詩人・谷川俊太郎が亡くなった。
訃報が朝刊の一面トップになるとは、もうアイドルというしかない。小中高の教科書を制覇し、たくさんの校歌を作詞し(うちの近くの小学校の校歌も彼の作詞だったことをきのう知った)、さまざまなメディアに露出して社会に大きな影響力を持った。これほどの国民的詩人は不世出と言っていいだろう。
私も若い頃、『二十億光年の孤独』など彼の初期の詩を読んで好きになった。ただ彼の仕事の全体像や業績については、『鉄腕アトム』の主題歌を作ったことなど、訃報で知ったことも多い。
大量の解説や追悼の文章が出ており、あらためて彼の詩を論評する気はないが、この機会に知った詩を一つ紹介したい。私の尊敬する人二人が、もっとも好きな谷川俊太郎の詩としてあげていた。
なるほど、たしかに実にいい。
なんでもおまんこ 谷川俊太郎
なんでもおまんこなんだよ
あっちに見えてるうぶ毛の生えた丘だってそうだよ
やれたらやりてえんだよ
おれ空に背がとどくほどでっかくなれねえかな
すっぱだかの巨人だよ
でもそうなったら空とやっちゃうかもしれねえな
空だって色っぽいよお
晴れてたって曇ってたってぞくぞくするぜ
空なんか抱いたらおれすぐいっちゃうよ
どうにかしてくれよ
そこに咲いてるその花とだってやりてえよ
形があれに似てるなんてそんなせこい話じゃねえよ
花ん中へ入っていきたくってしょうがねえよ
あれだけ入れるんじゃねえよお
ちっこくなってからだごとぐりぐり入っていくんだよお
どこ行くと思う?
わかるはずねえだろそんなこと
蜂がうらやましいよお
ああたまんねえ
風が吹いてくるよお
風とはもうやってるも同然だよ
頼みもしないのにさわってくるんだ
そよそよそよそようまいんだよさわりかたが
女なんかめじゃねえよお
ああ毛が立っちゃう
どうしてくれるんだよお
おれのからだ
おれの気持ち
溶けてなくなっちゃいそうだよ
おれ地面掘るよ
土の匂いだよ
水もじゅくじゅく湧いてくるよ
おれに土かけてくれよお
草も葉っぱも虫もいっしょくたによお
でもこれじゃまるで死んだみたいだなあ
笑っちゃうよ
おれ死にてえのかなあ
(つづく)