政府軍によるサリン使用が明白に

takase222013-09-22

国連調査団の報告書を見る限り、シリアでの化学兵器使用は政府軍によるとほぼ結論づけてよさそうだ。
化学兵器が使用されたのはダマスカス郊外の東グータ地区で、ここはスンニ派住民が多く、反政府勢力の「自由シリア軍」の支配圏。その少なくとも3箇所で、サリンが地対地ロケット弾に搭載されて使用されたことが証明され、化学兵器が「子供を含む市民に対して比較的大規模に使用された」ことがはっきりした。しかもこのロケット弾の破片にはキリル文字が刻印されていた。(国連報告書の第五付属文書に写真がある)http://www.un.org/disarmament/content/slideshow/Secretary_General_Report_of_CW_Investigation.pdf
政府軍が、ロシアからもらったロケット弾を使って、反政府勢力の陣取る首都郊外に向けて一斉攻撃をしたということだろう。
この攻撃で、住民1400人以上が死亡したというから、おそらくその数倍の人々が後遺症に苦しむことになろう。医師も薬も不足しており、ノーベル賞受賞者三人を含む著名な医師55人が「シリア紛争が冷戦終結以来世界最悪の人道的危機の一つとなっている」として、同国内の患者を治療しようと呼び掛ける連名の書簡を公表している。
《書簡は「医療専門家や施設、患者への故意の攻撃がシリアの医療体制を破壊し、民間人が必要な医療を受けることがほとんど不可能になっている」と指摘。国内の病院の37%が破壊され、20%が重大な被害を受けていると警告しています。》(赤旗
「故意の攻撃」とあるが、去年シリアを取材した安田純平さんによると、《政府軍は反政府地域で献身的に働くボランティア医師など市民サービスに貢献する人材をスナイパーで狙い撃ちする》など市民の生活基盤を破壊しているという。反政府側の地域は、人が住めなくなってもよいと考えているのだ。
これでは化学兵器の被害の治療ばかりか、透析患者や継続的治療を必要とする慢性病の患者も生命を維持できなくなる。「戦争の犠牲者」には、こういう人々も含めなければならない。
けさ、朝日新聞朝刊に、東ゴータ地区住民とネット電話でつないで聞いた記事が載った。被害はすさまじく、「世界の終わりだと思った」という声も紹介されている。《米軍の攻撃が回避されたため攻勢を強める》とも。
先週末、シリアを取材中の横田徹さんから、トルコに退避したとのメールが届いた。
横田さんは、最も危険な取材に挑む戦場ジャーナリストの一人。シリア北部にいたが、反政府勢力同士の戦闘で状況が一気に緊迫した。取材中の反政府勢力から、危険すぎるとして移動を勧められたのだという。
こうしたなか、薬品などの物資の支援もままならず、人道支援には大きな限界が出ている。