今後の自民党総裁にまず望むことは、安倍・菅政権の非常識きわまる手法から脱することだ。
政策は二の次でいい!とにかく、まともな対話がなりたち、社会の最低限のルールを守るというイロハに立ち戻るのだ。
ジャーナリスト伊藤詩織さんが、2015年に元TBS記者の山口敏之氏からレイプされたと訴えて警視庁が捜査した当時の刑事部長だった人物。担当した高輪署が、いったん準強姦罪で山口氏の逮捕状をとり逮捕の態勢に入ったのに、突如、逮捕の中止を命令したのが中村格氏だ。官邸からの露骨な介入だった。
安倍・菅政権のもと、官邸主導の明らかな不正を実行した官僚が、国民からの指弾をよそに、出世街道を歩む例は中村氏に限らない。
安倍・菅政権がこれまでの自民党政権と違うのは、あったことをないことにし(公文書がなくなるとか)、なかったことをあることにする(公文書が捏造されるとか)という、社会常識の破壊をやりつづけたことだ。言葉の真の意味で「国賊」と言っていい。
安保法制、桜を見る会、辺野古への基地移設など、もう常態化して、世間も「これが普通なのか」とマヒしかかっている。
政策やイデオロギーがどうかというレベルの話ではない。ここにいたっては、右も左もない。
こうした政治手法には、自民党内からも糾弾の声が上がらないとおかしいのだが、総裁選のあいだ、候補者たちはみなダンマリを決め込んでいた。わずかに野田候補が、森友学園問題での再調査を語ったのみ。
辺野古での米軍基地建設に、沖縄戦の遺骨が残る地区から土砂を調達する計画について那覇市の遺骨収集団体「ガマフヤー」が4候補と他党の各党首に公開質問状を送ったところ、締め切り後の28日までに4候補の誰からも回答が届かなかったという。(立憲、共産、社民、れいわ各党は反対、公明党は政府に検討を促すと回答)
対話をしない、対話がなりたたないという安倍・菅政権の悪習は引き継がないでもらいたい。
「我が国は民主主義の危機にある」という岸田氏。安倍・菅政権でそうなったはずだが、「人の話をしっかり聞くこと」が特技だという岸田氏は、誰の話を聞くのだろうか?
懸念されるのは、安倍氏の影響力が今でもかなり大きそうなこと。総裁選の流れは予想されていたが、第一回投票で河野氏が1位になれなかったのは意外だった。議員票における安倍氏らの河野封じ込めが相当に効いたのだろう。
とにかく社会の常識を取り戻さなければ。
この観点から、岸田氏の言動を注視しよう。