アグネス・チョウ(周庭)が語る日本への期待

 香港が心配だ。犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯条例」の改正案に反対する若者たちが、きのう12日、立法会(議会)周辺でデモを行った。警官隊が催涙弾を発射しデモ隊の一部と衝突、流血の事態となった。きょう、香港当局は、立法会の審議を行わないと発表した。審議をストップすることには成功したが、これに対し、当局がさらに大がかりな弾圧に出て、「第二の天安門事件」にならなければよいが。

 12日、「香港衆志(デモシスト)」の中心メンバー、アグネス・チョウ(周庭)さんが日本記者クラブで会見した。かつては政治に無関心だった香港の若者がなぜいま立ち上がっているのか。彼らの危機感がよくわかる。以下をご覧いただきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=U8qpLjbKjEg&feature=youtu.be

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 このアグネス・チョウさんは5日のブログで紹介したが、アニメ好きが高じて独学で日本語を勉強したそうだ。https://takase.hatenablog.jp/entry/2019/06/05

 昨夜のTBS系「ニュース23」はアグネス・チョウさんをスタジオに招き、香港に村瀬キャスターを送って長い特集を組んだ。https://note.mu/news23/n/n002a50b6a574

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小川(MC):雨傘運動の仲間たちもデモに加わっているんですよね?
周(チョウ):警察は(催涙弾やゴム弾を撃つ)銃を向けました。人の足ではなく、頭に直接向けていたので、デモの参加者は殺されるかもという恐怖感がありました。血だらけのひとも出ています。
 香港人が見ると第二の天安門事件が起こるのではと、不安というより恐怖感がすごくありました。

(香港から村瀬キャスターが催涙ガスをもろに浴びながらリポート)

小川:気をつけて取材を続けて下さい。村瀬キャスターから「顔をマスクで隠してデモに参加している」という報告がありましたが?
:逃亡犯条例の改正案がもし可決されたら、デモの参加者は、顔を認識されると、国家安全法などの中国政府が作り上げた罪で、中国に引き渡されるかも知れないという危機感があると思います。
小川:その恐怖の中で、6月9日のデモは主催者発表で100万人以上が参加したと。香港の7人に1人が参加したことになるが、はじめて参加した人も多かったんですね?
:3~4割は人生で初めてデモに参加した人です。なぜこういうひとがいっぱい出てきたかというと、改正案が可決されると、もともと裁判が公平で自由な社会である香港の良さが全部なくなります。中国の一都市になるかもしれないと感じてしまいます。
 今回の改正案が影響するのは香港人だけではありません。香港に来る外国人(観光客、記者、ビジネスマンなど)も中国に引き渡されてしまうかもしれません。中国は自分の好きじゃないひとを色々弾圧します。
 だから今回はもう、人権や自由だけの問題ではなく、身の安全に関わる問題です。みんな今回のデモを最後の参加のチャンスだという「覚悟」を持ってデモに参加しています。
小川:ここを逃したら戻ることができない?
周:戻ることができないというか、香港はもう香港じゃなくなる可能性が非常に高いです。
小川:香港議会の審議は延期されましたが、星さん、いつ議会が開くか全く見通しが立たない状況ですよね?
星アンカー:力で押さえ込む動きがどんどん広まるでしょうけど、国際世論が香港の市民を応援していく必要があると思いますね。
国際社会の注目が私たちにとって非常に重要だと思います。イギリス・カナダ・アメリカ・EUも声明や懸念や反対の声をあげました。私が今回東京に来たのも、日本は香港と強い経済的パートナーですから、日本政府も自分の意見をハッキリ言っていただきたいという強い気持ちをもっています。
小川:今を逃したらあとがないという周さんの強い危機感が伝わりました。香港にいる皆さんも同じだと思います。周さんありがとうございました。

 

 NHKニュースはうって変わって、

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だったそうだ

 この大変な時期に緊急に来日して訴えるチョウさんたち。香港の若者は日本に大きな期待をしているのだが、政府は中国がらみの人権問題ではいつも腰砕けだ。与野党の政治家、文化人、財界人など世論をリードする人々が声を上げてほしい。
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 実は私は昨日夜のTVニュースを観ていない。高田馬場で、なつかしい「兄弟」に会っていた。

 竹本信弘さん、ペンネーム滝田修といえば「過激派の教祖」として還暦過ぎの人なら誰もが知っているだろう。
 指名手配(本人は今も無実を主張している)され、10年間の逃亡生活ののち1982年に逮捕となった。逃亡中、土本典昭(映画監督)、丸木位里(画家)、中村正義(画家)はじめ著名人を含む多くの人に匿われていたという。
 刑期をつとめあげて出てきたあと、竹本さんは初めての海外旅行でタイに来た。もう25年以上まえのことだ。そのときバンコクの私の家に1ヶ月ばかり滞在した。いかに自分が世の中を知らなかったかに気付いたと毎日楽しそうに過ごしていた覚えがある。連日つるんで遊ぶうち、私は彼に「兄弟」と呼ばれるようになっていた。素顔の竹本さんはとても素直で気持ちのやさしいひとである。https://takase.hatenablog.jp/entry/20181021
 去年、現上皇をたたえる『今上天皇の祈りに学ぶ』(明月堂書店)を出版。極左だった人がなぜ?と驚いたことはブログに書いた。
 きのうの新右翼団体「一水会」の講演会講師として招かれたのを『レコンキスタ』(一水会機関紙)で知って、お顔を見たいなと思いたったのだった。
 遅れて会場に着き、外で講演が終わるのをまっていた。すると、閉じたドアの向こうから大きなアジテーションのような声が聞こえてくる。もう79歳で、大病を患ったと聞いて心配していたが、元気な様子で安心した。

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 講演後、声をかけるととても驚き、喜んでくれた。二次会では、「このままでは日本は滅びる、どうしたら魂の震えるような世直しができるかを真剣に考えている」とテーブルを叩いて熱く語り、健在ぶりを見せていた。機会があれば、思想的な転回についてもじっくり聞いてみたい。