宝石のような緑の粒。ジャーナリストの横田徹さんが、奥さんの故郷、島根県の名産だといって送ってくれた。ありがたい。シャインマスカットという、日本で開発された新品種で、つい10年くらい前に登場したそうだ。甘い。皮がさくっと噛み切れる独特の食感。種なしで皮ごと食べられる。次々に新しい品種が出てくる。私の故郷の山形県の置賜地区も古くからブドウの産地だが、子どものころ食べたのはもっぱらデラウェアだったな。
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その横田さん、さっきTBSの「ニュース23」に登場した。先日、彼が取材したイラクのタルアファル(陥落したばかりの「イスラム国」=ISの拠点)の映像を流して解説していた。タルアファルで投降した「イスラム国」メンバーの家族に、日本人女性が含まれている可能性が出てきたというニュースだった。「APがイラク軍当局者の話として伝えたところでは、保護されたのは女性や子供1300人以上で、出身国は14カ国に及ぶ。多くは中央アジアやロシア、トルコ出身だが、日本や韓国から来た者も含まれるとしている。」(産経新聞)
「イスラム国」戦闘員は世界各地から参集しているから、その妻に日本人がいても不思議ではないが、まだ確認はされていない。
狂信者のイメージの「イスラム国」戦闘員が投降するとは意外に思われるかもしれないが、ある事情があった。イラク政府軍は士気も低く戦闘も下手で、最前線で「イスラム国」と激戦を行なっていたのはクルド勢力とシーア派民兵だ。シーア派民兵は、スンニ派の「イスラム国」戦闘員に対しては、例えば捕虜になったりすれば、きわめて残酷な仕打ちをする。そこで、モスル陥落後、勝ち目のなくなった「イスラム国」残党は、シーア派民兵ではなく、クルド勢力に投降したというわけだ。ただ、これにはどうやら裏取引がありそうで、真相が判ればまたお知らせしよう。
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国連安全保障理事会は、ミャンマーでイスラム系少数民族ロヒンギャが暴力を受けている問題について協議するため、13日に緊急会合を開くという。ついに安保理にまでいくのか。
ムスリムの集団ロヒンギャのバングラデシュへの大量脱出(エクソダス)について、BBCがすごい取材を流した。ジョナサン・ヘッド特派員がミャンマー政府主催の視察ツアーに参加したところ、目の前で燃えている村に出くわし、さらに、火をつけたと思われる張本人の集団にも遭遇、その集団は、ロヒンギャではなかったことを報じている。そして記者は、これはエスニック・クレンジング(民族浄化)だと断言している。
http://www.bbc.com/japanese/video-41222791【ロヒンギャの村を燃やしているのは誰か BBC記者の前で村が】
「ロヒンギャ問題」の取材は極めて難しく、私の友人の優秀なジャーナリストが、去年この問題を取材したさい、ロヒンギャコミュニティに接近することができないと嘆いていた。政府軍がジャーナリストの移動を徹底的に妨害するのだ。彼が町を歩けば、すぐによそ者と分り、見つかってしまう。国際援助団体にまぎれ、その一員と偽って避難民キャンプにもぐりこんだりと大変な苦労をした。今は政府の視察ツアーがあるらしい。国際的な非難が激しくなって、多少はジャーナリストに便宜をはかっているのか。BBCのニュースは、視察ツアーでも取材の方法いかんでここまでやれるというお手本だ。
今回の事態は、先月25日以降、ロヒンギャ武装勢力が警察や軍の駐屯所を襲撃したことから、政府軍が過剰にロヒンギャコミュニティを攻撃、弾圧し、その結果、膨大な数の避難民が国外脱出しているとされている。さらにそれにとどまらず、政府がロヒンギャを国内から絶滅させる組織的キャンペーンであり「民族浄化」だと非難されるまでになっている。真相はどうなのか。
アウンサンスーチー氏は、同じBBCのインタビューに「民族浄化が起きているとは思わない」と回答。また、トルコのエルドアン大統領との電話会談では、たくさんの偽の写真が出回っており、「テロリストの利益促進を目的として、異なるコミュニティーの間に問題をたくさん作りだそうと計算された、偽情報の巨大氷山の一角に過ぎない」と反発したという。
ミャンマー軍の対応を擁護するアウンサンスーチー氏への非難が強まり、同じノーベル平和賞受賞者のツツ司教やマララ・ユスフザイ氏(タリバンと闘った最年少受賞者)らもスーチー氏に「介入」を要請している。スーチー氏のノーベル賞受賞を取り消せという署名運動もはじまった。(取り消せるものではないはずだが)
実は、このロヒンギャ問題は、単純ではない。まず、仏教徒によるムスリム(イスラム国教徒)弾圧という構図ではない。私はミャンマーの中央部のムスリムと話したことがあるが、その人は、「我々は何代も前から暮らしてきたミャンマー人のムスリムで、バングラデシュ人とは違う」と言い、ロヒンギャに同情するそぶりは見せなかった。
私が二十数年前、バングラデシュに出てきたロヒンギャ避難民に取材したときのこと。口々に「モスクが豚小屋にされた」(豚を不浄とするムスリムへの嫌がらせ)、「女性が何人も強姦され殺された」などの蛮行を訴えるのだが、みな伝聞や「村のリーダーが言っていた」という証言で、直接目撃した人に行きあたらない。訪ねまわって、ようやく、暴行されたという人が見つかったが、証拠として見せてくれた「傷」はどうみてもだいぶ前にできたものだった。そのときの取材では、私は「民族浄化」と言われる人道被害の証拠を見つけることができなかったのである。不思議だった。
そして、バングラデシュ側には湾岸諸国を中心にイスラム諸国の支援団体が大量の援助物資を用意して待ち受けており、テントが丘の上まで埋め尽くしていた。すでにロヒンギャの武装組織があり、そのメンバーは海外から支援を受けていることを認めた。ロヒンギャをバングラデシュ側に引き寄せる力が働いていることを感じた。
こういう民族・宗教がかかわる紛争には、おうおうにして外国をまきこんだ国際的な思惑が働く。何か裏にあるような感じがして、いま一つ、全体の構図が見えないのが気持ち悪い。スーチー氏が「民族浄化が起きているとは思わない」と断言するのを「いまなお権力をもつ軍部への遠慮」だと解釈する向きがあるが、私はそうではないと思う。スーチー氏の見解の根拠を知りたい。