などを担当。ロシアで最も尊敬される記者の一人だった。記者を辞めた後、国営宇宙開発企業ロスコスモスの顧問に転身。2020年7月、国家の軍事、防衛、安全保障に関する機密情報を収集し、外国の情報機関に渡した疑いで逮捕された。》(AFP)

NHKニュースより

 サフサロフ氏は、ジャーナリストへの言論圧殺だとして上訴するという。

 ノーバヤ・ガゼータのムラトフ編集長は、ロシアで言論の自由を守り続けたことが評価され、去年ノーベル平和賞を受賞している

 7月には、ムラトフ氏と一緒にノーベル平和賞を受賞したフィリピンのマリア・レッサ氏が運営するニュースサイト『ラップラー』が閉鎖命令を受けている。

 平和賞受賞がロシア、フィリピン両国での言論の自由のための闘いに少しでもプラスに働けばと期待していたが、弾圧はさらにひどくなっている。

takase.hatenablog.jp

 注視し続けよう。
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 知り合いの元衆議院議員井戸まさえさんが「国葬儀」の案内が土曜に速達で届いたSNSに投稿。(井戸まさえさんとは数年前、ある飲み会で席が隣になったというご縁で知り合った)

《注目したのは出欠の返信期日で、修正ペンで消した上で手書きで書き直し!(出席での返信が少なかったから、元職にも急遽発送?)

国葬儀」という国にとっては大きな儀典で、準備にそこそこ時間もあったにもかかわらずこんな行き当たりばったり、そのドタバタぶりが》とツイート

返信期日が手書きで直してある(井戸まさえさんのツイートより)

 たしかにこりゃひどいな。

 岸田首相、「国葬」に対する国民の反発の強さに押されて、国民に弔意を強制しないと繰り返す。

 「国葬」やるって言ってしまったから、とにかくやらせて、国民のみなさんはただ文句つけなきゃいいから、ということなのだろう。

 国民が心から哀悼するのが国葬なのだ。初めから国民は哀悼しなくてよい前提ならそもそも国葬にする意味がない。

 国葬統一教会問題への対応では自民党支持層も岸田内閣を批判する。徹底的に追い詰めて、何らかの決着をつけさせなければならない。
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 ウクライナが攻勢に出て、ロシア軍がハルキウから撤退するとの観測が報じられた。

 《英国防省は12日、ロシアがウクライナ東部ハリコフ州のオスキル川以西の州全域から軍の撤退を命じた可能性が高いと発表した。(略)同省は「ウクライナの急速な成功はロシアの全体的な作戦計画に大きな影響を与える」とツイートした。》(ロイター)

朝日新聞より)

 一日も早く、プーチンに戦争を「やめる」と言わせたいものだ。

国防費の財源が争点のスウェーデン総選挙

 昨夜は中秋の名月を堪能した。

 「お月見ヨガ」の会が東京・小金井公園であり、私は「心のストレッチ」を依頼された。

私が話す後ろから月が昇ってきた

 お題は「お月さまはなぜ空で輝くの?」

 月がなかったら地球上のあらゆる生きものが絶滅することを解説。私たちが生きていられるのは月のおかげ、「月は私のために空に輝いている!」と心で唱えながら月を仰ぎ見るワークをやった。

途中、雲が出てきて薄月に

 そのあとは一杯やりながらほろ酔いで見事な満月を眺めた。3時間も月を見ていたのは生まれて初めて。いい夜だった。

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敗戦日六才からの民主主義 新潟市 嘉代祐一)

 きょうの朝日俳壇の入選句。

 日本は降伏して良かった、戦争を続けていたら、さらに無駄な犠牲者が積み上がったはず、と考える日本人は多かっただろう。そして、敗戦によって民主主義の「良い世の中」の幕が開いた、と。つまり、戦争に負ける、降伏するということに悪いイメージを持っていない。

 ウクライナでの戦争を、こういう日本人の特殊な体験と心情をベースに論じないよう注意したい。

 現地で起きていることを知り、現地の人たちの気持ちに寄り添うことにつとめたい。
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 沖縄県知事選は玉城デニー候補が再選を決めたとのニュース。開票が始まってすぐに当確が出るほど差がついたようだ。

abemaTVより

 玉城デニー知事の1期目は苦難の連続だった。

 普天間飛行場宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画に反対しの県民の意思を安倍政権は完全に無視、知事選の約2カ月半後に辺野古沿岸部の埋め立てを開始した。玉城氏は「対話による解決」を求めたが、政権側は応じずに工事を着々と進めている。

 19年10月には琉球王国の歴史、文化の象徴だった首里城正殿などが焼失
 20年以降は全国最悪の新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われた。入国チェックを受けない米軍が初期の感染源になったとみられる。観光客は激減し、経済が冷え込んだ。

 今回、あらためて辺野古移設反対の民意が示されたわけで、ここから政府に移設をやめるよう迫っていきたい。

 辺野古への基地移設を容認する佐喜真淳候補は、統一教会との関係が露呈して保守系の一部からの離反もあったとみられる。今後の各地での選挙でも統一教会ファクターが影響しそうだ。
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 スウェーデンの総選挙も今日が投開票日

 この国の政治・経済には特別な関心をもっている。今回は、ロシアによるウクライナ侵攻で大きな転換点に差し掛かっているスウェーデンにとって非常に重要な選挙だ。注目!

スウェーデン名物の「選挙小屋」。街角に政党ごとのブースが立ち並び市民らが議論し合う


 ロシアの侵攻はスウェーデンNATO加盟へと向かわせた。また政府は国防費を現在の約2倍に引き上げると表明、国防費の財源をどこに求めるかが最も大きな争点になっている。

 与党の「社会民主労働党は、増税でまかなうとの主張。富裕層への課税強化などで手厚い社会保障を維持しつつ国防を強化する方針を打ち出している。

 これに対して最大野党の「穏健党」は、増税はせずに社会保障費などを抑えることで国防費を捻出すべきだとする。

与党候補の彼は移民の両親のもとに生まれ、無料で大学進学、大学院で法律を学んだという

 ウクライナ侵攻でかすんできたのが環境問題。電力価格の高騰で、国民の関心が環境より生活の安定へと向けられているという。かつて10%以上の支持率をもち政権にも加わったことがある「緑の党」は訴えが浸透しない苦しい展開になっているそうだ。

グレタさんは環境問題がなかなか争点にならないことに危機感を募らせる(NHK国際報道より)

 また、移民受け入れに批判的な「スウェーデン民主党が支持を伸ばし、支持率では「穏健党」を抜いて「社会民主労働党」に次いで2位になっているという。

現有議席数(NHK国際報道より)

 高福祉の環境先進国、移民を受け入れる国というこれまでのスウェーデンの国のあり方が大きく揺さぶられている。

 さて、結果は。

自民党の「大甘点検」を許すな

 お知らせです。

 私の協力した番組「アナザーストーリーズ」【めぐみさん拉致事件 横田家の闘い】がNHK総合で放送されます。

 これは一昨年12月にBSプレエミアムで放送され、その後数度の再放送を経たものを45分に短く編集し直したものです。

 もとの番組より短くなりますが、私が登場するパートも残っています。BSが見られなくて見逃した方はどうぞご覧ください。2回放送されます。
9月16日(金)22時〜22時45分 NHK 総合
9月21日(水)0時30分〜1時15分  NHK 総合

当時の私が右。まだ髪の毛が残ってます(笑)

 最近は「拉致問題」が政治・外交イシューとしても、ニュースでも聞かれなくなったが、その原点ともいえる事件を知っていただきたい。
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 コロナ感染の第7波はそろそろピークを打った感があるが、医療現場の逼迫状態は続いている。私の知り合いの医師も連日夜の10時、11時まで働きづめだという。

 その一方で、全確保病床の3割近くを占める「東京都立病院機構」が運営する計14の病院の稼働率が低迷。8月17日時点で、1千床以上が空いているという。第5波の去年9月末には14病院の使用率が76%だったのが、今は約39.5%(疑い患者を含む)まで落ちている。

朝日新聞記事(7日)より

 理由はいろいろあるが、診療体制確保のため、病院の機能や病床の種類に応じて1床あたり1日43万6千円から1万6千円の病床確保料が支払われていながら稼働しない「幽霊病床」がたくさんあって、逼迫度の激しい民間病院から批判がでているという。

 世界一の病床数を誇る日本で、コロナ感染の「波」が来るたびに医療がパンクして病院にかかれないコロナ患者が亡くなるというのを繰り返している。

すぐに医療崩壊する病床数世界一の日本 - 高世仁のジャーナルな日々 (hatenablog.jp)

 こまでくると政治の問題だ。岸田首相、小池都知事はしっかりしてほしい。

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 各都道府県選出の国会議員数は人口で決められ、「1票の格差」で定数増減が論じられるが、人口でなく食糧自給率を基準にすると、北海道は12議席から59議席に大幅増。東京と大阪はそれぞれたった1議席になるという。

 佐賀県が人口だけを考慮するやり方に一石を投じるために試算したという。食糧自給率(カロリーベース)に人口を掛けた「カロリーベース人口」で議席数を割り振ったら―

朝日新聞(7日)より

 自給率100%越えは1位の北海道(196%)の他は秋田(190%)、山形(135%)、青森(120%)、新潟(107%)、岩手(106%)と東北が並ぶ。次が問題提起した佐賀(95%)。東京と大阪はともに自給率1%。

 佐賀県の山口祥知事は、食の安全保障や発電所の立地などエネルギーの生産状況なども挙げて「国の存立のためには人口だけでなく様々な要素がある」と指摘、「こういった要素を加味して議員定数を定めてはどうか」と投げかけたという。

 昔は「石高」で地方の力を見たものである。日本の直面する諸問題を考えさせるおもしろい問題提起だ。

 ところで、この表を見ると、「有事」の際は食糧を確保しに、北に避難した方がよさそうだな。
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 8日、自民党統一教会(通称)との「接点」を持つ議員が衆参所属議員の約47%にあたる179人と発表した。

 9日の「ミヤネ屋」で鈴木エイトさんが独自の取材をもとにこれを徹底的に批判した。

www.msn.com

 以下、鈴木エイトさんのコメント。

 自民党の”点検結果”について

「評価する点…難しいですね。予想していたよりもひどい内容。全く意味をなさない点検結果だったと思います」。

 

 さらに統一教会の関連団体の会合に出席したり講演したりした議員につき茂木自民党幹事長が「大半は関連団体という認識がなかった」と発言したことについて

「知らなかったというのはあくまで自民党側の言い分であって、政治家側が統一教会にだまされたという形態を取りたいのかなと勘ぐってしまいます」。

 

 統一教会主催のイベントに出席した議員10人の名前が紹介されると

「なぜここに山本朋広衆院議員の名前がないのか」

 同議員が2017年5月に旧統一教会主催イベントに出席、韓鶴子総裁を「マザームーン」と呼んだことをアナウンサーが紹介すると

「不思議ですよね。マザームーン発言を認めたくないんですかね」。

 

 さらに政治ジャーナリストの田崎史郎氏が「今後新たな人が報道されても、氏名を公表していない58人の中に含まれてますという言い訳が当面は続く」と話すと―

「僕が押さえている中では、その58人以外にいますね。例えば山本議員はネパールとか行く前に『今度はどこへ行かされるのやら』とツイートしているんですよ。実際にこういう議員さんを統一教会のイベントに割り振りしている議員さんがいる」

 ガダルカナルタカから「その人たちの名前って全然出ていない?」と聞かれると「出ていない」と断言した。

 

 圧倒的な情報量で自民党「調査」をばっさりと袈裟切りにした鈴木エイトさん。野党はジャーナリストと連携し、自民党がこんないんちき「調査」で逃げ切ることを許してはならない。

 

 自民党の「調査」については、ずでにいくつかのメディアで「漏れ」が指摘されはじめた。

www.msn.com

自民党自民党「旧統一教会と接点」の議員を公表もさっそく「関係隠し」議員を発見! 「大甘点検」が浮き彫りに】smart Flash

 

 それにしても「ミヤネ屋」(読売テレビ)、よくやってるな。
 おそらく「あまり尖ったことはやめとけ」という政治的忖度の圧力もあるなか、視聴率が稼げるというテレビマンのビジネスの論理が優先されて統一教会追及が続いているのだろうと私は見ている。

 テレビ局に電話などで「きょうの放送がよかった」「もっとやってほしい」と応援メッセージを送ると、意外と「効く」。ぜひやってみて。

ウクライナはなぜ降伏しないのか(その2)

 きょう、国葬をめぐって国会で質疑があったが、岸田首相の「説明」はこれまでと同じにすぎない。それでは納得できないと追及されると―

 今後、丁寧な説明を続けていく・・というだけ。

MBSニュースより

 「丁寧」とは「同じ文言を繰り返すこと」と国語辞典を書き換えなくては。
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今頃になって五輪が盛り上がり (宮城県 猪又義記)

 きょうの「朝日川柳」だが、東京五輪パラリンピックをめぐる汚職事件で、AOKIの5000万円に続いて、KADOKAWAが7600万円の賄賂との報道。広告大手の「大広」も家宅捜索。

 次はどこ?と大きな関心を集めている。

 五輪をめぐってはスキャンダラスな汚い話が誘致運動からはじまって次々に発覚、大会が終わって1年経ってクライマックスを迎えている感じだ。
 金と欲と嘘で汚れちまった五輪。

 ここまで来ても誰も責任をとらないのだろうか。
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 ウクライナから避難民を日本に受け入れる、新たなNPOの立ち上げについて相談するため関西に泊りがけで行ってきた

 NPOの登記はすでに済んで、活動スケジュールを具体化する段階に入っている。
 来週、記者会見で発表するので、詳しくはその後に報告しよう。

 ウクライナに関心をもつ人々が各地で行動を起こしていることに励まされる。

 空いた時間、観光に誘われ、伊勢神宮に初めて行った。皇室と特別な関係にある神社のためか、正宮全体が撮影禁止、入場禁止になっている。(知らなかった)

平日だがけっこうな人出だった

内宮の広い森

赤福本店で

 それでも森のすがすがしい空気を吸い、巨木を見上げて英気を養った。名物の赤福も味わった。
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前回のつづき

2日藤沢市役所での片岡ソフィヤさんの講演

 いまロシア軍の占領下に置かれているウクライナの東部や南部の地域では、道路標識までロシア語に変えられるなど「ロシア化」が急速に進むが、深刻なのは教育の「ロシア化」だ。

 この9月から新学期で、ロシアは自軍占領下の地域に高額報酬でロシア人教師を送り込んでいる。プーチンは、子どもを通わせれば1万ルーブル家庭に支払うと約束した。逆に子どもを通わせないと、14万8000ルーブル(約34万円)の罰金を科し家からの立ち退き命令を出すと警告。さらには子どもを学校に登録しない場合、孤児院に送るとも脅迫している。

NHKニュースより

 さらに、ロシア軍占領地では「ジェノサイド」と表現してもよい事態が進行している片岡ソフィアさんは危機感をあらわにする。

 ジェノサイドとは、ナチスユダヤ人の大量虐殺から生まれた言葉で、「特定のグループ全体、もしくはその一部を破壊する目的で行われる集団殺害、およびそれに準ずる行為」のことで国際法上の重大犯罪だ。

 「ジェノサイド条約」の第2条にはジェノサイドの行為として「 集団の児童を他の集団に強制的に移すこと」が含まれる。

 ロシア軍の占領地域では、30万人ものウクライナの子どもたちがロシアに連れ去られたとみられる。親が死んだ孤児や家族とはぐれて迷子になった子、親から無理やり引き離された子どももいる。その子どもたちをロシア人家庭の養子などにしてロシア人にしてしまおうというのだ。

 一方、占領下の大人は厳しく尋問され、少しでも軍に関係していたり、ロシアに反発しているとみなされた者、ウクライナ語しか話さない者などは強制的にバスでロシアのキャンプに送られる。占領地域で行方不明になった者は数えきれず、その中には殺害されたケースが相当数あると推定されている。

 住民虐殺はブチャなどロシア軍が撤退した何カ所かでしか明らかになっていない。しかし、ウクライナには何百というブチャの惨劇があり、いまロシア軍占領下にあるいくつの町でブチャのような非人道的な状況が続いているかわからない。

 ソフィヤさんは「ウクライナ国民の命が助かっても平和は保証されない」という。

片岡ソフィヤさん(筆者撮影)

 なぜかというと、ウクライナ人にとって一番怖いのは爆弾でもミサイルでもなく「ロシア軍に捕まること」だから。そして、ロシア軍の占領下にあるということは、捕まっていることと同じで、アイデンティティを奪われながら、ブチャでの惨劇のように、何をされるかわからない状態に置かれることなのだ。

ウクライナの古い教会などの歴史的建造物や貴重な文化財も数多く破壊されている。東部ドネツク州のウクライナ正教会生神女就寝スビャトヒルスク大修道院」が6月ロシア軍の攻撃で木造聖堂が全焼した。ウクライナの三大「大修道院」の一つで、多くの民間人が避難していた(ゼレンスキー大統領のFacebook動画より)

 日本人は敗戦後、多くが「負けて良かった」と思った、まれな体験をした国民だ。連合軍の統制された占領は、住民の集団虐殺などの破壊的な惨事を引き起こさず、食糧の配給により飢餓を防いだ。

 今読んでいる井上ひさしの『下駄の上の卵』は、戦後間もない山形の田舎を舞台にした自伝的小説だが、この中に「配給小麦粉(別名・マッカーサーのプレゼント)」(P59)などという表現がある。

 その日本人が、長引くウクライナでの戦争について、命が大事だから殺されるより降伏したほうがよい、一部の国土が占領されてもすぐに停戦することを選ぶべきだ、などと思ってしまうのは無理もないことなのだろう。

 しかし、ソフィヤさんの話を聴いて、日本人の特殊な感覚をウクライナの人々にあてはめることは厳に慎まなければならないと思った。

 講演のあと、日本人が「国のために戦う」ことに拒否感をもつことについてどう思うかとソフィヤさんに質問してみた。

 ソフィアさんはこう答えた。

 「ウクライナ人は『国』のために戦っているのでも、誰かに強制されて戦っているのでもありません。自分たちの幸せと子どもたちの未来のためにロシアを追い出さなくてはならないのです。もし降伏したら、ウクライナは無くなります。いまゼレンスキー大統領が、国土の2割を占領された状態で「停戦する」と言ったら、多くの国民は納得しないでしょう。」

 ウクライナの人々の状況は、冬を迎えればいっそうきびしくなるだろう。一日でも早くロシアに軍を退かせるため、抵抗を続けるウクライナへの支援を続けたいと思う。