ロヒンギャ問題で動けないスーチーさん

 きのう、かつてわが社でスタッフとして働いていたM君と久しぶりに飲む。人を取り巻く状況は刻々変わっていく。彼は、心を病んだ姉の見守りのため、4ヵ月仕事を休んでいるという。入った飲み屋が古い店でいい感じだ。ハイサワー200円、鯨唐揚げ390円、安い!レトロな雰囲気のなか、二人でしみじみ飲んだ。
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 佐々木芽生さん監督の「おクジラさま」を先月、このブログで紹介した。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20170803 いよいよ明日公開される。佐々木さんのメディアへの露出も頻繁になり、今夜はNHKBS1「国際報道」で、あす9日はフジテレビ「週刊フジテレビ批評」に出演するという。
 この映画にビートたけしがコメントを寄せた。
 捕鯨でも反捕鯨でもない、どっちつかずのいい映画だ!イルカ漁を巡って大地の港を右往左往する人間たちのコメディ。「クジラやイルカが絶滅寸前だと議論をしているが、こんな小さな町こそ絶滅危機にある」と言うアメリカ人ジャーナリストの科白が光る。」
https://www.facebook.com/okujirasamafilm
 これに対して佐々木さんがメルマガで以下のように書く。
 《最初は「コメディ」という言葉にドキッとしました。確かにユーモア満載ですがこの物語を「コメディ」と呼んで大丈夫?太地町にとっては、死活問題ですから。しかし真面目なテーマだからこそ笑いとともに伝える、その大切さにたけしさんは気付いてくれたのだと思います。チャップリンもこんなことを言っています。「世界は、クローズアップで見ると悲劇。ワイドショットで見ると喜劇」いずれも、人間の悲喜劇を伝えることに一生を捧げた人の深い言葉ですね。たけしさん、さすが!ありがとうございます!》
 渋谷のユーロスペースで明日から上映です。
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 スーチーの神話限界露呈する (兵庫県 岸田万彩) 朝日川柳より
 
 国境なき医師団」が、ミャンマーロヒンギャ難民への救援を訴えている。
 「現在、ミャンマーイスラム少数民族ロヒンギャの人道的危機が急速に悪化しています。人びとは暴力から逃れて隣国バングラデシュに避難。8月25日から9月6日までに入国した難民の数は14万6000人に上り、過去最悪規模となっています。」

 私はバングラデシュでたしか90年に取材している。たくさんの船が次々に人と荷物を満載してやってきた。ロヒンギャバングラデシュへの避難は80年代から何度かの波があり、今回は「過去最悪規模」だというのだ。
 この事態にスーチーさんへの批判が募っている。 
 「やるせないのは、これがアウンサンスーチー氏率いる政権の下で起きていることだ。ノーベル平和賞に輝いた民主化の星である。軍の力が依然強いことを考えても釈然としない。(略)少数者の命と権利がないがしろにされる事態がこのまま続くのなら、何のための民主化だろう」天声人語
 ミャンマーでは、民主化と民族融和は別の課題である。北部でもまだ完全な和平には至っていない。ただ、ロヒンギャは特別で、他の数十の民族はロヒンギャを「民族」とは認めておらず、バングラデシュから越境してきた単なるベンガル人の不法移民だと見なしている。ロヒンギャ参政権も移動の自由も認められていないことを批判するミャンマー人はほとんどいない。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20150620
 多くのミャンマー人は、そもそもロヒンギャという名称を使わない。東京で開かれた軍政に反対する集会でも、ロヒンギャの代表が「我々ロヒンギャは・・」と言いだした瞬間、他の参加者たちから「ロヒンギャという言葉を使うな」と声が飛んだ。
 ウィキペディアでは・・《エイチャン(Aye Chan: 元・神田外語大学教授)は、いかなる資料からも1950年代以前に「ロヒンギャ」という語を見出すことができず、この語は1951年にアブドゥル・ガッファ(Abdul Gaffa)が創り出したと主張している。そしてミャンマー政府及びラカイン州当局は、ロヒンギャは「ベンガル人」であり自国民ではないという立場を取っている。》https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%92%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%83%A3
 へたに介入するとスーチーさん、政治生命を失いかねない。この問題は難しい。ましてやいま、ムスリムであるロヒンギャイスラム過激派が入り込み武闘を始めたとなると、なおさらだ。
 スー・チーさんのノーベル平和賞を取り消すよう求めるインターネット上での署名が36万5000筆以上に達したという。彼女、どうするのか。