谷川俊太郎氏が劉霞氏へ連帯の詩

 再発の防止は簡単安倍辞任 (東京都 鈴木了一 朝日川柳より)

 首相が辞任となれば、大変なことだと誰もが分かり、これからは絶対やっちゃいけないな、とみんな気をつけるようになります。
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 関東地方もきょうから梅雨入り。一日雨だった。
 月は水無月、節気は芒種(ぼうしゅ)。芒(のぎ)とは稲などの先にある突起の部分で、芒種とはそうした穀物の種を蒔くころのことだそうだ。麦の刈りいれが終わって田植えをして、梅干しづくりがはじまって、と農家は大忙し。
 きょう6日から初候の「螳螂生」(かまきり、しょうず)、11日からが次候「腐草為蛍」(くされたるくさ、ほたるとなる)、16日からが末候「梅子黄」(うめのみ、きばむ)となる。去年はかみさんが梅シロップを作ったが、今年は梅酒にしてもらおうか。
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 東京新聞の夕刊一面に「軟禁の君に 友情の詩」の大見出し。
 ノーベル平和賞を受賞した中国の民主活動家・故劉暁波(りゅうぎょうは)さんの妻で、中国当局に軟禁されている劉霞(りゅうか)さん(57)の詩集に、詩人の谷川俊太郎さん(86)が一編の詩で応えた。》という記事だ。
《劉霞さんの詩集「毒薬」は三月、書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)(福岡市)から翻訳出版された。中には、軟禁中の悲痛な心境を表現した詩がある。
 <もううんざり 見えるだけで歩けない道/もううんざり 汚れた青空/もううんざり 涙を流すこと>(「無題−谷川俊太郎にならい−」)
末尾には二〇一六年九月の日付。ドイツ在住の作家、廖亦武(りょうえきぶ)さんの元に知人を介して届いたもので、学習ノートを切り取った紙に手書きで記されていた。
 谷川さんの詩「無題」を踏まえて作られた作品だ。谷川さんの詩は中国でも評価が高く、一一年に詩歌の民間最高賞「中坤(ちゅうこん)国際詩歌賞」を受賞している。劉霞さんも作品に親しんでいたとみられる。
 出版元が谷川さんに詩集を贈ると、お礼の言葉と共に「劉霞に」と題する詩がファクスで届いた。
 谷川さんの詩は、劉霞さんの詩を翻訳した在日中国人作家の劉燕子(りゅうえんし)さんが中国語に訳し、自身のフェイスブックで公開しているが、劉霞さんが目にしているかどうかは分からない。
 谷川さんは「(劉霞さんの詩からは)緊張感が伝わってきました。僕も詩を書いたのは、詩人の友情から。自分の詩が中国で伝わっていることへの感謝の思いもありました」。劉霞さんのことは報道で知っていたが、軟禁されている苦境は「詩集を読んで具体的に知りました」と語っている。》


 二人を結ぶことになった出版元、侃侃房の田島安江さんがブログ「つれづれkankanbou」でこの事情を語っている。http://kankanbou.hatenablog.com/entry/2018/03/28/180358
 以下はそのブログより引用。

 谷川俊太郎さんに劉暁波詩集『独り大海原に向かって』と劉霞詩集『毒薬』をお送りした。『毒薬』に「無題―谷川俊太郎にならって―」という作品があったからだ。
 そうしたら、思いがけなく、谷川さんから「劉霞に」という素晴らしい詩が届いた。
 この詩集を読んですぐ書いてくださったのだ。
 劉霞さんがこの詩を読まれたら、きっと涙を流して喜ばれるだろう。
 いつか、そんな日が来ることを心から願っている。
 春霞を眺めながら、しみじみと、二人の詩を読んだ。

「無題―谷川俊太郎にならって―」(劉霞)

うんざり

もううんざり 見えるだけで歩けない道
もううんざり 汚れた青空
もううんざり 涙を流すこと
もううんざり いわゆるちり一つない生活
もううんざり 偽りのディスクール
もううんざり 植物が萎むのも
もううんざり 眠れぬ夜も
もううんざり 空っぽのレターボックスも
もううんざり すべての非難も
もううんざり 言葉の失われた歳月も
もううんざり 鳥かごも
もううんざり 私の愛も
もううんざり 身についた「緋文字」も もう

もううんざり
            (2016年9月)

「劉霞に」(谷川俊太郎

言葉で慰めることも
励ますこともできないから
私は君を音楽でくるんでやりたい
どこからか飛んで来た小鳥の君は
大笑いしながら怒りを囀り
大泣きしながら世界に酔って
自分にひそむ美辞麗句を嘲笑い
見も知らぬ私の「無題」に
君の「無題」で返信してくれた
そうさ詩には題名なんてなくていい
生きることがいつもどこでも詩の題名
一度も行ったことのないところ
これからも行くことはないところ
国でもなければ社会でもない
そんな何処かがいつまでも懐かしい
茶碗や箸や布団や下着
言い訳やら噓やら決まり文句
そんなものにも詩は泡立っている
君のまだ死なない場所と
私のまだ死んでいない場所は
沈黙の音楽に満ちて
同じ一つの宇宙の中にある
              (2018年3月)

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 われわれはみな、「同じ一つの宇宙の中にある」ことを気づかされ、連帯の気持ちがわいてくる。
 ところで、この侃侃房(かんかんぼう)という福岡の書店、おもしろそうだ。同じ福岡には渡辺京二の本を出している葦書房があり、山口県周防大島には宮本常一の本を手掛けるみずのわ出版がある。地方のユニークながんばっている出版社を応援したい。