「囚人」を生産するオリンピック

いま、中国の人権問題にかんして、商業紙の中では朝日新聞の坂尻記者がもっとも鋭い批判をしていると思う。坂尻記者については以前の日記で触れた。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080210
きのう朝日新聞朝刊一面に「五輪の囚人」と題する坂尻記者の記事が載った。続きが3面のほとんどを占める大きな記事だ。中国の人権弾圧がチベットだけではないことを具体例で書いている。
楊春林氏(52)−海外の人権団体が「五輪の囚人」と呼んでいる。昨春、「要人権、不要奥運(五輪より人権を)」とのスローガンで署名運動を始めた。インターネットで訴えが広がり、署名が1万人を突破した。すると7月、公安局が楊氏を自宅から連行。この3月、「国家政権転覆扇動罪」で懲役5年の判決を受けた。
膝彪氏(34)−3月6日夜、北京郊外の団地から膝氏は大柄な4人組に車で連れ去られた。先月25日の日記に書いた、「国家政権転覆扇動罪」で有罪判決を受けたばかりの胡佳氏(34) http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080325の友人だった。「公安」としか名乗らない男たちが3日間にわたって「北京五輪チベット、胡佳については話すな」と迫った。
陳光誠氏(36)−「一人っ子政策」が強制中絶を助長していると批判した盲目の活動家。06年8月、交通秩序撹乱罪などで懲役4年3ヶ月の判決を受け、翌年アジアのノーベル賞といわれるマグサイサイ賞を授与される。
李和平氏(37)−上記の楊氏、陳氏の代理人手弁当で務める弁護士。2度公安に拘束される。陳氏に面会するため、山東省に出向いた06年12月、現地で待ち受けていた数人の男たちに鉄の棒で殴られ全治3ヶ月の重傷を負った。
高智晟氏(43)−非公認カトリック教会の教徒や法輪功、民主活動家を支援したところ、05年に弁護士事務所が業務停止処分を受けた。06年8月に拘束されると米国務省が抗議、米上下院も高氏支持決議を採択。ノーベル平和賞候補にもなる。06年12月「国家政権転覆扇動罪」で執行猶予付き有罪判決を受け、昨年9月以降は行方不明。
倪玉蘭氏(48)−北京五輪施設建設に伴う強制立ち退きに反対。02年に住宅の強制撤去現場をビデオ撮影したことが「公共秩序の阻害」だとして75日間拘束され、弁護士資格を剥奪された。拘束中の暴行で左足に重い障害を負い松葉杖なしに歩けない。今月15日、再開発のため自宅を取り壊そうとした建設業者に「暴力をふるった」として逮捕、勾留されたままになっている。
記事はこうむすばれている。
《権力は党に集中する。その幹部に不正がはびこる。メディアは沈黙する。大衆が不満を募らせても、党批判は断罪されかねない。罪に問われた被告を守ろうとすれば、弁護士にも身の危険が迫る。
これが中国の現実だ》