ウイグル問題で相次ぐスクープ

 最近かなりストレスフルな事態に直面している。
 こういうときは、修行のチャンスと考えよう。
 「生死事大 無常迅速」(しょうじじだい むじょうじんそく)というすばらしい禅の言葉がある。
 これについて、私が師事している岡野守也先生は
 《生きることは誰にとっても一大事、大変なことです。天地自然から預けられた人生の時間は、嫌でも好きでも有限・無常で、やがていのちはお返ししなければなりません。そのことをしっかり自覚すると、精一杯できることをして生きようと思わざるをえないでしょう》と解説する。
 世ははやくも師走になって、まさに「無常迅速」である。
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 今夜の報道ステーションウイグルの収容所について特集していた。
 日本に留学しているムハラム(ムハンマドアリ)さん(26)の父親は聖職者。2017年3月、父親が突然行方不明になった。ムハラムさんが父は収容所にいるのではとSNSで発信したところ、しばらくたって父親が刑務所に入れられていることが判明。ムハラムさんの情報発信への牽制ではないかという。

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 また、収容所から出ることができたカザフ族のオムル・ベカリさん(44)が、中では毎日鎖に繋がれ、中国共産党を讃えさせられたことを証言した。

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目隠しをされ後ろ手に縛られた多くのウイグル人

 CNNが、新疆ウイグル自治区で収容所に近づいて取材を試み、中国の警察に妨害、阻止された映像は興味深かった。即逮捕されても不思議ではないこんな取材を、日本のマスコミはやるだろうか。CNNクルーが逮捕されたらアメリカ政府は激しく抗議して解放させるだろうが、日本政府の場合は、そういう危険なところにノコノコ行く取材班が問題なのだ、と言いかねない。なにせ、習近平国賓で招こうとしている我が政府である。

 情報が極端に規制され、実態がなかなか外に伝わらないウイグル問題だが、このかん超弩級のスクープが相次いだ
 今月に入って、ニューヨークタイムズ国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が内部文書を入手したのだ。

 【北京=中沢穣】中国政府が新疆(しんきょう)ウイグル自治区少数民族ウイグル族を弾圧しているとの批判が、国際社会で高まっている。中国政府による弾圧の内幕を記した内部文書が相次いで明らかになったためだ。中国政府は反論に躍起だが、国際社会の圧力が政策転換につながる見通しはない。

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 「決して容赦するな」。習近平国家主席は当局者にこう命じ、イスラム過激分子との「対テロ闘争」の徹底を求めた。米紙ニューヨーク・タイムズが報じた内部文書は、テロ対策を名目としたウイグル族への弾圧が、習氏の指示に基づくことを明らかにした。
 同紙が入手した約四百ページの文書からは、ウイグル族イスラム教の慣習や教えに従ってひげを伸ばしたり、酒を飲まなかったりすることを理由に、中国政府が「職業教育訓練センター」と呼ぶ施設に収容される実態が浮かぶ。
 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した内部文書は、「職業教育訓練センター」が事実上の強制収容所となり、百万人以上が収容されている現状を示した。ウイグル語ではなく中国語を使わせ、脱走を防ぐために入浴中や食事中も監視を怠らない。収容対象者は、監視カメラ映像や携帯電話のデータなどあらゆる個人情報を集め、人工知能(AI)で解析して選び出していた。
 衝撃的な実態が明らかになり、香港問題に加えてウイグル族への弾圧が国際社会の関心を一気に集めた。ポンペオ米国務長官は二十六日に「中国が人権を踏みにじっている証拠だ」として、中国に圧力をかけるため各国に協力を求めた。英国やドイツ、フランスなども批判を強め、国連監視団の受け入れを求めている。米国との摩擦を抱える中国は欧州との関係を重視してきたが、この戦略に影響を与える可能性もある。
 中国政府は反論に追われている。同自治区政府は「悪意のあるデマだ」と同紙の報道を全面否定。ICIJの内部文書について、外務省の耿爽(こうそう)副報道局長は「新疆に民族、宗教、人権問題は存在しない」と反論した。
 圧力にいらだつ中国政府だが、ウイグル政策を変える兆しは見えない。二十六日には「宗教の教義を時代の要求に合わせて新たに解釈する」ことをテーマにした会議を開催。全国政治協商会議の汪洋(おうよう)主席が出席し、イスラム教徒に対する従来の強硬姿勢を改めて確認した。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201911/CK2019113002000136.html

 さらにNPOとAFPが衛星画像の解析という手法でスクープを報じた。
 【11月27日 AFP】《中国の少数民族ウイグル人の先祖らが眠る墓地が中国政府によって破壊されている。こうした行為について活動家らは、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)で行われている、ウイグル人アイデンティティーを根絶する試みの一環だとして批判を強めている。
 同自治区では過去2年間で数多くの墓地が破壊されている。人工衛星画像の解析を行う非営利団体「アースライズ・アライアンス(Earthrise Alliance)」とAFPが共同で行った調査で今回、明らかになった。

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  (上の写真の墓地が、下の写真では破壊されているという)
 シャヤール(Shayar)県では、3か所の墓地で人骨が露出しているのをAFP記者が確認している。同県ではこのほか、墓地が掘り起こされて更地となり、壊され、がれきの山と化した墓や聖廟(せいびょう)がそのまま放置されていたケースも複数見られた。
 墓の取り壊しをめぐる当局の説明は、都市開発や古い墓の「標準化」などさまざまだ。だが、海外在住のウイグル人たちは、墓の取り壊しがウイグルでの生活の全てを管理しようと試みる中国の弾圧の一環だと訴えている。
 曽祖父の墓を壊されたというサリヒ・フダヤル(Salih Hudayar)さんは、「こうした行為は、私たちが誰であるかを示す証しを消し去り、効率的に漢民族にさせようとする中国の取り組みだ」とAFPの取材に対して述べた。》
https://www.afpbb.com/articles/-/3257102

ウイグルで行なわれているのは、人権侵害の極みともいえる暴挙だ。さらなる報道を期待する。