この間のパレスチナ関連のニュースから。
まず、世界報道写真財団(本部・オランダ)が主催する2024年の「世界報道写真コンテスト」で、ロイター通信のカメラマン、モハメド・サレム氏が撮影したパレスチナ自治区ガザ地区で5歳のめいの遺体を抱きしめる女性の写真が大賞に選ばれた。
サレム氏は昨年10月17日、ガザ地区南部ハンユニスにあるナセル病院の遺体安置所でシーツに包まれためいの遺体を抱きかかえて号泣する女性の姿を撮影。審査員は写真について「配慮と敬意を持って構成されており、想像を絶する喪失感が垣間見える」と評価した。(毎日新聞)
この写真が撮られたナセル病院で「集団墓地」が見つかった。これはひどい。世界に衝撃を与えている。
《[ジュネーブ 23日 ロイター] - 国連のターク人権高等弁務官は23日、パレスチナ自治区ガザの病院の敷地内で数百人の遺体が発見されたとの報告に「恐怖を覚える」と述べた。同氏の報道官が明らかにした。
パレスチナ当局は今週、イスラエル軍が撤収した後の南部ハンユニスのナセル病院の敷地で多数の遺体が埋められていたと発表した。北部シファ病院でもイスラエル特殊部隊の作戦後に遺体が発見された。
国連人権高等弁務官事務所のシャムダサニ報道官は「複数の遺体が発見されており、警鐘を鳴らす必要性を感じている」と指摘。「手を縛られた遺体もあり、これは言うまでもなく国際人権法と国際人道法の重大な違反を示している。さらなる調査が必要だ」と語った。
その上でナセル病院で283人、シファ病院で30人の遺体が発見されたというパレスチナ当局の報告を裏付ける作業を進めていると説明した。
報告によると、遺体は廃棄物の山の下に埋められており、女性や高齢者も含まれていた。》
「アルジャジーラ」によるとナセル病院では23日までに少なくとも310体の遺体が回収されたという。
《イスラエル軍が侵攻したパレスチナ自治区ガザ地区南部ハンユニス最大のナセル病院で集団墓地が見つかり、23日までに少なくとも310人の遺体が回収された。中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」などがパレスチナ当局の話として報じた。
当局はイスラエル軍が病院を標的に攻撃を行い、ブルドーザーで遺体を埋めて犯罪を隠蔽したと非難している。アルジャジーラは遺体には女性や子供も含まれていると報じた。イスラエル軍は虐殺行為を否定している。
米CNNは現地通信員の話として、1月に住民らが現地で戦闘に巻き込まれて死亡した人の遺体を仮埋葬した後、イスラエル軍が拉致された人質の遺体が含まれていないかを調べるために掘り起こし、別の場所にまとめて埋めたとする見方を伝えている。》(毎日新聞)
ロシア軍の虐殺に匹敵する残虐さ。この点でもロシアとイスラエルは双璧だ。制裁としてイスラエルを五輪から締め出すべきだと思う。
イスラエルの蛮行はガザだけではない。同時にもう一つのパレスチナ自治区ヨルダン川西岸(約330万人が住む)でパレスチナ人への攻撃を大っぴらにやりはじめた。
《(CNN) 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」(HRW)は20日までに、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸でイスラエル人入植者によるパレスチナ人への攻撃件数が、国連が関連データの収集を開始した2006年以降、最悪の水準にあると報告した。
昨年10月7日から今年4月3日までの間では700件以上を記録。これら攻撃のほぼ半数の現場で軍服姿のイスラエル軍兵士の姿が見られたとも指摘した。
西岸地区での兵士や入植者による暴力の激化は、同じパレスチナ自治区ガザ地区で戦闘が勃発した昨年10月7日以降の現象と説明。子ども600人を含むパレスチナ人ら1200人以上が牧畜などを営む遠隔地にあった居住先を追われたと述べた。》
さらに、軍事作戦も。西岸地区はハマスではなく、アッバス議長が率いるパレスチナ自治政府が統治しているが、ここにもハマスの戦闘員が潜伏しているとして、20、21日にこの西岸地区で最大規模の軍事作戦を行った。
《イスラエル軍は、この作戦でテロリスト10人を殺害したとしているが、一方でパレスチナ保健省は、民間人を含む14人が殺害されたとしている。トゥルカレムでは21日、イスラエル軍に殺害された14人の葬儀が行われ大勢の市民が集まった。このうち、2人の子供を亡くした母親は「助けに来た救急車にもイスラエル軍は発砲した」と強く非難している。》(FNN)
イスラエルは数日中にハマスへの軍事作戦を強めるとして、ラファ侵攻を示唆している。
UNRWA職員のハマス関与に「証拠ない」と検証チームが最終報告書を出した。
《国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員がイスラム組織ハマスによるイスラエルへの越境攻撃に参加したとの疑惑を受けて、UNRWAの中立性を調べていた第三者検証グループは22日、最終報告書を発表した。中立性と人道主義を順守する「強固な枠組み」があると評価しながらも、「問題は残っている」としてUNRWAが運営する学校や職員採用のプロセスなどに関する50項目で改善を勧告した。
一方、「UNRWA職員の多くがハマスなどの関係者」などとするイスラエルの主張について、報告書は「イスラエルはその裏付けとなる証拠をまだ提示していない」と記した。UNRWAは2011年からイスラエル側と職員リストを共有しているが、懸念を示されたことはなかったとも指摘した。(略)
検証グループはフランスのコロナ前外相をトップに、北欧の三つの人権研究機関が協力して2月半ばに作業を始めた。パレスチナ自治区のヨルダン川西岸やイスラエルなどを訪問し、職員を含む200人以上にインタビューした。
報告書は「UNRWAはパレスチナの人々の人間的、経済的発展になくてはならない存在」だと指摘。その上で他の国際機関と異なる課題として、3万人超とされる職員の大部分が現地採用で、同時にUNRWAの事業の受益者でもあることを挙げた。(略)
報告書の提出を受けたグテレス国連事務総長は22日、UNRWAと協力して勧告の実行に向けた行動計画を策定するとの声明を発表した。グテレス氏はUNRWAは地域のパレスチナ難民にとっての「生命線」だとし、すべての当事者に改めて支援の継続を呼びかけた。
UNRWAをめぐる疑惑を受けて、一時は16カ国が拠出金を停止したが、組織運営の改善策が進んでいるとして日本を含む少なくとも7カ国が再開を表明した。》(毎日新聞)
パレスチナを国連の正式な加盟国とするよう勧告する決議案が18日、安全保障理事会で採決にかけられ、理事国15か国のうち日本を含む12か国が賛成したが、アメリカが拒否権を行使して否決された。
いつもながらのイスラエルと一蓮托生の姿勢を見せるアメリカ。世界でどんどん孤立していくアメリカと一蓮托生なのが、わが日本だ。この間、日米の防衛協力、アジア太平洋での同盟協力が一気に拡大・強化しているが、この先、いったいどこに行くのか。
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アメリカのウクライナ支援がようやく再開される見通しになった。
米下院が20日、約610億ドル(約9.6兆円)のウクライナ支援の法案を可決した。共和党内の反対で半年も紛糾してきたため、ウクライナ軍が弾薬や防空ミサイルの不足に陥り、苦戦を強いられてきたが、ようやくアメリカからの軍事支援が再び動き出す。
賛成311票、反対112票で、共和党では半数以上が反対したが民主党の大半が賛成に回って可決された。これには国内外からの声、圧力が大きく働いたと見られ、各国政府への市民からの働きかけが無駄でないことを示す。
同時に米下院が可決したものに、イスラエル支援法案(約264億ドル)とガザなどへの人道支援(92億ドル)もある。UNRWAへの送金は禁止した。このちぐはぐさがアメリカ外交を引き裂いている。ここにもまた内外の世論の影響を見て取ることができる。
今朝の『朝日新聞』の社説「米ウクライナ支援 孤立外交では道は開けぬ」は、今回のアメリカのウクライナ支援再開を明らかに支持している。
「この間の停滞は(略)米国の信頼を低下させた」「ナチスの侵略を黙認したチェンバレン首相か、決然と抗戦を選んだチャーチル首相になるのか・・・」「大戦後の秩序形成を主導した米国が、今の世界に無関心を決め込めば混迷は一層、深まる」などなど。
朝日新聞が軍事支援を支持するとは・・・と、感慨深いものがある。
ウクライナを支援する国々をよく「正義派」と「和平派」に色分けするが、ここからは、戦闘が長期化すると犠牲が増えるからウクライナは「正義」の追求を妥協して「和平」に向かうべきだとの議論になりかねない。
しかし、ウクライナは「正義」のために戦っているのではなく、脅かされている命と暮らしを守るために銃をとらざるをえないのだ。このことを理解するならば、ウクライナへの軍事支援を歓迎するのは当然だと私は思う。