先週末は、父の一周忌の法事で、台風のなか山形に帰った。
写真は、うちの菩提寺、鶴布山・珍蔵寺(かくふざん・ちんぞうじ)の庭。鶴の恩返しの伝説がある名刹で、戊辰戦争のとき、ここに上杉家のお姫様が身を隠していたのだそうだ。米沢藩は新政府軍と戦う奥羽越列藩同盟の中心メンバーの一つだった。
山の斜面に造られた美しい庭園で、山の木々が雨に煙っていた。
・ ・・・・・・・・
シリアでは、反政府勢力同士の戦闘が一段と激しくなっている。
自由シリア軍、アルカイダ系武装勢力それにクルド人組織が三つ巴で戦い、アルカイダ系によるクルド住民の虐殺も伝えられている。
土曜からイラク国境地帯アブ・カマルで自由シリア軍がヌスラ戦線と「イラクとレバントのイスラーム国」(いずれもアルカイダ系とされる)と戦闘。さらにトルコ国境の重要拠点アザスでも戦闘になり、アルカイダ系が優勢になったという。トルコ−シリアの補給ルートがアルカイダ系に支配されつつあるとの報道がある。
ますます収拾がつかない事態になってきた。
・ ・・・・・・・・
シリア情勢の見方では、米ロの化学兵器に関する合意は茶番だと批判する、同志社大学の内藤正典教授の意見が私にとっては「良識的」に思われる。
以下、ここ数日のツイートより。
《シリアにとっては、化学兵器を差し出すことで、国連から虐殺の許可証を手にしたも同然。サリンを使わなくても、重火器で圧倒的に有利な戦力をもっている。化学兵器禁止条約に加盟する姿勢をみせておいて時間を稼ぎ、その間に、凄まじい勢いで反体制派を殺していくはず。》
《国際社会が、しばらく様子を見ようなどと悠長なことを言っている間が、アサド政権にとっては絶好のタイミング。トルコ軍が越境したとしてシリア軍ヘリを撃墜したが、シリアが空から攻撃を続けるかぎり、人びとの犠牲は急増していくことになる。》
《「私たち、アメリカの戦争を止められたんだ!」と喜んでるひとは、とんでもない勘違いをしている。》
《アメリカがアフガンとイランに戦争を仕掛けたのは大間違い。シリアとエジプトに干渉しないのは大間違い。エジプトは潰せというのではありません。せめてクーデタによる軍事政権への援助を止めるぐらいの節操を持て、ということ。シリアは化学兵器使用への懲罰的攻撃を実施すべしということ》
《いま中東で起きていることっていうのは、右も左も一切関係なし。自分が「左」だからアメリカの介入に反対していると信じてる奴は、実は、自分が全体主義への奉仕者であり、ファシストを支援していることに気付いていない。》
《私がシリアへの攻撃も止むを得ないと言ったのは、反体制派が「正しい」からではない。アサド政権が「間違い」だからでもない。この不毛な殺し合いを一瞬でも止めさせるには、外から一撃を加える以外にないから。とにかく一度軍事力のバランスを崩さないことには、重火器で圧倒するアサド政権側が反体制側を市民もろとも殺戮し続ける。待てよ、このまま殺り続けると危ないかな、とアサド政権側に立ち止まらせるために攻撃が必要》
《米露合意によると、シリア政府は、自らが所有するものであろうと反政府側が所有するものだろうと、化学兵器を差し出すことに。出てくる訳がない。敵が差し出さないから、出てこないと言うに決まってるじゃないか。》
人道、人権を考えるなら、シリアへの軍事介入が必要だと考えるのは当然の結論だと思う。
リベラルで知られる藤原帰一東大教授もまた、軍事介入に賛意を示す。
《英米議会の抵抗の背景にはイラク戦争の経験がある。だが、シリア情勢は2003年のイラクとは違う。
戦争直前のイラクには内戦はなく、化学兵器の使用も過去のことだった。現在のシリアでは、2年あまりの内戦によって、国連によれば全土家屋の3分の1が破壊され、住居を失った人々が600万人、難民も200万人に上ると推定されている。放置すればさらに多くの人々の生命が失われ、反政府勢力の急進化も避けられない。イラクと異なり、シリアでは人道的災害が現実に発生していると考えるほかはない。
化学兵器の使用を拒んでもシリアの人道的災害は続いてしまう。
ここでの課題は、何よりもシリア国民の安全を、最小限度の軍事関与によってどう実現できるのかという点にある。政府による暴力的な弾圧のすべてを阻止することが難しいとしても、せめて難民の安全を図ることはできるはずだ。そして難民支援の一環として、国連安保理の決定に基づいて地上軍を派遣することは、ミサイルによる空爆よりは具体的な成果を導く可能性が高いだろう。》(時事小言 朝日新聞17日夕刊)
ミサイル攻撃ではなく地上軍の投入が必要という点は私も同意見だ。
内藤教授も言うように、いまや、右も左もない。どうやって殺戮を少しでも押さえられるかだ。